トリスタンとイズー

  • 沖積舎
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784806030430

感想・レビュー・書評

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  • 有名な、媚薬を飲んでしまうシーンがないのだけれど、
    サトクリフは、薬を飲んでしまったことが、物語を人工的なものに変えてしまうと恐れ、そのモチーフを削除した。
    前書きにそれを記していて、ケルトの物語にこだわる、サトクリフらしさにかえって旨がときめく。

    さて、私自身もトリスタン・イズー物語を若い頃読んだきりすっかり忘れて暮らして来たけれども、久しぶりにこの愛の物語を思い出し、まさかサトクリフが書いていたことも知らなかったので、うっとりとした気持ちと、若く溌剌とした王子、トリスタンの冒険物語にも助けられ、一気に読んでしまった。

    中世の王族たちの気高さは本当に美しく、また、そのまわりの嫉妬の混じった人々の話は面白いものですね。
    その中に美しく理想的な宿命の愛が描かれ、とにかく面白かった。絡み合う王族たちの血。。

    胸がときめき、どんなに新しく斬新な小説よりも本当に面白かった。

  • 再読。そして何度でも読みたい。

    愛の妙薬が登場しない「トリスタンとイゾルデ」。アイルランドに伝わる「ディアドラとウシュネの息子たち」「ディアルミドとグラーニャ」を参考に、このアイテムは後世の後付けなのではとの考察から出発しているのが最大の特色。ケルト神話により近い物語が模索された結果、中世の騎士物語からはだいぶ遠ざかった野趣のようなものがうかがえる。トリスタンが学ぶ勇者の技に「跳躍」があるところとか、投げ槍の技術とか。
    そして野趣あふれる猛々しい手触りを、惹かれ合う二人の間に、逃れようのない運命として描き出していく。これがこのお話の面白さの最たるものだと思う。すでに大筋は了解済みなのに、頁を繰るたび驚きや畏怖を覚えずにはいられないからすごい。愛の妙薬なんていらなかった。納得するしかない。要所で運命を決定づけるかのようなイズーの言葉の強烈さたるや。

  • 「イズー」と「イゾルデ」とどっちが正しいのでしょうね?
    スペル見ると「Iseult」ですけど、変換もイゾルデはスッと出たけどイズーは範囲指定し直さないと出なかったです。
    どっちでもいいといえばいいんだけどちょっと気になる。

    「トリスタンとイズー(イゾルデだったかも)」はむかーし読んだことあるんですよ。誰が書いたやつか忘れてしまいましたけど。
    で、そしたら当然のことながら愛の薬が出てくるんですよね。
    その本でのトリスタンとイズーは気が合わないのか、まーとにかく仲が悪いのです。徹頭徹尾、寄ると触るといがみ合ってばっかり。イゾルデは身内を殺された恨みがあるからまだしも、トリスタンまで真に受けてどうするよーて。とにかく性が合わないとしか思えない不仲ぶり。
    そ・れ・が!間違って薬を飲んだ途端、お互いが熱烈に相手を慕い出すのです。その豹変ぶりと来たらこちらが薄ら寒くなるほどに。
    で、そこから先はなんだかんだと熱ーい口説き文句を言い合うわけですよ。
    でもこっちからすると「それ薬のせいやん!」としか思えないわけです(´。`)。
    どれだけ相手を思ってるかとか熱烈にかき口説いても「ああ薬飲んだしな」て思ってしまって、最後の悲劇がなんだかちゃちに感じて仕方なかったです。だってねえ…?薬に踊らされてるだけでこの騒ぎか…て。
    で、このサトクリフの本ですけど、昔読んだときに私がこだわってしまって仕方なかったこの愛の薬という小道具を消してしまってます。
    前書きの中に「彼らの中に存在していた生々しいものを人工的なものに変えてしまうような気がするので削除した」、と書かれています。
    小躍りしましたよ~。
    お陰でこちらを私にとっての「トリスタンとイズー」の定番にしたくなるくらいにおもしろく読めました。だって自然なんだもの。
    イズーが最初の登場シーンでみせた我の強さ、矜持とも言えるのでしょうけど、しばらくイズーのその性質が表立って書かれることはないもののそれこそが彼女の本質でもあって、結果それが最後の悲劇につながるところはお見事でした。

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著者プロフィール

イギリスの児童文学者、小説家。幼いときの病がもとで歩行が不自由になる。自らの運命と向きあいながら、数多くの作品を書いた。『第九軍団のワシ』、『銀の枝』、『ともしびをかかげて』(59年カーネギー賞受賞)(以上、岩波書店)のローマン・ブリテン三部作で、歴史小説家としての地位を確立。数多くの長編、ラジオの脚本、イギリスの伝説の再話、自伝などがある。

「2020年 『夜明けの風[新版]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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