ソフトウェア・カンパニーの秘密 テック企業の戦略から見えてくるDXの鍵

  • ソシム
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784802613439

作品紹介・あらすじ

Google,Microsoft,Facebookのプロダクトマネージャーが実世界のケースを分解し、
IT技術とビジネス戦略のコアコンセプトに分解!!
様々なソフトウェア企業のケーススタディと分析を提供
テクノロジーの背後にある「何」と「なぜ」をより深く理解できる!!
ウォールストリートジャーナル、フォーブスで特集されるなど、米国で話題沸騰!!

▼Google、Facebook、Microsoftの3人のプロダクトマネージャーが執筆した本書は、テクノロジーとビジネス戦略の必然的なコンセプトを網羅したガイドです。
▼Amazon.comビジネスベストセラー1位のこの本は、北米ブックアワードでメダルを獲得し、ウォールストリートジャーナル、フォーブス、ビジネスインサイダーなどで特集され、「日常生活を変えるテクノロジーを誰でも理解できるようにする、我々の世代のロゼッタ・ストーン」と紹介されています。
▼テック業界でプロダクトマネジメント、デザイン、マーケティング、コンサルティング、ビジネス戦略の役割を目指す人には必読の書!

感想・レビュー・書評

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  • Google、Microsoft、Facebookのプロダクトマネージャーの3人が、最新のITビジネスについて著した本。
    知ってることもいくつかあったけど、やっぱりこのレベルの人たちが書いた本ということもあって、どれも高い視点から書かれており、面白かった。
    原著の書名は「SWIPE TO UNLOCK」だそうだけど、このタイトルのままだと意味分からなさ過ぎて読まなかっただろうなと思う(日本語訳すると「スワインして解除」ってことだと思う)。
    なお、この本にはいたるところに数字の注釈があるのだけど、どこにもそれについての説明がな、いったいこの数字はなんなんだと思ったら、紙面をスリムにするためにウェブサイトに掲載しているとのこと(https://swipetounlock.com/notes/3.4.0/)。確かに、これだけの量があると10ページ以上使いそうだし、このほうがいいと言えばいいのかも(ただ、どうせならURLだけじゃなく、ページ名も記載しておいたほしかったとは思う。いくつかはリンク切れになってた)。
    ワシントンポストの見出しは2種類以上ある場合があるらしい。いわゆる、A/Bテストで、どちらのほうが読まれやすいか判断するそう。これって、Googleのbot用の対策とかしてるんだろうか。Googleのbotが読んだときと、Googleの検索でヒットしてアクセスした時と違う見出しになるということもあるような気がするのだけど。
    なお、iPhoneのデフォルトの検索エンジンをGoogleにしてもらうために、GoogleはAppleに推定120億ドル支払っているとのこと。もし、そんなことしてなかったらAppleはiPhoneのデフォルト検索エンジンをどこにしてたのだろう。自分で作ろうとしたんだろうか。
    後、「ロビンフッド」という手数料無料の株取引アプリの利益の出し方についての話が面白かった。有料会員制以外に、ユーザーが使っていないお金から利息を得ているのだとか。ただ、日本では金利が低すぎるからできないだろうなとは思った。
    驚いたのが、ウォール街のトレーダーが、シカゴとニューヨークの間に、ほぼ直線に近い光ファイバーケーブルを敷いて、それまでより高速に取引できるようにしたという話。これによって従来より3ms速くなったそう。トレーダーにとって、スピードが何より大事というのがよく分かる話だ。
    ところで、翻訳本独特なのかもしれないけど、「不成功に終わる」という言葉にちょっと違和感を覚えた。意味は分かるのだけど、「失敗に終わる」とは違うということなのだろうか。
    後、たまに日本ではあまり有名ではない会社名(しかも普通名詞のような名前)をそのまま書いてあることがあって、いったい何の話かよく分からないこともあった。例えば、6章の中の見出しに「ターゲットはどのように、父親より先に10代の娘が妊娠したことを知ったのか」とあるのだけど、ターゲットって何? クーポンを送ったとあるけど、それなら娘のほうがターゲットなんじゃないの? と思ったら、アメリカの小売業者らしい。
    それと、サポートページとして[https://swipetounlock.com/]と[https://www.socym.co.jp/1337]が記載されてるのだけど、日本語用のサポートページと思われる後者は、404(ページが見つからない)になるという。本書自体のページは[https://www.socym.co.jp/book/1343-9]だけど、サポートページという感じでもないし、いったいどこにあるんだ。

  • GAFAMのPdMたちが、最新のインターネットサービスの仕組みや狙いを解説した本。「ニュースサイトにはなぜスポンサード広告が多いのか」「偽のWi-FIネットワークはどうやって個人情報を盗むのか」など、日々自分たちが使っているサービスの疑問が一問一答形式で答えられている。70件程度とボリュームがあるが、1問10ページ程度で読みやすく、解説が技術面・ビジネス面の両面から丁寧に展開されているので常に気づきを得ながら読み進めることができた。基礎知識がある人でも気づきがあるはずなので、ビジネスマンであれば読んでおきたい内容。

    【メモ】
    ・アンドロイド端末にジャンクアプリがたくさんインストールされている理由
    →アンドロイドフォンには使い勝手の悪いアプリ(ブロートウェア)がプリインストールされ、容量とバッテリーを圧迫している。その理由は主に、①通信キャリアやスマホメーカーは、「ホーム画面のラインナップ枠」をアプリを載せたい企業に売ることで収益源とするため。②キャリア・メーカーが自社アプリを載せることで「デフォルト」のポジションを取れて簡単に儲かるor利用者を増やせるから(GoogleマップよりAppleマップを使ってしまう現象)の2点。しかしユーザーの反発は大きくなっており、ギャラクシーにプリインストールされているサムスンのチャットアプリは登録者が1億人いるにもかかわらず年平均6秒しか使われてない(FBは20時間)。
    なお、iPhoneにはブロートウェアの搭載を通信キャリアに禁じている(体験が悪くなるから)。Appleのプリインストールアプリの評判は悪いが、これらは削除できる。

    ・GoogleがAndroid OSを無償提供する理由
    →GoogleはAndroidを無料提供する代わりに、Youtubeやマップなどの中核アプリをホーム画面からワンスワイプ以内の場所に置くようにメーカーなどに強要することで利用数を増やしてデータを取得して広告ビジネスに生かしている。また、またGooglePlayの手数料が30%あって年間250億ドルに達するため、その入り口を無償提供している。最後に、Androidを通じてGoogle検索してくれるので広告収入が増える。GoogleはAppleに対し、iOSのデフォルト検索エンジンにするだけのために年間推定120億ドルを払っている(それだけ検索のデフォルトのポジションを取りたい)

    ・FBがユーザーに請求せず10億ドルを稼いでいる理由
    →ターゲティングの精度が高いから。「製品にお金を払わなければ、あなたが製品になる」ということわざがあるくらい。ただし最近はAmazonでモノを調べる人が多く、Googleなどの脅威になっている。Amazonの「ダイレクトレスポンス広告」の制度はどんどん上がっている。
    ユーザーデータは基本的に販売されないが、FBはスマホ上の良い位置にアプリを置いてもらうことと引き換えに、Appleやサムスンにデータを売っていたと言われている。

    ・スポンサード広告が多い理由
    バナー広告がクリックされる確率は600回に1回と低い。
    押し付けがましくなく無視されにくい形態として注目されているのがスポンサードコンテンツ(ネイティブ広告)。
    バナー広告として2倍以上クリックされ、ニュースサイトの重要な収益源となっているが、ジャーナリストとビジネスマンの壁を壊してしまう懸念があるなど、「騙された」と感じる人も多い。

    ・ロビンフッドの儲けの仕組みは?
    →時間外取引ができるようになる&購入資金をロビンフッドから借りられる有料プランの提供と、預かり金の運用。

    ・インターネットの仕組みは?
    URL(Uniform Resource Locator)
    google.comと入れてもhttps://〜などと正式なURLに変換されるのは、実際の住所を略して入れても郵便が届くのと同じ。https://部分は「プロトコル」と呼ばれ、接続の方法を表す。http(HyperText Transfer Protocol)のより安全で暗号化されたバージョンがHTTPS。ブラウザによって情報が暗号化されていることを示し、クレカやパスワードを入力する画面はhttpsになっているはず。wwwはほとんどのウェブサイトでは省略可能(市外局番のようなもの)。"google.com"はドメイン名。コンピュータはドメイン名を理解できないが、IPアドレス(電話番号のようなもの)に変換できる。変換のためにはDNS(ドメインネームサービス)を利用する。通常はコムキャストやベライゾンなどのIPS(インターネットサービスプロバイダ)に問い合わせしている。
    ブラウザはこのリクエストをパッケージ化して、例えばGoogleのウェブサイトを運営しているサーバに送る。するとそれにGoogleが反応し、ユーザーがWebページを「レスポンス」としてブラウザに表示してくれる。

    インターネットが情報を送る仕組みは以下の通り。
    ウェブページの情報を一度に送るのは無理なので、TCP(Transmission Control Protocol)はwebページをいくつもの「パケット」に分割し、ラベルをつける。そしてDNSを使ってwebページの閲覧希望者のIPアドレスを調べ、そこに対してIP(Internet Protocol)を介して送信される。IPは各パケットをあちこち飛び回りながら最終的に目的地となるIPアドレスに届ける。パケットが届くと、TCPが適切な順序に組み立て直す。欠損があれば再依頼する。
    これらの経路は「トレースルート」というツールで見られるが、中間点を経由して移動(ホップ)している。つまり物理的なケーブルを通って移動するので、地理的な制約に従わなければならないことを意味する。時には回り道もしている。
    ここまでいくとわかるが、ウォール街のトレーダーはアービトラージのために100万分の1秒の単位で速く取引をしたいため、少しでも早く情報を送るために山脈を掘削して真っ直ぐなケーブルをひいていくことに躍起になっている。

    ・AWSはどのように機能するのか?
    →サーバーのレンタルをできるクラウドコンピューティングツール、といえばわかりやすい。AWSはEC2(アプリケーションのコードをアマゾンのサーバ上で実行)とS3(アプリケーションのデータを全てサーバ上に保存)という主に2つのアプリからなる。UGやセキュリティなどのメンテナンスをアマゾンが行ってくれるため、自社サーバ運用よりもはるかに簡単。アマゾンは何百万台のサーバを所有しているのでレンタルも容易、規模の経済も働く。さらにAWSは世界中のデータセンターにアプリやデータをコピーしているので、1つのデータセンターが自然災害等でやられても止まらない。一方で自社サーバーのデータセンターをわざわざ複数置くのはコストがかかるので、脆弱性が高い。AWSはIaaS(Amazon上のスペースを借りられる)。

    ・ハッキングとセキュリティ
    →ランサムウェアはデータを暗号化して鍵を交換条件に身代金を要求。足がつかないように支払い手段はビットコイン。ただ身代金が収益源なので「身代金さえ払えばすぐに解放してくれる」という”信頼”を気づく必要もあったりする。Chromebookはマルウェアの主要な新入口であるアプリインストールが存在しないため、セキュリティ面での人気が高い。ただ、アドオン機能から進入されたりフィッシング詐欺を受けるリスクは当然ある。

    ・盗難情報はどうやってネットで取引されるのか?
    →ディープウェブ(=Googleなどの検索で出てこないウェブページのこと。自分のFB投稿やGoogleドライブのファイルもこれに該当)は検索できるWebの500倍。ダークウェブはそれをさらに暗号化し、特別なソフトウェアを使わないと訪問できないウェブサイト。それ自体は違法ではないが、そこで行われる取引の多くは違法。
    中間者攻撃とは、正規のWifiに偽装したWifiに繋がせ、httpで重要な情報をやりとりさせることでユーザーに変わって銀行等のアカウントに侵入することを指す。そのため、VPN(Virtual Private Network)の利用が大事。これによって公共ネットワークをプライベートネットワークに変えられる。

    ・CPU、RAMなどのスペックは何を意味するか?
    →CPUとは、コンピューらの計算能力。コアの数だけ別々に計算可能。クロックスピード(秒間に実行できる計算の数)が1GHzであれば1秒間に10億回の計算ができる。ただしクロックスピードは異なるブランドで比較できないので、これでCPUを評価することはない。Core i3とかi9はシリーズ番号で、大きい方が一般にパワフルで高速。CPUの性能が高いとコストがかかりバッテリーの消耗も早い。Webを閲覧するだけなら強力なCPUは不要(日常使いの車はフェラーリじゃなくて良い)。CPUチップにはARMとインテルがある。インテルチップは高性能、ARMは安価でバッテリー使用量が少ない。そのため従来はPCはインテル、スマホはARMだった。しかし、MacbookやクロームブックにもARMが使われ始めている。
    ストレージは長期記憶のこと。HDDは可動部があるため故障が早く、音がして重い。SSDは可動部がないため頑丈で静かで速い。
    RAMは短期記憶のこと。これらはアプリを再起動するたびにクリアされる。ストレージは本棚で、RAMは机の上のメモと考えれば良い。ただRAM=メモを広げすぎると机の上がごちゃごちゃしてスペースが足りなくなる。RAMが足りなくなるとSSDやHDDからスペース(スワップ領域)を借りる。ただ、このストレージは本棚の奥のようなものなのでアクセスに時間がかかる。だからコンピュータの動作が非常に遅くなる。こうなると再起動することでRAMを消去しないとコンピュータが使えなくなる。大量のデータ分析や動画編集をする時にはRAMが多い方がいい。RAMを増設するとコンピュータは高速になるが、CPUがネックになる可能性もある。

    なぜ古いiPhoneの速度は遅くなるのか?
    →iOSがUDされると消費電力が高まるが、古いiPhoneのバッテリーは弱っているためクラッシュする可能性がある。だから速度を落として電力使用量のピークを抑えている。Appleは消費者の反発を受けて古いiPhoneのバッテリーを交換するプログラムを出したが、反応が良すぎて買い替え需要が大きく減ってしまった。

    ・FBがVR市場に進出しているのはなぜか?
    →広告の魅力を上げるため、人々が自社のPFに費やす時間を最大化するため。

    ・スーパーが無料Wifiを提供する理由
    →3つのWifiスポットの信号の強さを利用し、利用者からの距離を測ることができるので、測っている(三角測量)。すると買い物客の行動がわかる(帽子売り場を抜けて婦人服売り場に行っているので、帽子売り場のスペースを婦人服売り場に変えるなどできる)。

    【感想】
    ・世の中の仕組みの大半は「なんとなく知っているつもり」であることがよくわかった。自分が「きっとこういう仕組みなのだろう」と勝手に誤解したことを信じ込み、この本を読んで「ああ、そういう仕組みだったのか」と思うことのなんと多いことか。
    友人からは「君は、俺たちがなんとなく理解した気になっていることに対して”なんでそうなんだっけ”と疑問を問いかけてくれるので、それで”ああ俺たちは理解したつもりになってたけどそうではなかったのか”と気づかせてくれる」と言われたことがあるが、自分はそれほど「無知の無知」が起きないように気を使っているが、それでもこの本を読んだ時には無知の無知に気づかされていたので、特にソフトウェア技術にはこうした無知の無知が転がりまくっていることがよくわかった。
    ・そうするに今の世の中は「インターネットに詳しい人が、そうでない人が気づいていないことを利用してうまく仕組みを回すことで儲ける」方向で回っている。自分が満足できる正しい意思決定をするためには、その「仕組み」を正しく理解しないといけない。「なんとなく便利だからいいや」「夢のようなサービスで最高だ」などと考えてテック企業の奴隷になるのはカッコ悪すぎる。
    ・逆にいうと、ビジネスマンとしてそうした人たちと戦っていかないといけない、という危機感を強く感じる。常に新しいサービスの仕組みや、それを支える基礎的な仕組みを理解しないと、精神論と人当たりの良さで頑張ることしかできないどこにでもいる社会人で終わってしまう。

  • GAFAM以外も世界でどのような技術が使われているのか広く浅く知れる内容だった。知識教養として読むのに良い本。

  • p値が0.05未満であれば(単なる偶然である可能性が5%未満であれば)統計的に有意

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著者プロフィール

ハーバード大学でコンピュータサイエンスを専攻し、ジョン・ハーバード奨学生(クラスの上位5%)を取得。現在は、Google、プロダクト・マネージャー。

「2021年 『ソフトウェアカンパニーの秘密 テック企業の戦略から見えてくるDXの鍵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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