資本論 経済学批判 第1巻4 (日経BPクラシックス)

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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822248819

感想・レビュー・書評

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  • 資本主義は、資本を蓄積することにより成功を収めるが、資本の蓄積は労働者の搾取によって生じていると批判している。資本家は資本を増大させることを目的とし事業を行っているという分析は的確であると思う。産業革命後のイギリス労働者が、いかに悲惨な生活を強いられていたかを理解した。また、これは江戸から明治期に来日した欧米人の数多くの手記の内容とも一致する。
    ソビエト崩壊後のマルクスの評判は悪いが、資本主義について的確に理解しその重要性をわかった上で批判を展開しており、決して浅はかな論理ではないことが理解できた。
    「生産過程をたんに継続するだけで単純再生産を行っているならば、遅かれ早かれ一定の期間の後には、すべての資本は必然的に蓄積した資本に変容する。貨幣形態をとるかどうかは別として、他者の不払労働を体現したものに変容するのである」p24
    「価値の増殖を狂信的なまでに熱愛する資本家は、人類を生産のための生産へと容赦なく駆り立て、社会的な生産力を強制的に発展させ、物質的な生産条件を強制的に創出させる。こうした物質的な生産条件のみが、あらゆる個人の自由で完全な発展を根本原理とする高度な社会形態の現実的な土台となり得るのである」p78
    「競争のために資本家は、自分の資本を確保するためには、資本をたえず増強せざるをえなくなる。そして資本を増強するには、資本を累積的に蓄積するしかないのである」p79
    「蓄積のための蓄積、生産のための生産。この公式によって古典派経済学は、ブルジョア時代の歴史的な使命を表明したのである」p83
    「奴隷が許されない自由な国民における最も確実な富は、労働する多数の貧民が存在するということである」p138
    「マンチェスターの保健衛生官のリー医師が確認したところでは、この都市の有産階級の平均寿命は38歳であるが、労働者階級の平均寿命は17歳にすぎない。リバプールでは前者が35歳、後者が15歳である。特権的な階級の寿命は、恵まれない同胞市民たちの二倍以上になる」p203
    「(ランカシャーの状況)栄養失調が病気を引き起こし、さらに悪化させている事例が無数にある。このことは貧民の医療に詳しい人であれば、誰もが認めることだろう。忘れてならないのは、食物の欠乏に耐えるのは極めてつらいことであるため、ふつうは食物の大幅な不足は、それに先立つさまざまな欠乏の後に初めて現れるということである。栄養失調が衛生面で大きな問題となるはるか以前に、その家庭からあらゆる物質的な快適さが失われていることだろう。衣類や燃料は、食物が不足するよりも前から、さらに不足していただろう。居住空間は切り詰められ、病気の発生や悪化の原因となっているだろう。清潔さを保つのは贅沢なこと、あるいは困難なことになっているだろう。それは衛生警察がもっとも成果を上げていない地区であり、もっとも水捌けが悪く、交通が不便で、汚物が溢れ、給水がもっとも困難か、もっとも行われていない地区だろう。都市においてはもっとも日照が少なく、通気が不足した地区だろう。貧困が食糧不足にまで至ると、こうした衛生上の危険にさらされるようになるのは避けられない。このように貧困が、怠惰によって生まれた自業自得なものではないことを考えると、はなはだ胸が痛む。実際のところ都市労働者たちは、わずかな食べ物を手に入れるために、限度を超えるまで働かされる(サイモン医師)」p234

  • 理解できたとは到底言えないけれど遂に資本論第1巻を読み終わった。
    理論だけではなく、時流のジャーナリスティックな記載も満載。
    マルクスに学ぶならば、資本論を金科玉条とするのではなく、弱者の声に耳を傾け自分で理論を構築する必要があるのではないか。なぜみんなマルクス、マルクスと言って現実を見ない?

  • 【1〜4のまとめ】
    意外にも、共産主義のことは書かれていません。
    資本主義の問題点の指摘は当たっていると思いますが、じゃあどうすればいいかは書いていません。

    1.この本を一言で表すと
    ・資本主義の問題点を見直す本

    2.よかった点
    ・資本家は労働者から搾取している
     →ブラック企業と言われている所では、そういう視点で見てみるのはいいかもしれない。

    ・植民理論
     →ヨーロッパ諸国が植民地から搾取して栄えたのは指摘通り

    2.参考にならなかった所(つっこみ所)
    ・資本家は労働者から搾取しているという考えではなく、労働者全員が資本家になるという考え方が必要ではないか?
    また、資本家が儲けているのではなく、会社が儲けているという考えはないか?

    ・価格が労働時間によって決まるという考えは納得できない。農作物でも天候によって価格が変わるのでは?

    ・機械の導入により、貧しい者が増える、という論調は賛同できない。現代の発展を全否定することにならないか?

    3.みんなで議論したいこと
    ・資本論は現代にどのように活かすか?

    4.全体の感想・その他
    ・資本主義の欠点を指摘している点は理解できる所もある。だから共産主義が素晴らしい!という主張になるかと予想していたが、共産主義については一切書かれていなかった。
    むしろ、指摘だけして、じゃあどうすればいいのかという事は何ら書かれていなかった。
    その点は予想外だった。
    (本書対象外の第二部以降に記載があるかもしれないが。)

    ・マルクスの見た産業革命直後の資本主義社会と、現代の資本主義社会はずいぶん異なっているはず。なので、マルクスの主張のなかでも現代で通用しない部分はかなりある。

    ・労働者は、資本家を批判するだけでなく、資本論のような視点と搾取されるという知識を身につけ、その上で企業から搾取されないように、自らの能力を高め、機械にはできない付加価値を産むように考えるべき。

    ・これから共産主義が広がるとは思えない。ただ、これから資本主義が継続されるにしても、絶えず変化であり、マルクス的視点で絶えずチェックする必要。

    ・理論的な内容だけでなく、産業革命直後当時の劣悪な労働環境のレポートとしての価値もある。

    【4固有の内容】
    資本の蓄積過程、資本家はどのようにしてうまれたか。
    現代の植民理論。

  • 今年の目標の一つであった、資本論の読破
    本巻読了をもって無事達成

    感想としては
    「共産主義」運動の枢軸というイメージを読む前までは持っていたが、思ってた程の共産主義への煽動を感じなかった。
    また、冷静な分析、緻密な論理、シニカルな表現など思っていたより読みやすく、かつ楽しんで読むことができた。

    何より、資本主義が当然と思っている(当然すぎて資本主義が当然とすら逆に考えてもいない)現代(一部国家を除く)の人々が本書を読むことにより、今一度この世の中を見直すきっかけになるのではないかと思った。
    もちろん資本主義の否定=共産主義の礼賛となってはいけないと思うが。

    本書もそうだが、古典?を読むことにより、現在当たり前だと思われている、あるいは意識すらされていないようなことが実は100年程前には異端あるいは存在すらしなかったことに気付くことが多々あると思う。

    現在をよりよくするために、歴史から学ぶとは、過去を参考にするだけでなく、現在からの視点と少し距離をおき、今一度現在を見直すこと。これが歴史から学ぶことのメリットの一つなのだと実感した。

    とはいえ、サラリーマンが通勤中の社内で資本論を読んでいる姿を見たマルクスは嘆息するに違いないが・・・

  • いよいよ第1巻の翻訳の最終巻だ。第2巻もでるのかな?全巻新訳になったらすばらしい。

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著者プロフィール

カール・マルクス(Karl Marx):1818-83年。ドイツの経済学者・哲学者・革命家。科学的社会主義の創始者。ヘーゲル左派として出発し、エンゲルスとともにドイツ古典哲学を批判的に摂取して弁証法的唯物論、史的唯物論の理論に到達。これを基礎に、イギリス古典経済学およびフランス社会主義の科学的、革命的伝統を継承して科学的社会主義を完成した。また、共産主義者同盟に参加、のち第一インターナショナルを創立した。著書に『資本論』『哲学の貧困』『共産党宣言』など。


「2024年 『資本論 第一巻 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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