消費者の歴史 ― 江戸から現代まで

著者 :
  • 千倉書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784805109687

作品紹介・あらすじ

消費者はどのように誕生し社会的に普及したのか。それに伴い消費社会はどう生成、発展し、揺らぎ始めたか。その変動過程を展望する初めての通史。

感想・レビュー・書評

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  • タイトルの通りの本,江戸からバブル崩壊前の高度経済成長期までの消費者の歴史

    バブル崩壊後以降の1990~2020については語られていない.だからこそ自分なりに消費者の歴史になんて書かれる考えてみるのは面白ろそう.
    ・不景気,終身雇用神話・年功序列の崩壊⇨
     ーそもそも働きたくないというニーズ(FIRE) 貯蓄でも消費でもなく投資へ
     ー雇用,お金に依存しない自己実現へのあこがれ ミニマリズム,移住,ダウンシフト
    ・情報通信技術の発展
      ー娯楽のゼロコスト化
      ーSNS,承認欲求という無を追い求める消費
      ー射幸性を煽りバーチャル自己実現を与えてくれるソシャゲ,
      ーアイドルという偶像へのお布施

    消費や生活スタイルについて,おじさんとのギャップを感じることが多いけど,この本を読むと「ああこの人は19xx年の人だなあ」ということがわかる.

    身分社会制度で一部の階級に許された贅沢は明治の文明開花,大正デモクラシーを経て大衆にも広まる.しかし世界大戦で国の経済統制で一時は上の凌ぐのが精一杯に,その後の経済復興,高度経済成長で一個人が必需消費ではなく贅沢消費を楽しむ大衆消費社会へ.
    大手百貨店,マーケター,電気メーカーがその時々をリードしていたみたいだ.これは過去の栄光と今のコントラストを語られる大手企業の存在とつながる.
    ひと昔はマーケターが笛を吹けば誰もがそれに合わせて踊る(消費する)時代だったらしい.信じられない.
    ------------
    給料→税金→可処分所得→生活必需品→自由裁量所得
    自由裁量所得の発生→消費により快楽を求める社会へ

    文化→慣例上の差

    consumerは初期の英語では穀潰し的なネガティブな意味を持っていた。

    江戸時代はお上が質素倹約を推奨する時代で武士も町民も農民もたびたびそれを勧告された。
    →江戸幕府が生産性を飛躍的に高めようという方向に倒れなかったのはなぜだろう。

    "農民はいわば準消費者としての生活を続けた。準消費者とは、生活物資の一部分しか商品として購入しないという意味である"
    →いいね。理想だ。

    江戸時代の上級武士→金はあった。でも職業軍人としての仕事もなく事業(副業)をすることも許されなかった→快楽に走るしかなかった。
    →へー

    江戸の町人、特に豪商も金に困らない生活だったが階級身分社会に抑圧荒れておりその発散は浮世消費でしか出来なかった→「いき」と財力でモノを言う遊郭などでの散財
    江戸の町人こそが裁量自由所得、快楽主義的欲求、選択の自由があるザ消費者。

    豪華絢爛、金を湯水のように使う文化もあれば侘び寂びを良しとする文化もある。江戸時代。気になるぞ。

    明治維新以降に生まれた地主→"高級旅館に宿泊するさい、宿帳の職業欄に無職と記せば、宿の者は畏敬の眼差しで彼らを眺めた。"うける

    サラリーマンが夜の繁華街で派手に金を使うのは,高度成長期で稼げども家庭に居場所がなかった働きバチの憩いの場だったから

    アイデンティティを消費に求める.ブランドの選定などオリジナリティを追求しつつ,それを理解してくれる同調者は求めるという矛盾.
    ⇨振り回されて消耗してるな〜という感想.

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著者プロフィール

田村正紀(たむら・まさのり)
1940年大阪市生まれ。1962年大阪市立大学商学部卒、1966年神戸大学大学院経営学研究科博士課程中退後、神戸大学経営学部助手、専任講師、助教授、教授、2006年定年退官、名誉教授。

「2019年 『流通モード進化論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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