山・動く: 湾岸戦争に学ぶ経営戦略

著者 :
  • 同文書院インターナショナル
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  • Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784810380033

作品紹介・あらすじ

ハーバード・ビジネススクールは湾岸戦争に何を見たのか。55万余の将兵と700万トンの物資をアラブの砂漠に配備した史上最大のロジスティクス・システム。その全貌を作戦司令官パゴニス中将自らがドキュメンタリータッチで詳細に語る。

感想・レビュー・書評

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  • 2022.12.21 品川読書会で紹介を受ける。湾岸戦争。

  • 湾岸戦争におけるロジスティクス責任司令官による回顧録。最初の30日間で移動したコンテナを並べるとそれだけで300キロを超すという。これに加えて数十万の兵士、無数の戦車や航空機、それを運ぶトラックなどが熱砂のサウジアラビアの小さな港に押し寄せた。それを「仕切る」のがどれほどの困難を伴うか、何にせよ仕事をしたことのなる人なら想像がつくだろう。実際、まずは道路を作り標識を立てるところから始めなければならないのだ。興味深いのは「持ち込むより持ち帰る方が難しい」こと。梱包された新品はバラバラになっており、米国の検疫を通すには持ち込んだ車両を解体・洗浄しておかなければならない。過去の戦争と異なり、兵器を戦場に放置しなかったことを著者は誇りをもって回想している。

    当然ながらそこにはビジネスへの様々な示唆がある。結局はシンプルで情報共有の徹底、手続きの簡略化、権限の委譲と集中。そして不測の可能性に「あらかじめ備える」こと。

    安保法案の国会論戦で野党が「日本を海外で戦争できる国にするつもりだ」と主張したときに、参考人招致されたアナリストの小川和久氏が「そんなことは不可能。日本には軍事力の投射能力がない。もっと勉強してほしい」と力説していたことを思い出す。投射(projection)、つまりは現地に運ぶ能力。

    パゴニス氏は「温かい食べ物が士気に与える影響」を決定的に重視し、戦闘部隊の到着より前に最前線に補給基地を設置することを使命とした。「戦争は撃ち合いが始まる前に、需品係の戦いで決着がつく」とはロンメル元帥の発言だそうだ。当時から十分わかっていた兵站の重要性を、日本軍はあれほどまでに軽視し多くの兵士を死に至らしめてしまった・・・。

  • 表舞台には出てこない支援部隊。その規模の巨大さに負けないリーダーシップのありようとは。

  • 一般人にはイメージできない規模がすごかった。数十万にんもの部隊を移動させ、彼らの武器・弾薬・食料・戦車をどのように輸送していくのか、普段見られない世界が楽しかった。兵站というものがいかに重要かがわかる本です。

  • 1992年に発行された、そのサブタイトルにもあるとおり「湾岸戦争に学ぶ経営戦略」の本。湾岸戦争時に55万余の将兵と700万トンの物資、約13万両の戦闘車両を28カ国の多国籍軍と共同作戦で、地球の裏側であるアラブの砂漠に配備する世界史最大規模のロジスティックス・システムを構築したパゴニス将軍の著。 

    単純にいわゆる戦記ものではなく、後半の7章8章には、「リーダーシップに必要なものは何か」「リーダーシップとロジスティクスに何を学ぶか」が記載されている経営学の本。『物を動かすには人を動かさねばならない』という言葉も。

    深く具体的な実務・実践経験から経営学までにつながる抽象化へと昇華されており、重厚で含蓄深い本。

  • 私は無線の故障を装った.誤った命令をうけたときに、伝統を誇る軍隊で使われている昔ながらの手だ。
    J4 1 人事 2 情報 3 作戦 4 後方支援 5 受け入れ国との連絡と海外派遣士官 6 通信指揮統制 7 窩以外軍事販売と海外事情
    月曜の朝にすべきクオータバックの仕事を土曜の午後にしてほしい。先を読んで頭を使え
    MWR 士気 福祉 休養
    敵を知り己を知れば百選危うからず
    敵を知らずして己を知れば、一勝一敗す
    敵を知らず己をしらざれば、戦うごとに必ずあやうし

    聖書 金言第24章第18編 展望のない国では国民は滅びる

    変化をとりいれるときには、損失を埋め合わせることによって現職のものを守らなければならない

    ドラッガー
    有能なリーダは、ほかの誰でもない自分が最終的な責任を負っていることを知っているから、同僚と部下の能力を恐れないものだ。誤ったリーダは常に有能な人材の一掃を図る。有能なリーダは有能な仲間を求め、引き立て、押し上げ、それを心から喜ぶ、また、同僚と部下の過ちも最終的には自分で責任をとるのだから、同僚と部下の成功も脅威ではなく、自分の成功としてとらえるのである

    老子
    最善の指導者とは、人々はその存在を意識しない時。人々が服従したり喝采すればたいした指導者ではない。忌み嫌われた指導者はさらに悪い。良い指導者とは多くを語らない者。その任務を終え、目的を達したたならば、部下は言うだろう。それは我々自身がやったのだと

    アンドルーカーネギーの墓標
    自ら、もっと賢きものを近づける術を知りたるもの、ここに眠る

  • 著者は湾岸戦争時のアメリカ陸軍中将で、「砂漠の嵐」作戦に必要な膨大な物資(兵器、兵員、機材、資材、糧秣、燃料等)を運んだ兵站担当者である。シュワルツコフ将軍との掛合も面白いが、戦争では如何に兵站(ロジスティクス)が重要か、改めて認識させられる。運んだ物量が山の如くあったので、「Moving Mountains」と言うタイトルになっている。旧日本軍の兵站がずたずたで物量に乏しく多くの餓死者、病死者を出し十分に戦えなかった事を思い起こすとアメリカ軍は人材も含めて羨ましい限りである。

  • 物書きを生業にしていない人の書いた文章は読みづらい。軍人だから無駄のない文章なんだろうけど、それが帰って物語を味気なくしたり、またプチ自慢が透けて見えて読んでてしんどいところが多々あった。
    内容はまずまず。軍事物資の量や、流動性が激しくかつ、まさに沢山の人の命がかかった仕事なだけにその量、金額の規模がけた違い。戦争には金がかかるはずだ。そしてイノベーションが戦争から生まれてくるというのも良く分かる。細かいところだけど、中将、大将、中尉などの階級や呼称がなんとなく整理できた。

  • 千葉市図書館

  • 湾岸戦争の兵站を支えた人のお話。

    戦争でまったく目立たない後方支援が詳しく書かれていてたまらない。
    すさまじい兵員や物資を、短時日のうちに地球の反対側に運ぶ。しかも先方にはまったく受け入れ態勢が整ってないとか狂気の沙汰。
    今日決まっている事が明日になったら変わることだってある。確実な事は何もない。
    そんな状況でも無事に遂行できたのは、あらゆる可能性を考慮して手を打ってたからなんだと。恐れ入りました。

    経営戦略とかは、まあどうでもいいや。

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