知らないではすまされない地政学が予測する日本の未来 (SB新書)
- SBクリエイティブ (2021年1月6日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784815608828
作品紹介・あらすじ
コロナ禍、中国の台頭、米大統領選……
激動する世界において必要な戦略的視点とは!?
世界が中国を排除する地球規模の大激震と米中冷戦。ポスト・コロナの新たな世界において日本の歴史と国民性を基盤とした「日本独自の戦略」とはなにか。地政学的思考方法を基礎として提言する。
感想・レビュー・書評
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2021年に出されたものであるも、まだまだ学ぶべきものがある本であった。
そもそも日本は勿論自由で法の下による民主主義国家であるのだか、どこか国家戦略的な話しとなると、何処かアメリカ追従で、独自路線が出せていないところが未だ感じられる。
変動のそう起こらない地理的要因から、政治外交を分析していくという地政学という研究は今日によく聴かれることになるが、果たして日本の政治家は日本の重要な位置を理解して、長期的視点に立ち、本来の国益を理解しているのであろうか。
本書にとっては安倍元首相が理解していたところが垣間見えるが、それよりこれからもランドパワーとして海洋進出してくる中国や、ウクライナ侵攻を続けるロシアは、明らかに自身の立ち位置をある意味よく理解していよう。
また北極の氷が溶けることから、そこに産まれる新たな北極海における新たな地政学的地殻変動も予想しており、日本は果たしてその重要性を認識して、主導権を取れるのであろうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
地政学初学には分かりやすい
著者の主観はありそう -
地政学の見地に基づいて、日本の国際的な立ち位置について述べられていた。国家にはシーパワーとランドパワーがあり、日本はシーパワー、対してランドパワーとして中国やロシアがあり、ランドパワーの膨張とシーパワーの自由貿易の権益がぶつかっていること、日本としてはアメリカ、オーストラリア、インド、東南アジアなどシーパワー国家と連携してランドパワーを封じ込めていく必要があることなどが書かれていた。国際情勢が整理できて良かった。
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何の予測にもなってないし、地政学って学問と言えるのか?
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●膨張する大陸国家と、それを阻止しようとする海洋国家という対立構図が地政学の基本だが、中国が台湾や尖閣諸島を欲しがる理由には明確な説明がない。
●古代から中国と戦ってきた朝鮮は、日本からすれば防衛の最前線。今も重要な存在。
●日米印豪
●EU離脱後のイギリスがTPP加入に意欲。FOIPをプラットフォームにして安全保障と経済安保へと。 -
現実を的確に説明されている。定期的に情報をアップデートされたい。
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p87 中国側は常々日本の首相のカウンターパートは国務院総理(中国の首相)であるとの認識を示しており、自国の国家主席は日本の首相よりも格上の国家元首だと位置づけている
p125 韓国の実効支配化にあるイオド(離於島) -
冷戦構造が終焉して30年がたった今、ポスト冷戦期のグローバル化した世界を支えたアメリカによる平和(パックス・アメリカーナ)と自由主義経済秩序が揺らぎ、中国の台頭を始めとする混乱。アジアで力の空白が懸念される中で、これから数十年後のアジアで日本の生き残りの可能性を探ることが本書の目的、と冒頭で著者は述べている。
現在の日本周辺の状況をかなり詳しく紹介しながら、日本の外交・防衛政策の今後の方向性を示しています。日本の政治のことでありながら、知らない情報も多く、地政学の基礎知識とともに、かなり詳細、具体的な内容であり、非常に本格的です。
地政学というものに最近興味が出てきたのですが、歴史や地理などを学ぶ理由は、それを活かして将来に備えるためだと思います。今後とも引き続き学んでいきたい内容であると感じます。
▼「地政学」という言葉は地理学と政治学を合わせた造語で、その内容は地理と政治の知識を駆使して、過去における人類の壮大な歴史の動態を分析・研究して論ずるもの
▼人間集団が生き残る基本原則・侵略とそれに対する防衛・環境に自分自身を会わせて変化していく能力
▼さまざまな要因を繋げて出来上がるストーリーを、地理学では「景観」と呼ぶ。地図などで地表の形態を分析し、その構造や変化を読み取っていく。国土の性格を表す。「景観」とは当然のことながら、その地に住む人間生態を読み解く基本となるものである。「立地」と「景観」の地理学的概念は、地政学を知るための根幹ともいうべき要素
▼日本の立ち位置
・海洋を通じて世界と繋がり、海洋貿易が日本を支える大きな要素であり、豊富な魚介類がとれる実に豊かな海に囲まれている。・日本近海の海底にはメタンハイドレードやレアアース、天然ガス、石油までもが存在。海の資源に恵まれた海洋国家であることは地図を見れば実感できる・このような条件から地政学的に言えば、当然、シーパワー国家と位置付けられるが、逆に見れば島国国家の日本人は狭い国土の中で暮らすしかなく、大陸の住民のように徒歩で異郷に移れるわけではない。逃げ場がなく、争えば互いに滅びるしかない。そのような諦観が日本文化の基礎をなしている
・伝統的に日本人は、外からの文化を直接受け入れる寛容さがなく、視野狭窄な部分もある。
・悪く言えば島国根性と表現されているが、基本的には「和」を尊び大陸国家に比較すれば、争いごとを好まない気質があることは歴史が証明している。
▼日本はあくまでも海洋国家らしく大陸には直接関与することなしに、オフショア・バランシングに勤しみ、その一環としてリムランドである朝鮮半島をバックアップすることで、大陸からの膨張圧力を殺いでヒンターランドの役割に徹底していくことが、今後の戦略の在り方であろう。
▼日本の戦略的思考の根幹をなすのは、地政学に基づいた基本的な歴史の流れを明確に把握して対話を成立させ、案件を解決していくための選択肢をできるだけ広げ、戦略的な対話の方法を考えるということに尽きるだろう。
<目次>
はじめに
第1章 マクロな視点でコロナ後の世界の動向を分析する地政学の基本
第2章 中国経済に依存した悲劇
第3章 地政学から見た朝鮮半島ー日本の戦略的視点とは
第4章 海から見た日本の生き残り戦略
第5章 新段階に入った日本ー地政学的立ち位置とクアッドの舞台 -
地政学は私が学生時代にはなかった学問だ。
これからの時代、この知識は日本国民必修とすべきだと思う。
ますます複雑化する社会の中で、日本が取るべき最善策は何か?
たとえ今この瞬間が最善の選択としても、明日には周囲の状況が変化して、作戦変更を余儀なくされてしまうかもしれない。
今はあらゆることにおいて、そういう変化の時代なのだと思う。
社会が分断されていたときは、そこまで考える必要がなかったのだ。
分断された小さな範囲の中だけで物事を考えればよく、単純な構造の中では答えが「A or B」で済んだのかもしれない。
しかし今は分断がない。あらゆることがつながっていて、相対的に考えるしか方法がないのだ。
これは国家間もそうであるし、我々個人レベルの人間関係ですらそういう状況だと言える。
だからこそ、情報収集能力や分析力、判断力などの様々なスキルが必要となるのだ。
これらのスキルを総合的に高めることは本当に難しい。
全てを均等に高いレベルで持つことなんて無理に等しい。
国家レベルのことであれば、それぞれの専門家を集め、意見を聞けばいいのかもしれない。
しかし専門家は自分の専門の中で主張をする訳だから、勝手な意見を言うだろう。
結局リーダーはそれら意見の中から何かを選ばなくてはいけないために、強い判断力と合わせて、結果的に総合的スキルが必要になってしまう訳だ。
最早これらのスキルなくして、地政学の知識がなくして、複雑な外交判断が出来る訳がない。
これは会社でも同じ事ではないだろうか。
今中国や韓国とビジネスする上で、政治の動向を無視することは不可能だ。
そして国内産業が縮小していく上では、グローバル化は必須なことと言える。
海外展開を図るのであれば、経営こそ地政学を学ぶ必要があるのだ。
本書は非常に説得力ある展開で論理展開していく。
今日本国が取るべき道は、大きな流れでいえば、海洋国家(シーパワー)であることを自覚し、アメリカは当然であるが、英国と連携を強めるべきだ。
そして、資源を輸入に頼らざるを得ない日本という国は、インド太平洋のシーラインを安定して確保することが死活問題である。
これを中国に独占させ、不安定化させてはいけない。
そのためにはインドと手を組むことが最善であるというのも納得性がある。
そもそも親日である。中国と対立している。元英国領である。(ここで英国連携も生きてくる)。さらにインドはこれから人口世界一となり経済大国になっていく。
アメリカとの連携は今まで以上に必要性が高まっているが、大統領方針次第で振り回されてしまうリスクを想定して、大統領管轄外で様々なコミットメントをしたたかに取っていく。
中国・北朝鮮・韓国の動向は常にウォッチして、こちらから仕掛けるではなく、着々と冷静に対応を準備しておく。
ロシアは資源国家であるが、産業が育たないという面で経済発展が大きく遅れている。
日本の技術力や事業提携を欲してるので、相手の出方次第で、上手にそれらに対処していく。
本当に説得力がある意見だ、実に面白い。
こうして見ていくと、約80年前の太平洋戦争がなぜ起こったのか。
日本は何を死守しようとして戦争を仕掛けたのかが見えてくる。
戦争とは陸地の奪い合いだけではないのだ。
海をどうやって制していくのか。
言い換えれば、海路をどうやって安定的に確保していくのかが大事なのだ。
地政学を学ぶことで、歴史の見え方すらも理解が深まっていく。
やはり本学問こそ、国民必修とすべきと思う。
本書を読了して、心からそう感じた。
(2021/1/31)