東京オリンピックの社会経済史

制作 : 老川 慶喜 
  • 日本経済評論社
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本棚登録 : 27
感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784818820609

作品紹介・あらすじ

東京五輪は、高度経済成長期の日本社会とどのように共鳴しあっていたか。都市開発、万博・ロンドン五輪との比較、消費、娯楽、流通など多彩な視点から検討する。

感想・レビュー・書評

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  • 社会
    歴史

  • 1964年の東京オリンピックと当時の社会についてまとまった読み物を探していて、日経新聞の連載ならちょうどいいかもと読み始めたが、内容が固くて論文みたいで一般的な読み物とは言えないテイスト。おかしいと思ったら出版社名がそもそも勘違いだった…。でもまぁ知りたい事は書いてありそうだし、いつかはこういうのも読む事になるだろうしと頑張って読みました。
    第1章「東京オリンピックと日本万国博覧会」。64年の東京五輪、70年の大阪万博は国家的イベントの最高峰としてのレジェンド感レガシー感がすごいが、最初からそうだったわけではなく、いつものように「準備期間での国民の関心はきわめて低調だった」とのこと。直前に「一気に好意的なムードが急上昇」し、最終的に90パーセントの人々が大満足したものとなった。仕掛け人はやはりマスメディア。『マスコミは「批判者でも傍観者でもなく、むしろ主催者」、この二つのイベント自体、メディアの作った「事件」であった』。そして国民全体を巻き込むために利用された概念が「お祭り」であり、マスコミが大量に流した「テーマソング」が国民の関心が急速に高まった時期とリンクしてるというのはなんだいつものパターンと全然変わってないなと軽く衝撃を受けた。
    今度の2020東京五輪では、64年大会が遺したような社会的なレガシーを、とうるさく言われているのだが、64年のレガシーも計画して遺されたわけではなく、必要に迫られて産み出された物事という気がするし、綺麗事を言っても所詮はオリンピックは一過性のお祭に過ぎないんだなというのは肝に命じておいたほうがいいようだ。マスコミが凋落し、みんなが知ってるテーマソングみたいなものがない現代では64年と同じ手法は使えないが、瞬間湯沸かし器みたいな日本人の特性は変わらない気もするので、多分他のやり方で煽り立てるのだろう。
    第2章「東京オリンピックと渋谷、東京」。首都圏、東京、渋谷区の道路の拡張と下水の整備を中心にまとめた章。こういうの読みたかった!人や車で膨張しきった東京。いずれやらなくてはならない都市改造を、オリンピックをダシにして進めるしたたかさ。道路網整備の理由づけのために選手村を遠くて不便でも朝霞キャンプドレイクとして都や組織委がゴリ押ししようとしたところ、代々木ワシントンハイツ返還という思惑の渋谷区が熱心に招致運動を行い、最終的に米国の思わぬ方針によって代々木になった話(でも道路は作る計画は変更せず)。
    騒音とゴミと悪臭対策に下水や河川浄化も行われると同時に、住民の努力、意識向上も必要とあって「蚊とハエをなくす運動」の推進、首都美化デーの設定、スローガンなどいろんな団体がいろんな活動をした。オリンピック期間中はし尿汲取りを避けたり、ごみ収集の時間を早朝にしたりと渋谷区の努力が涙ぐましい。
    4章のアマチュアリズムの最高到達点のような1908年、1948年の2つのロンドン五輪の話も興味深い。
    第2部以降はテーマはいずれもへえと思って読んだが、確かに東京オリンピックの時期の社会の話ではあるけど少し広げすぎ遠すぎな気がした。向ヶ丘遊園の話とか面白かったですけどね。

  • 展示期間終了後の配架場所は、開架図書(3階) 請求記号 210.76//O32

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