組織の失敗学 (中災防新書)

著者 :
  • 中央労働災害防止協会
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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784805914434

感想・レビュー・書評

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  • 組織は様々な人間で構成されかつ、組織ごとに存在意義も目標も異なる。社員数も会社の規模や社歴も異なるから、外見的には人が千差万別であるように会社もまたその数だけ形があると言える。その様な中でほぼ全てに共通しているものと言えば、必ず何の為に会社があるかという存在意義があり、存続を続ける事がその企業にとって最大の目標の一つであるという事だ。まさか、無くして潰す事を組織の目的とする様な会社や経営者は居ないだろう(もし存在するとしたら、予め潰す事を前提に派遣されたスパイか何かだ)。とはいえ現代社会では意外にも簡単に会社は潰れてしまう。勿論経営者自身の能力不足はあるだろうが、それ自体は潰れたきっかけでしかなく、規模が大きな組織であれば根本的に会社が衰退するほどの問題を潜在的に抱えているものだ。顕在化すれば手遅れだし市場もそれを見逃さないだろう。
    とは言え、潰れていない会社も持ち堪えている会社もそれこそ財務的に健全に見えてる会社でさえ、問題を全く抱えないでやって来れた組織は稀だろう。寧ろそうした何も起こらなかった会社ほどいざ何らかの外的なリスク(例えばライバル会社の攻勢や災害なども)を目の当たりにした際に脆い可能性がある。
    会社が存続する為には、その様なリスクに強く、尚且つ内側に抱えるリスクを早期に回避・抑制・転嫁できる準備ができなければならない。
    本書は過去に筆者が目の当たりにしてきた、失敗した組織と成功した組織を、実際の企業ヒアリングや公にされた事例などから分析し、組織の失敗学として著したものとなっている。そこには誰もが知っている失敗事例や、あまり馴染みのない小規模な会社の成功事例など、どれも会社に所属するビジネスパーソンにとっては思い当たる節がありとても理解しやすい。
    やはり強い組織にする為にはトップの思想や哲学、実行力がモノを言う。トップが何を考えているか分からず、哲学もなくブレるようなら会社は必然的に危うい。本書を読み進める読者は自分たちのトップや組織自体を比較しながら多くの考察を得る事になる。
    もし、あなたの会社のトップが優れた方であれば、組織の空気はよく(澱みなく)、社員のモチベーションが何らか高水準で維持され、不正につながる様な業務は複眼チェックされるようなルールがある事だろう。もしくは限りなく全社員が一定水準以上の良識ある人間で構成されていると思われる。社員が会社に尽くして末端まで経営を意識している会社は稀だと思うが、自社の売り上げや利益の規模を質問されても易々と答える事ができる。残念ながら、数字の桁もわからない様な部下がいるなら組織としてもアウト、さらに率いる能力が長けているとは言い難い。
    ここで紹介されている企業の多くは、社員が意識せずとも良好な風土を築ける仕組みやシステムが揃っているし、勿論社外取締役をはじめとする外部の監査機能がしっかり働いていると感じる。筆者が言う通り、それらが社内特に経営トップとの繋がりや良好な関係を維持する事を目的にしてしまっているなら、その会社が衰退する可能性が大いにある。
    社外公表数字の信頼性が高く、中立的な社外取締役の設置、経営トップのマインド、社員と経営を繋ぐ仕組み、これらが全て揃っている組織はそう多くないかもしれないが、どの程度揃っているかは失敗の少ない組織を探す一つの指標になるだろう。

  • 東2法経図・6F開架:336A/H56s//K

  • 組織に要因のある失敗の事例が、ケーススタディとして数多く提示されている。具体的な話が多くどれも興味深いが、文字数が少ないのが残念。インデックスとして利用するのがよいかも。
    安全ばかりを叫ぶと、組織文化が硬直化する。安全を高めつつ、成員を活性化するバランスが必要だろう。

  • 失敗をどう分析して次に活かすか、組織論、リーダー論など事例を元に解説。考えに考えた話ばかりで参考になる。

  • 久しぶりに実用書読んだ。部長のオススメ、上司に借りて。

    危機管理の専門家が書いただけあって、リスクに対する考え方は参考になった。

    「普段の仕事で活力が溢れている組織は危機管理にも強いということ」

    安全はタダではない

    自ら納得できるまで分析せよ

    老子「無用の用」

    メトロール社スペシャリストの集まり

    まだまだ平社員だけど、マネジメント側になって読むとさらに勉強になりそう。

  • 多岐に亘る組織事故と組織のベストプラクティスの紹介。

  • ◆エマルゴ演習
    ◆勉強頭と仕事頭の違い
     ・勉強頭⇒大量の情報を体系的にインプットした上で、
      状況に応じて適切にアウトプットする「情報処理能力」
     ・仕事頭⇒
      ①「外部需要能力」=情報獲得意欲、
       情報把握力、異なる価値観の受容性
       (居心地の良い同質的な仲間たちとの付き合いから離
       れ、外部の異質な世界をもっと知ろうとする)
       ②「内部強化能力」=高いワークスタンダード、自立性、
        問題意識(仕事をする以上は自分で納得のいく出来に
        したい)
       ③「成果管理能力」=当事者意識、目標設定能力、
        成果獲得力(この仕事は俺の仕事だ、だから意地でも
        結果を出してやる)
       ④「概念化能力」=情報選択力、本質を見極めようとする
        掘り下げる力、具体的な解決策や方法論に落とし込む
        力(無から有を生み出す思考能力)
    ◆ドイツ空軍空爆王「ハンス・ウルリッヒ・ルーデル」
    ◆富士通SIアシュアランス本部
    ◆雪印乳業・八雲事件
    ◆森鴎外と脚気
    ◆サトーの三行提案制度
    ◆吉野家のメガ丼事件(クレームがついたその日のうちに問題店舗と店員特定、エリアマネージャーの現場掌握力)
    ◆ディスコの組織文化改革(業績連動経費システム)
    ◆キューピーの偉大なる平凡
    ◆佐久間勉 第六号潜水艇長の遺書 「私事に関する事言うことなし」 リーダーの覚悟、失敗の本質

  • 一言でいうと「人間はロボットじゃない」ってことかなと思いました。様々な、組織の失敗事例が解説されています。

    工場見学の後に、キューピーの社員たちと居酒屋で懇親会を開いたら話題がぜんぶマヨネーズに関することだったという逸話(つまり、キューピーは、会社が好きで仕事が好きな人の集まり)は、素晴らしいことだなぁと思いました。

    また、本当の危機管理についても学べるので色々と参考になりました。

  • 本書は、08年~12年に月刊誌やウェブ上で掲載されたコラムを取りまとめたもの。危機管理の専門家である筆者が、これまでに国内外で起きた数々の「失敗」事例をもとに、不祥事の防止、危機管理の考え方、組織の構造改革、リーダーのあり方などについて実務的に分析し、分かりやすく解説する。

    企業や国に関する不祥事・問題のみならず、歴史上の事件なども含め、多岐にわたる事例が紹介されているが、その根底には「リーダーたる者は、その責任の重さを自覚し、その地位の孤独さに耐えなければならない」という一貫した筆者の理念がうかがえる。

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著者プロフィール

1961年生まれ。1984年に東京大学経済学部卒業。警察庁へ。

内閣安全保障室参事官補、愛知県警察本部警備部長、四国管区警察局首席監察官などを経て、現在は警察大学校警察政策研究センター教授。これまでオウム真理教事件、ペルー大使公邸人質事件、東海大水害対策などの危機管理に従事。

企業不祥事の分析を通じて組織のリスク管理及び危機管理を研究。1994年にダートマス大学 Tuck School で MBA,2012年に千葉商科大学大学院政策研究科で博士(政策研究)取得。

著書に、『組織不祥事研究』(白桃書房)、『続・なぜ、企業は不祥事を繰り返すのか』『なぜ,企業は不祥事を繰り返すのか』(日刊工業新聞社),『組織行動の「まずい!!」学』(祥伝社),『組織の失敗学』(中央労働災害防止協会)など多数。

「2019年 『企業組織の発展段階を知ろう! ベンチャーの経営変革の障害』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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