立川談志 まくらコレクション 夜明けを待つべし (竹書房文庫)

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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784801905337

作品紹介・あらすじ

立川談志に"禁句"は無い!落語界の風雲児と評された天才落語家・立川談志が、"まくら"で斬った平成の事件、世相、社会問題が文庫で味わえる!古今亭志ん朝、師匠・五代目柳家小さんの死とその意義を語り、「イリュージョン落語」を論ず。国際情勢と日本の政治家を皮肉り、アメリカ同時多発テロで「たが屋ぁ〜」と発し、金正日万歳と叫ぶ。落語とは、幸福とは、常識とは、社会とは、人間とは、森羅万象の本質を語る珠玉の話芸。最円熟期に語られた"人間の業"をイッキ読みする"まくら"集。

感想・レビュー・書評

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  • 談志ファンとして人後に落ちないと自負している自分。
    アマゾンで本書が出ていることを知って、1・7秒後には購入手続きを始めていました。
    何がすごいって、本書の約9割のまくらはCDで聞いていて知っていました。
    ただ、活字で読むのもまた格別。
    ヒアリングが不十分で勘違いして聞き取っていた部分も分かり、そういう意味でも収穫でした(ただし、本書の編集者が間違って聞き取っている可能性もあります)。
    談志といえば、「落語は人間の業の肯定」という名言が有名ですが、人間の業を、そしてまたその深さを、透徹した眼差しで見詰めていた不世出の落語家でした。
    たとえば、「酒は人間を駄目にするものじゃないですよ。人間は駄目なものだと確認する為に酒は存在する」なんて、本当にその通りと思います。
    9・11の同時多発テロでは、米国民だけでなく日本人の多くも悲嘆に暮れました。
    談志は違います。
    「ちょうど(ニューヨークの)テロがあって。久しぶりに胸がスカッとするような、いい画面を見て。何度見たことか。特に二機目が、スポーンって入ってくる(笑)、あの、瞬間の嬉しさ(笑)」
    書いていて私がドキドキします(笑)。
    ただ、談志は愉しんでいるわけではないのです。
    その直後に、こんなことを云ってドキリとさせるんです。
    「言っとくけど、あんなニュース、世界中でどれくらいの人が知ってんの。百分の一しか知らないんじゃないですか。千分の一ぐらいしか、知らないんじゃないですか」
    9・11が発生したという事実を知っているのは世界中から見たら「マイノリティー」に過ぎない先進国の一部の人間だと云うのですね。
    私はここに、談志の想像力の深さ、視野の広さ、そして公平さを見ます。
    最近、発生したフランスの同時多発テロ事件について、談志ならどう云うか興味深いところです。
    ブラックジョークは2、3知らないものがありました。
    ブラックジョークったって、談志の披露するのはブラック過ぎて善男善女はあきれかえることでしょう。
    もっとも、私は大好き。
    中でも爆笑したのを、長いですが1つ紹介いたしましょう。
    □□□
    ある激戦地で、彼のそば、至近距離に爆弾が落ちて、バヤーンと突っ伏されて、気が付いたときは後続部隊に運ばれていたという、古典の小咄がある。
    見たら顔がぐちゃぐちゃになって、ま、目も鼻も何とかなるけど、口がぶっ飛んじゃってどうにもなんねえから。これはものを食べられないし、いっそ死を待った方がいいんじゃねえか、と軍医も困ってね。
    「頼むよ、俺の無二の友なんだ、助けてくれねえかな、軍医さんよ」
    と戦友は懇願するけど、
    「だってこれ、口がねえんだ。何か口の代わりになるものはねえか」
    で、よく見るとそこに女性の首なし死体があった。
    「首がないけど、先生、これ、何とかならねえかな、これ」
    「うーん」
    ―言ってること分かるよな。軍医先生、何とかやってみるかというんで、それこそ世紀(性器)の手術という言葉あるけども、ええ、縫い付けて治って帰ってきたよ。当人は分からねえんだね。どうも口の回りの様子が、何となくおかしいのね。あんまり唇の色はさえないし、ひげがちぢれて生えてきたりね(笑)。月にいっぺん血を吐いたりなんかして、いろんなことがある(笑)。
    友達が見舞いに来て
    「元気かい」
    「元気は元気なんだ、口がどうもおかしくてね、どうも」
    「あ、それはそうだ。言わなかったかな、お前の口はこういう訳だ。死ぬっていうからしょうがないよ、だから女性の付けてさ」
    「ああ、そうかあ、ほうほうほう、分かった」
    なんてね。
    「お大事に」
    友達は帰って行く。
    一週間ほどして、また友達が訪ねてきて、「元気か」ってドアを開けて中を見たら、彼は背骨を折って死んでたってのがあるよ(笑)
    □□□
    構成者の和田尚久さんは「あとがき」で、「まくらの中には、ひとりの聞き手として賛同できない意見もある」などと書いています。
    過激すぎて付いていけないという気持ちは、正直に云って私にだってあります。
    ただ、和田さんには申し訳ないですが、「あとがき」に書くのはいかがなものでしょうか。
    それをここで書くのは「過激な内容が収録されているのは私の責任ではない」というエクスキューズと受け取られないでしょうか。
    私は敢えて、談志は100%正しいと声を大にして云いたいと思います。

  • 談志本人の監修を経ていたらどうだったのだろうか。
    確かに談志の言葉なんだろうけど、その時の空気をよんで話していたことが活字になるとなんとなく違和感。
    しかも同じ話の繰り返し。
    なんでもまくらを字起こしするのは良くない

  • 大きな声では言えないが、実は談志の落語は好きではない。大きな声では言えないというのは、「落語通」と自負する方々に談志を異常にほめる人が多く、「談志が嫌いだなんてぇやつぁ落語の面白さのわかんねぇ野暮天だ」などと白眼視されるからである。まあ別に白い目で見られようと青い目で見られようとどうでもいんだけども。

    談志の落語はうまいとは思うがどうも肌に合わない。が。談志の文(『新釈落語噺』『家元を笑わせろ』など)は好きなので本書も読んでみた。面白い(^^

  • やっぱり聞いてなんぼ。活字で読んでもちっとも面白くない。

  • 立川談志さんの演目前の”まくら”ばかりを集めた本。いやあ、奇才ですね。
    発言が過激すぎてびっくり! しゃべりながら、俺は間違ってると思っているから 自分は正しい人間だそうです(笑) 落語は非常識を語る。寄席という場所では、落語を通じて自分の異常性を観客が認めてくれると。 他にも名言がいっぱい。
    好き勝手やっていても、後年体を壊してだんだん弱気になっていく様が寂しくも。
    生きているうちに生で落語聞いてみたかったなあ

  • 表題通り、立川談志の”まくら”ばかりを集めた一冊。とりわけ序盤の噺は抱腹絶倒、改めて凄い芸人だったと感心させられる。それだけに…喋りをそのまま活字にするべきで(笑)(爆笑)など付け加えるのは如何なものか。笑える噺は読むだけでも可笑しい。
    毒気は凄いが、視野は物凄く広い。確かに馬鹿にはわからないと思う。洒落がきつく、そこが魅力的であったりするのだろう。1度生で師匠の落語を見てみたかったと読んでいて悔やまれる。
    「野暮」と叫ぶ師匠の声が聞こえたから、座布団一枚引っこ抜いて、☆4つ。

  • 立川談春の赤めだかから談志に興味をもち読む。毒気が凄い。ただ、視野は物凄く広く。確かに馬鹿にはわからないと思う。洒落がきつく、そこが魅力的であったりするのだろう。1度生で彼の落語を見てみたかったと読んでいて悔やまれる。

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著者プロフィール

落語家、落語立川流創設者。1936年、東京に生まれる。本名、松岡克由。16歳で五代目柳家小さんに入門、前座名「小よし」を経て、18歳で二つ目となり「小ゑん」。27歳で真打ちに昇進し、「五代目立川談志」を襲名する。1971年、参議院議員選挙に出馬し、全国区で当選、1977年まで国会議員をつとめる。1983年、真打ち制度などをめぐって落語協会と対立し、脱会。落語立川流を創設し、家元となる。2011年11月逝去(享年75)。

著書には『現代落語論』(三一新書)、『談志百選』『談志人生全集』全3巻、『立川談志遺言大全集』全14巻(以上、講談社)、『談志絶倒 昭和落語家伝』(大和書房)、『談志 最後の落語論』『談志 最後の根多帳』『立川談志自伝 狂気ありて』(以上、ちくま文庫)、『談志が遺した落語論』『江戸の風』(以上、dZERO)などがある。

「2021年 『談志の日記1953 17歳の青春』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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