「本の寺子屋」が地方を創る 塩尻市立図書館の挑戦

  • 東洋出版
3.69
  • (3)
  • (6)
  • (6)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 97
感想 : 7
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (152ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784809678295

作品紹介・あらすじ

"「本」の可能性を考えたい"をテーマに掲げる図書館員と、その言葉を信じる市民、本をめぐる人々の物語。未来は、ここから開かれる。長野県中央に位置する人口6万7千人の小都市。ここには、多くの小説家、評論家、詩人、歌人、俳人たちが訪れる。その理由とは?

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 図書館に関する本が二冊借りたままなので、年越ししたくないので師走にあわてて読み終える。塩尻図書館の「本の寺子屋」のテーマと運営の仕方が語られている。

    一番のキモは、当初から行われている「本の寺子屋」の講演会。どんな形にせよ、図書館に足を運んでもらう、本に興味を持ってもらう、そして本に触れる習慣を生活に入れてもらう。

    一番響いたことは、「貸出冊数を気にするのはやめる」と、その本が図書館にあって助かったという利用者を増やす。なぜ、公共の施設としての図書館があるのか・・・新しい図書館と言いながら、趣旨を明確にしておかなけれが、「本」というものから離れ、単なる「人寄り場所」の提供に終わってしまう。

    人が集まり、語らい。そこから知の拠点として何を生み出すのか、そこを明確しなければ、イベントそのものもあらぬ方向へ行ってしまう危険性がある。

  • 「えんぱーく」へ行く知人を横目に、「?」と漠然と思っていたのだが~ようやくその意味がわかりました。
    この本を読むきっかけになった「東京国際ブックフェア2016図書館・出版シンポジウム」の内野先生のお話に感謝です。

    東京一極集中の昨今、こうした魅力的な地方をしかけていくというワクワクした感じが伝わった。しかもそれを図書館で!
    そうだ、「図書館は生涯のキャンパス」なんだもの。
    「社会教育施設」なのだ。

    「信州しおじり 本の寺子屋」
    http://www.city.shiojiri.nagano.jp/tanoshimu/toshokan/shinshuhonnoterakoya/index.html

    「本の寺子屋」とは~
    塩尻市立図書館が中心になって推進している取り組みで、講演会、講座等のさまざまな事業を通じて、「本」の可能性を考える機会を提供するもの。
    地域に生きる市民の生活の中心にもう一度、本を据え直し、
    読書を習慣化させるための方策を、
    聞き手、作り手、送り手、読み手が
    共同して創り出そうとする仕掛け。

    「ときどき俺もそう感じる。こんな文章を書いて何の意味があるのかと。たまに。昔はこうじゃなかった。世界はもっと小さかった。手応えのようなものがあった。自分が何をやっているかがちゃんとわかった。みんなが何を求めているかがちゃんとわかった。メディアそのものが小さかった。みんながみんなの顔を知ってた。」ダンス・ダンス・ダンス上P333

    P25詩人は「読者の顔が見えなくなっちまった」と答えたという。
    「じぶんの言葉が、骨髄のところで病み、対象を失っているという知覚が日に日に強まっていた。」

    P28本は書き手の頭のなかだけでできあがるのではない、という編集者の、経験によって培われ、鍛えられた信念がある。
    本の生命力を維持し続けるためには、従来の編集者の役割を演じ、書き手に霊感を与える、あるいは「瞬間の王」が行きいながらえるための何らかの新たな仕掛けが必要になるのではないか。
    世界は、時間の経過に伴って複雑化していく。かつて、世の中が今ほど複雑ではなかった時代には、編集者は自らの仕事を通じて、たしかに書き手に幾分かの霊感を与えていた。しかし編集者単独では、もはやその仕事を背負いきれないほどに原題は複雑になった。それゆえ書き手は、時代の呼吸音を聞くために、今や編集者だけではなく、読み手の声に直接、耳を傾ける必要があるのではないか。これが「本の寺子屋」を実現しなければならないという思いの根本的な動機である。

    P57どこの図書館でも、読書が大好きな方は、人口の一割程度です。
    今まで図書館に足を運ばなかった人はそれが「今までの図書館」だったから来なかった。そうではない図書館の姿を提示し、こんな図書館に来てみませんか、利用しませんかとアピールし続ける。

    本当にやらなけrばならないのは、さまざまな専門を持つ館外の人々、すなわち地域住民とのネットワークをつくり上げることだ。

    P79内野さんは、図書館は良書のセーフティネットでなければならないという。
    全国に約三千ある公共図書館がそのような心構えを維持していれば、出版社は、自らが良書と信じる本を出版することができる、そういう仕組みをつくらなければならない。

    P118阿刀田館長は「本を贈ろう」という運動をを提唱している。本は存在そのものが人間に似ている。私たちに働きかけてくれるものがある。最初から読み進み、少しずつ理解し、思案を深め、最後に全体を知る。人間とつきあい、理解を深めるのに似ている。つかのまのつきあいではなく、長い知り合い、好意を持つためにも本を手もとに置こう。本を贈ろう。ゆとりがあれば本を買おうとの一文が揚げられている。

    情熱は伝播する

  • 本の寺子屋が地方を創る 東洋出版

    信州しおじり本の寺子屋研究会が
    著したという回りくどい本である
    本の寺子屋という意味不明さと
    江戸期の寺子屋に
    強く関心を寄せていることもあって
    読み出してみると
    ボンヤリとした期待とは違う内容であった

    書き出しは
    ベテランの編集者の愚痴から始まった
    売れるものが良い本なのか?
    売れる本を書かせるのが編集者の腕なのか?
    読ませる相手を意識できなければ
    書けないという自分を見失っている詩人とか
    いずれにしても本末転倒だろう
    何かを描くのは相手の為ではなく
    自分の内から溢れる思いを吐き出すためで
    その行為が形となり外に見えることで
    刺激になって更なる思いが湧き出してくる循環
    日々冒険の人生そのままの表現でしかないし
    できたものはウンコという過去の産物で
    そのウンコは次の出合いを起こす素材でもある
    つまり読み手を意識した表現など
    今を飛びこして排泄されることもなく
    最初から溶けた死に体の筈だ
    商品ありきの資本主義が描く
    酒無くして語れない虚構世界を舞台にした
    酔いどれたい者による洗脳物語なのだろう

    表現とは生きるその事であり
    前向きに集うことの摩擦から学び
    独り相撲の冒険によって成長し
    その後ろ姿で集うことなのだ
    この本はその事を反面教師として
    教えてくれるだろう

    確かに知識という虚栄心を
    くすぐる企てではあるが
    あらゆるとことで試みていることだ
    寺子屋と名付けながら
    たまたまベテラン編集者という
    著名な世界とつながりを持つが故の
    社会的成功例であるのだけれど
    寺子屋を企画のタイトルに選んだ
    主人公の思いとは裏腹の結果ではないのか?
    まあ
    いずれにしても学べる面白い内容である

  • この本は、私が、いつも行く図書館で、読書週間の時期に紙袋に、本を入れて、開けてからのお楽しみと、称して、「本の福袋」なる物を図書館の人達が、作成してくれている。

    その本のヒントは、紙袋の表に、「図書館で働くひとたち。実は結構頑張っています。」と、、、表されていました。

    この題名で、手にした本の中身が、この本です。
    図書館にあっても、手にしなかった可能性の方が大きいかもしれません。
    著者・出版社・取次店・図書館が、一体となって、出版文化の発展に寄与している。
    塩尻市立図書館の取り組みも素晴らしいけど、我が図書館も、いろんな工夫をしている。

    今回は、季節に合わせて、美術に関する本の特集を見やすい場所に何冊も展示して、興味を深めている。

    読書会も月に1度開催。

    今は、スマホなどで、電子書籍などもあるが、スマホもゲームをしている人が、多い。
    1ヵ月の間に、本を全然読まない人も多いらしい。

    本からの知識は、凄く役立つことも多く、又、自分の知らなかった事柄が、発見できたりする。

    図書館の素晴らしさをアピールするために、図書館員は、凄く努力していると、思う。
    私は、図書館大好き、そして本が、大好きである。
    そして、気に入った本は、書店で、購入して、身近に何度も読めるようにしている。

    この本のように、講演会、ワークショップ、対談などの企画で、地方の活性化が、出来れば、図書館の役目というのは、凄いと思う。

  • 最初のほう主語が分からないところがあって読みづらいなと思ったが、すぐに引き込まれて気にならなくなる。

  • 図書館は無料の貸本屋では無い!

    「信州しおじり 本の寺子屋」は
    本の書き手、つくり手、送り手と読み手を直接結び付ける仕掛けを作る図書館。
    売れる本が良い本、という時代に逆らい、伝えたい想いを持つ書き手に定期的に図書館に来てもらい地域住民と触れ合ってもらう。
    そしてそうした図書館には人が集い、町が栄える取り組みである。

    隣人とのつながりが希薄になりつつある地域社会に生きる住民が再び地域とのつながりを取り戻し、
    新たな交流を始める際の基盤としての役割を持つのが現代の図書館だ。

    図書館に「静粛!」と書かれたのは今は昔。
    中心市街地活性化策の1つとして図書館に「にぎわい」を求める時代だ。


    この「信州しおじり 本の寺子屋」が手本としたのがなんと鳥取県米子市の「本の学校」。
    昔からよく聞いていた名前だ!!
    私の母親の親友がこの今井書店の社長?の秘書をしていたらしく昔からよく学校のことは聞いていた。
    もしかしたら私の図書館好き、本好きはここから来ているのかもしれない。

    運命を感じた一瞬でした。


    最後に心に残った一言「読むということは出会うということ」。

全7件中 1 - 7件を表示

「信州しおじり本の寺子屋」研究会の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×