最初から両思いなのに、すれ違いがもどかしい二人だった。
フランセットがその「最初」を勘違いしていたのもあるのだが、肝心なところで二人とも言葉が足りないから。
互いが互いを思いやりすぎて、相手を尊重しすぎて、お互いの本心の擦り合わせをしないまま、フランセットは身を引く決意をし、オベールはそんな彼女の本心ではない決意を諾としてしまう。
最初から両思いなのに、両思いなのに!
読者はやきもきするばかり。
幸い、と言っていいのか悩ましいが、幸い、夫に危機に駆けつける妻、そして妻の危機に駆けつける夫という展開でお互いの本心の擦り合わせができた二人は、騎士団の部下や家族たちに見守られた結婚式を挙げてハッピーエンド。
最初にフランセットを振った王弟陛下の言動は生理的嫌悪感を催すほどだったが、改心の速さにはちょっと驚いた。
彼の愛妾もか。
悪役をただ悪役として振り切らせないあたり、作者さまも後書きで触れていたが、慈悲な気がする。
ただ悪役をやりこめてスッキリするだけの展開ではなく、彼らにも救いを持たせるあたりは懐が深い。
ヒーローのオベールは勿論最初からアンジェリカ様一筋なのだが、割と照れる場面が多かったり、アンジェリカが国元に帰るという際にそばにいなかった理由がこれまた可愛らしく、ただかっこいいだけのヒーローじゃないところに母性本能をくすぐられました。
七歳の子に一目惚れしてるからね、純情だし可愛いのは仕方ないのだろう。
ここで、ロリコンと言ってはいけない。
純情で一途なのだ、彼は。