- Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
- / ISBN・EAN: 9784822247416
作品紹介・あらすじ
技術進歩が人口増で帳消しになる「マルサスの罠」の停滞時代がなぜ長く続いたのか?スミス『国富論』、マルクス『資本論』に連なる、人類の何万年もの歩みを描く"ビッグ・ヒストリー"の試み。
感想・レビュー・書評
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上巻では、マルサスの罠という、以下のような原理を説明している。
・各社会の出生率は、物質的生活水準が上昇すれば増大する。
・各社会の死亡率は、物質的生活水準の上昇にともなって減少する。
・人口の増加にともない、物質的生活水準は下落する。
ゆえに、以下のことが言える。
・死亡率曲線を上昇させる要因、たとえば戦争、病気の流行、衛生状態の悪化などは物質的生活水準の上昇をもたらした。
・死亡率曲線を低下させる要因、たとえば医療の進歩、公衆衛生の改善、平和と治安の確保などは物質的生活水準の低下につながった。
人類が産業革命以降、どのようにしてこのマルサスの罠から抜け出ることができたかについては、下巻まで読まないといけないだろう。上巻だけだと、著者の言いたいことは理解できるが消化不良。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
CGa
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一般的な人々が抱いている経済や文明社会の歴史についての理解に一石を投じたいとの意図が作者にはあったかもしれない。 経済学に全く携わってこなかった者としてはマルサス的経済の考え方や、産業革命に至る原因の推定などの考察は面白い内容だと思った。
データや統計から読み取る内容は、経験的な勘による認識と背反するケースが多いと感じさせる内容もある。
中世〜前近代社会は意外にも社会階層の流動性が高かったのは事実だとしても、淘汰圧によって「生物的に」人々の性質が変化したという主張は、脳科学の分野では否定されている研究もあり、今後この点についての結論が出るかもしれない。 -
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なかなかそそられる本だ。
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概要: 産業革命までずっと人口の変動はマルサスの罠に支配されていた; 産業革命は優秀な社会の上位層が(長男以外が家業を継げないために)中位・下位の職につくことによって起こった
感想: 人口の推移がマルサスの罠を脱したのは、乳幼児死亡率の低下が主な原因だと思う。たくさん子供が亡くなるから産めるだけ産まないと、という意識から2人産めばだいたい生き残るだろうという、という意識に変わってきているのでは。 -
タイトルから見て人類の経済史10万年がかなり細かく知れるのかと思い読んでみたが、この本の主旨では人類の経済は1800年までの9万9千8百年間はすべて「マルサス経済」であり、その後の200年間は「産業革命以降の経済」というザクッと2種類しかないということである。そしてこの上巻ではその9万9千8百年間分の経済史であるマルサス経済の詳細について、歴史的なデータが充実しているイギリスや中国、日本、ローマ、エジプトなどの地域を比較しながら莫大な論考に基づいて分析を行っている。
とどのつまり、マルサス的経済とは、経済活動の生産性なり付加価値が増して富が庶民にもたらされても、それが庶民の生活水準の向上にはつながらず、人口増に反映されてやがてその増した富も人口増によって平準化され、次の富の向上のタイミングまで逓減していく経済システム(法則?)ということらしい。これが人類が経済なるものを生きていくうえでのシステムとして組み込んで以降つい最近まで起きていたことで、これが産業革命によって、人口増と富の向上(庶民の所得水準の向上)とが同時に訪れるという次元が根本的に変化することになる。この産業革命はなぜにして起こり、どうしてマルサス的経済に陥らず、人類の経済が飛翔したのかについては、下巻で大いに論じられることになるらしい。 -
タイトル詐欺で、実際には産業革命からのイギリス経済史といった感じか。
ピケティ本と合わせて読みたい。 -
人口減る→食糧余る→生活水準上がる→出生率上がる→人口増える→食糧足りなくなる→死亡率上がる→人口減る (以下ループ)
産業革命までの人類はずっとこのループから抜け出せなかった。これがマルサスの罠。
過去の記録を調べてみると、戦争や飢餓や伝染病が発生しても一時的に人口が減るだけですぐ元に戻ってるっぽい。むしろ物資が余ることで暮らしは良くなってただろうという皮肉な話。
中世の頃に書かれた遺書の記録から、
「金持ちほど子や孫が多い」
「能力の無い貧乏人は生物として淘汰されてきた」
と結論づけている。そりゃそうなんだろうけど、なかなか辛い現実。