LOVE THE LIGHT,LOVE THE LIFE 時空を超える光を創る
- 東京新聞出版局 (2011年11月16日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784808309497
作品紹介・あらすじ
世界的照明デザイナーが描く光の世界と、その作品が生まれるまでの道のりをたどる。さまざまな光技術が誕生する今、改めて考えたい灯すことの意味と光の可能性。
感想・レビュー・書評
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光のデザインを幅広く手掛ける照明デザイナーの石井幹子さん。
「ライトアップ」という言葉が定着したのはつい最近のことで、照明文化という概念のない時代に、日本を出て北欧で学び、次々に新規事業を開拓。世界で活躍する現在に至る。
パイオニアとして生きる強さ、子育てをしながら働くには厳しい社会に向き合いながら乗り越えてきた情熱が、ありありと伝わってくる自伝。
代表的作品は、・・・東京タワー、東京駅赤レンガ駅舎、レインボーブリッジ、白川郷・・・他、海外にも多数。
古い建造物には柔らかな光を照らすことで、眺めた人々の心に昔の記憶のかけらを蘇らせる。
新しい建造物に写る光は、そこに未来への勇気と希望を生みだす。
光は「時空を越える」働きがあると、著者は説く。
オイルショック、震災、節電の風当たりの強さを体験し、しかし決して電力を大量消費しているわけではないことを言及する。
時代に応じた最先端技術を積極的に取り入れ、省エネの取組みも実証。
また、太陽光で電気を自ら生み消費する「自産自消」も実践し、それが世の中全体に広まることを強く提案している。
3.11大震災の1ヵ月後、東京タワー大展望に灯された光メッセージは、電力を太陽光発電でまかなっている。
夜空に浮かぶ「GANBARO NIPPON」
"今こそ東京タワーは元気でいなくては"の想いを込めた発信は、力強い励ましとなった。
白川郷のライトアップでは、月明かりに包まれたような照明を凝らすことで、日本の四季/季節感を大切にするこだわりが見事に演出され、陰影に富んだ美しさが際立っている。
提灯の美しさやキャンドル灯りのもたらす癒し効果にも触れ、間接照明やキャンドルの揺れる灯りが包む心地よさも奨めている。
"灯り"という多彩な領域を通じて、芸術性と社会的価値観を反映させる著者の情熱。
灯りとはこんなにも多様であったのか!と感銘を受け、仕事に対する想いと責任感に、魅了される一冊。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
中高校生の頃にこの本を読んでいたかった。夢の手前にいる女の子達に贈りたい良書。
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環境照明という概念があります。建築物の外観を覆うファサードの一部としての照明技術は、LED照明の登場とともに様々な表現が可能になってきました。時間、季節とともに建物が環境の一部であり、風景として語る力を持ってきたのだと思います。著者はこの分野の草分けとして、様々な照明を手がけられてきました。スカイツリーの江戸紫なんて、素敵なネーミングと光ではないでしょうか。
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【暗闇に灯る、優しさの軌跡】日本の照明デザイナーの第一人者として世界を股にかけて活躍する石井幹子。照明デザイナーという概念がない時代に灯りに触発され、北欧で学び、今や引く手数多となった彼女の半生を記した作品です。東京新聞の夕刊に連載された『この道』に、日独交流150年の記念イベントについてのエピソードを追記した内容となったおり、ご自身が手がけた作品も写真入りで掲載されています。
フロントランナーの話、特に自分の知らない世界のそれは最高に面白い。照明という機能を通して人間の生活や美意識をここまで刺激し、揺り動かし、感動させられるものかと感嘆とさせられるばかりでした。普段は(職場を主として)強烈な白色の明かりの下で生活していることが多い自分ですが、早速本書に触発されて間接照明などの優しい、それでいて美しい明かりを揃えてみようかなと考えるように。
東京タワーやレインボーブリッジを始めとして、本書で言及がされている石井氏の作品のほぼ全てに写真がつけられていることも嬉しい限り。闇夜に浮かぶ明かりの、そしてその被写体の美しさに息を呑まされること間違いなしです。どの作品も超一級であることは言を待たないのですが、その中でも特にハッとさせられたのが、上海にあるワールド・フィナンシャル・センターの輝き。あまりの近未来的洗練さに、「まぁずいぶんと遠くまできたもんだ...」とため息混じり驚かざるを得ませんでした。
〜光は暮らしを彩るだけではありません。夜の都市を変え、弱者を守り、生活と時間を拡大させます。〜
これだからカッティング・エッジの人間はたまらない☆5つ -
プロジェクトの写真が載っている
まだ、女性が働くという環境でない
中、着実に照明デザインの世界を
つくりつつ、子を育ててこれたパワー
は本当に素晴らしいと
そして、娘さんが同じ道を歩んでいる
のは、やってきたことが正しかったと
実感しなにより嬉しい事ではないかと -
やはりなんでも、パイオニアとなる人はカッコイイ。
代表的な東京タワーのライトアップをはじめ、国内で数々の大プロジェクトに関わってきた照明デザイナーの自伝。
今や当たり前になっている歴史的建造物のライトアップも、大架橋のライトアップも、この人なくしてはなかったのでは?
景観照明だけでなく、舞台照明、インテリア照明、ライティングイベントまで、そのどれもが芸術性とメッセージ性を含み、同時に社会的価値観を反映させた最先端技術を取り入れる試みもなされていて、単純に、どのプロジェクトの経過を追ってもワクワクした。そしてそれは、やっている本人が心底夢中になっているからということが、ありありと伝わってくる、力強い一冊。 -
ライトアップという言葉が日本に定着した要因は著者の石井幹子さんにあることを再認識。一番美しい光は満月の夜の光と書かれている。日本の建築に合っているように感じる。私の生まれ育ち、そして現在住んでいる街で幼少時代を過ごしており、その家が原風景の一つというのもビックリ。その住まいがもし残っているなら見に行ってみたい。