- Amazon.co.jp ・本 (155ページ)
- / ISBN・EAN: 9784801001084
作品紹介・あらすじ
不透明な時代を生き抜くために。フランス文学の奇才が提案(?)する、ウリポ的昇給のススメ!本邦初、フローチャート文学!?奇想天外な作品ばかり残した、ジョルジュ・ペレックによる、新・実用書!
感想・レビュー・書評
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久しぶりに本屋さんの海外文学コーナーを見に行ったら、妙にダサいソフトカバーの新刊があるのに気づいて、ぱらっとめくって買ってしもうた。ジョルジュ・ペレックってとっくの昔に亡くなっているのに、ぽつぽつと訳書が新刊で出るから油断できない。
タイトルそのまんまの小説…といえばそれまでだけど、扉のことはちょっと置いておいて、本文へ入ると、その書きようにまず驚く。なんだか…というか、いろいろおかしい。翻訳の桑田光平さんが訳者あとがきで苦心のほどを吐露されているのも、ご理解とご同情申し上げる。いつ区切れるんだ、これは。まあ、人間の行動なんてすぱんと区切れるメリハリのあるものではないけど、それにしても分岐がちまちま細かいし、ケースによっては無限ループに陥る。ああ、「これが人生」ってやつか、フランス人のよく言うやつだ。
あとがきにあるとおり、これはある企業人が友人のペレックにアイデアを持ちかけてできた小説だそうで、アイデアを持ちかけた側も面白いけど、受けて立ったペレックもすごい。図によって可視化された行動プロセスが、文章でどれだけ展開できるか、しかも機械的なだけでなく、どれほどの面白さでできるかというある種の勝負かもしれない。それにしても、上司のグザヴィエ氏は常に麻疹にされそうになるし、四旬節の魚の骨はのどにひっかけないと許されない状況だし、フロアの庶務(と思われる)・ヨランダ嬢と「あなた」は、ことによったら3時間あまりもお話せねばならんのか。それは、彼女の機嫌も悪くなるはずだ。
お仕事や研究、趣味・生活の分野によっては、図だけで満足な人もいるだろうし、文章だけのほうがいい人もいるだろうけど、町田康や筒井康隆のテクニカルな筆致が好きならば、熱烈におすすめできると思う。あまりにクレイジーすぎてトレトレトレビアンのセマニフィークですわよ。ひょっとしたら、本屋さんでは仏文学のコーナーではなくて、意外なところに置かれているかもしれないけど、そこは本屋さんのジョークだと思って、こそっと手にとってみてくださいませ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
文学
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2018年7月8日に紹介されました!
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平面上に展開しているフローチャートをリニアな句読点のない文に書き下すとこうなる。
私は建築を業とするものだが、建築空間の構成をリニアな文章に書き下そうとすると、往々にしてこうなる。
迷路で迷わないように、ずっと左手で壁を触りながら進むような歩み。それはもう迷っているのと区別がつかないのではないか。