- Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
- / ISBN・EAN: 9784806721895
作品紹介・あらすじ
本書の目的は、環境の持っている価値を金額で評価することで、環境破壊をめぐる開発と保護の対立を解決するための一つの方向性を示すことである。これまで、環境を守れという要求は、理念的あるいは情緒的なものが大半であった。だが、現実社会が市場メカニズムによって動いている以上、ただ感情的に環境を守れと訴えるだけでは、現実の環境問題の解決にはならない。そこで、環境の価値を評価する手法として、CVM(仮想評価法)をとりあげる。CVMはアンケートを用いて一般市民にたずねることで、環境の価値を金額で評価する手法である。本書は、環境問題に関心のある読者を対象に、このCVMを紹介することを目的としている。なぜ環境破壊が進むのか、環境の価値とは何か、そしてどのようにしてCVMが環境の価値を評価するのかなど、CVMについて詳細な解説を行う。CVMは経済学の手法であるが、本書は経済学の専門知識は必要としなくても読むことができるように配慮を行っている。
感想・レビュー・書評
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自然環境が大事だってことは、だれでも知っている。
でも、それがどれだけの価値をもっているかってことは、実は誰もよく分かっていない。
ときどき、「この森の保水能力はダム何個分で、、、」なんて形で、森林の価値をわかりやすく説明したりしてるけど、森林の持つ価値はそれだけではないはずなんだ。
そこに生息する生物の存在は?僕らがそこを訪れることで生じる価値は?あるいは、自然がそこにあるだけで発生している価値は、、、、。
仮想市場評価法CVMはそれらを明らかにする可能性を秘めている手法だ。そして、その適用範囲は自然から文化遺産、環境汚染、文化政策まで幅広い。
この本は、そのCVMについて、その背景から適用方法、陥りやすい間違いを、やこの手法の限界を、丁寧に解説してくれる。著者である栗山浩一先生自身の経験とともに、世界中で適用されたケースを通し説明され、先行研究までがまとめられている。
もちろん、ケースの説明や、CVM全体の概説だけでなく、きちんとした経済モデルの提示と、その適用方法も書いてある。それが、この本の良いところだ。単なる、入門でなく、しっかりとした研究の手法も書いてあり、これを参考にしながら、自分の研究を考えて行くことができる。
出版から少し年月がたっているので、発展著しいCVM研究事例は、この本の巻末に集録されているよりも、さらに増えているが、この本でまとめられている事、書かれている事は、これから環境評価や文化財の評価、文化政策、都市政策などで、CVMを使おうとする人にはとてもよい手引きとなるだろう。僕自身、研究の過程でなんどもこの本を手にとり、考えを深め、海外の研究論文でわからない部分の確認などを行なった。
文章も丁寧でやさしく書いてあり、学部生、経済を深く勉強していない他分野の院生などでも読みやすく出来ている。
専門的で、充実しているが、読みやすい。
このような専門書が増えて行けば、学問や研究の面白さが多くの人に伝わり、また研究者の質も高まるのではないだろうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示