歴史が面白くなる 東大のディープな世界史

著者 :
  • KADOKAWA(中経出版)
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本棚登録 : 350
感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784806147879

作品紹介・あらすじ

東大の世界史の入試問題は、語句に関する基本的な知識に加えて、「広く深い」理解が求められている。一つの出来事が、現代世界を形成するに至るまでにどう辿ったかという理解が得られる「ディープ」な入試問題の数々から、グローバル化する現代に生きる上で知っておきたい世界史の知識を学べる一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 東大の世界史入試問題をもとに世界史の奥深さを学べる本。

    大学受験のころ世界史受験だったのだけど、なまけまくっていたので、受験直前に一夜漬け暗記地獄に終始した。
    世界の色々な国で起きていた事件は互いに関係がある、というのはその受験時代にもうすうす気づいていたが、暗記に必至で考える暇がなかった。
    逆にその関係がきちんと理解できていれば、一夜漬け暗記のように、すぐに忘れるということはないだろう。

    東大の入試はそんな暗記勉強では歯が立たない良問だ。

    前半の「第一章 地球丸ごと世界史」が色々な国、時代が絡まった説明になっていて、立体的に世界が浮かび上がるようで面白い。

    世界経済は銀により統一化され、西洋三角貿易(アメリカ(綿花・コーヒー・たばこ・さとうきび)ーヨーロッパ(雑貨、武器)ーアフリカ(奴隷))により富が蓄財されていったこと。

    イギリスの産業革命はその三角貿易の図式の上に成り立ち、綿工業を機械化で生産力を圧倒的にアップすることで、パクスブリタニカと言われるほどの繁栄を実現したこと。インドの支配の為にエジプトの支配が重要となること。

    今のグローバル時代だけではなく、近代から世界の政治と経済は国毎の思惑や利害関係に大きく依存しているということ。

    世界史好きには初歩の初歩なのでしょうが、世界史のダイナミズムに触れられて面白かった。

  • 東大の入試問題を問題意図から説明していく形式。
    東大の問題の奥深さがすごい。一つの問題にここまで深く考えられるのかと思った。受験生はどこまで考えて問題を解いてるのか気になるけどあそこまで考えられるから東大生なのかなって思った。私が受験生のころは絶対あんな深くは考えられない。笑笑
    ただ、世界史を勉強してたのは1年ほど前なので、結構知識が抜け落ちてて、受験生のとき読んだらもっと理解できたのかなと思った。
    世界史もう一回勉強しようかな!多分しない笑

  • ☆2(付箋6枚/P271→割合2.21%)

    東大入試の問題を紐解くと世界史の流れを背景として読めるという面白い試みの本です。
    マキャベリは君主論だけが有名なので、ローマ史論という著作があって、そこから読み解ける思想があるとは知らなかったなぁ。面白かった。

    ・ローマ帝国衰亡の要因の一つは、その基盤である属州(海外領土)が拡大できなくなったことです。属州では「10分の1税」が徴収されます。10分の1税とは、属州が生産・収穫量の10%分を税として負担するものです。ですから、原則として属州が増えれば、ローマの収入も増える計算になります。しかも属州の獲得は基本的に武力によるものですから、被征服地で発生する捕虜は、連行後、奴隷市場で売りに出され、労働力として生産経済を荷い、また、属州は輸出市場としても期待されました。
    …これは資本主義と似ています。生産経済の歯車は一度回り始めたら止められません。経済成長を続けたいなら、その実現のために属州拡大戦争が必要です。属州帝国は、拡大再生産体制の軌道から外れることはできないようです。
    そうしたやり方が破綻したのが、紀元3世紀でした。属州が増えず、奴隷も高齢化する。若くて頑強な奴隷はほしいが調達できない―ラティフンディア(奴隷制大土地経営)を経営する地主には大打撃です。

    ・紀元30年頃、イエスが処刑されると、その復活を信じる人々が主導者ペテロのもとで「イエス・メシア教団」(原始キリスト教)をつくりました。イエスは神の子で、メシアであるという信仰ですが、紀元40年代になると、教団の運営が厳しくなりました。
    というのも、ユダヤ教指導層とローマの総督が手を組んで、イエス・メシア教団への攻撃を強めてきたのです。しかもユダヤ大飢饉がこれに追い撃ちをかけ、イエス教団の衰退は避けられない状況となりました。
    この危機を救ったのが、ユダヤの教団(本部)に対して、シリア地方アンティオキアのイエス教団(支部)がとった食料物資の支援体制です。支部が本部を助けたような関係です。そのシリアでは、イエスを神の子、メシアと信じる者は、ユダヤ人でなくても教団に参加できました。信徒の裾野が広がらないと、イエス教団は維持できないことを学習したのです。
    こうした状況が、イエス教団の根本的なあり方を根底から変えることになります。つまり、イエス教団はユダヤ人の民族性をかき消して、誰もが参加できる教団に変わるということです。こうした路線転換を積極的に進めたのが、アンティオキアの以西、タルソス出身のパウロでした。
    パウロは大胆な改革で教団の消滅の危機を救ったのです。ヘブライ人の民族色を消して世界に羽ばたく教団に変えよう、教団名の「メシア」はヘブライ語だから、コイネー(共通語)、つまりギリシア語の「キリスト」に改称しようと提唱。洗礼と悔い改めの精神が重視され、入信手続きも簡素化されました。ペテロは、パウロの方針に従うことになります。

    ・こうなると、ドイツは南北アフリカのどちらの航路も利用しないで、欧州大陸からインド洋・太平洋に出られます。しかも、その出口はペルシア湾。ここから海上に出るということは、3B政策のベクトルは、英領インド帝国に向けられることになります。
    3B政策とは、ベルリン、ビザンティオン(イスタンブル)、バグダードを鉄道でつなぐことではなく、ペルシア湾からインド洋、太平洋に出ることに意味を置くものです。そして、ペルシア湾から太平洋方面の植民地勢力圏を確保しようとしました。
    …この難題に解決を与えたのが、1902年の日英同盟でした。1905年の改定日英同盟では、対抗すべき第三者はドイツとなります。日本は山東半島、太平洋諸島に関心をもちました。一方、イギリスは、同盟に新たな付加価値を盛り込みました。それは、日本にインド防衛の義務を負わせるというものでした。

    ・1944年10月、チャーチルはスターリンを訪問します。このとき、B5サイズほどの用紙に書き込んだメモをポケットから取り出し、スターリンに手渡しました。スターリンは、意味がわからず、キョトンとしながらも、「チャーチル・メモ」を凝視します。通訳から聞いて合点がいくと、メモに青鉛筆で承諾を意味する✓印をつけ、チャーチルに戻しました。
    内容は、「ギリシアはイギリスが90%、ルーマニアはソ連が90%とする」という、英ソ両国のバルカン半島勢力分布比を示すものでした。数値は便宜的なもので、実際の分割比は互いに100%です。スターリンが戦後のギリシア問題に関心を示さなかったのは、ここに根本的理由がありました。

    ・アロー戦争後、欧米諸国は「清国には、外交交渉を行う機関がないではないか!」と強く迫ります。清国は「いや、そんなことはない。対外交渉の機関として、礼部がある」と反論したいところでした。
    礼部は朝貢の窓口となる部署で、ヴェトナム、琉球、朝鮮といった属国との交渉機関です。しかし欧米諸国は、礼部を認めません。主権国家間の対等性を国際標準とする欧米諸国にしてみれば、礼部を相手の交渉はしないのです。
    …この解答は「総理各国事務衙門」(総理衙門)です。これは、主権国家同士は対等であるという国家公法に倣って成立された外交機関です。中華思想にもとづく伝統の東アジアの国際交流は、こうした外交部署の形式とそのあり方から瓦解していきます。

    ・共和制を論じた『ローマ史論』と君主制の『君主論』は、1510年代の同じ時期に書かれています。その内容は、相反する二つの政治論と評されました。このため、マキァヴェリは「ご都合主義者」「矛盾した政治思想家」「メディチ家の主君に尻尾を振る共和主義者」ともいわれたようですが、果たしてそうでしょうか。
    『君主論』の題名は『IL Principe』。これはラテン語の「プリンケプス」(princeps)に由来します。意味は「全市民のなかの第一人者」で、そうであればマキァヴェリが使った「君主」とは、「共和政体を代表する個人」という解釈も成り立ちます。
    個人の権力は全市民、あるいは、その代表機関に発しているということです。マキァヴェリは、古典ローマに教訓を求めた共和主義者です。その彼が、君主を共和政体の第一人者というプリンケプスと認識したとき、マキァヴェリのなかで共和主義思想と『君主論』の間に矛盾はなかった。むしろ君主制であれ、共和制であれ、問題は政体とその概念を固定的に捉えるのではなく、重要なことは運用にある、というのがマキァヴェリの言わんとするところではないでしょうか。

  • 高校生でこんな難しい論述ができないと、東大は受からんのかと思うと驚愕。日本史の方はまだなんとなく難しさの度合いが理解できたが、世界史はよっぽど知識の幅が広くないと解けないと思う。
    そんな高度な東大世界史を、一般向けに上手く解きほぐして出題者の意図をわかりやすく伝えてくれる良書。
    世界史の本て事実の羅列や単独の知識ネタ、個人的な趣味の爆発したようなのしかないから、こういう本は貴重です。

  • 良問揃い

  • 面白かった。
    むかーし覚えた単語がこう繋がってくるのかとおもうと謎解きミステリ読んでる気分。
    まあ謎解きはいつも出来ないタイプなので読むだけになるんだけれど。
    それでも面白かった。
    難しかったけれど。

  • 東大の問題をベースに深堀をしていく。
    世界史をほとんど勉強したことが無かったが、興味がわいた。

  • 東大世界史問題を題材に事件が起きた背景を理解できるとともに、そこに横たわっている生々しい人間の感情を楽しむことができた。小説を読んでいるような感覚になりました。面白かったです。

  • 2014/9/7図書館から借りてきた。

  • 世界史を真面目に勉強してこなかった私。最初に読んだときは、理解が出来なくて挫折。他の本で何となく流れを掴んで、2回目のチャレンジで読み終えた。
    世界史ってあまりに範囲が広いので、何を知っていれば良いんだろう?ってなる。この本を読むと、「東大の試験問題を知っている」という優越感に浸れる。実際に試験で解いてしまう受験生はスゴイと思った。

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著者プロフィール

◉──東京都出身。東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所研究員を経て、聖心女子大学文学部歴史社会学科兼任講師となる。おもな著書に『東大生が身につけている教養としての世界史』(河出書房新社)、『歴史が面白くなる東大のディープな世界史』(KADOKAWA /中経出版)、『エリア別だから流れがつながる 世界史』(監修、朝日新聞出版)など多数ある。

「2023年 『箱庭西洋史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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