TRUST 世界最先端の企業はいかに〈信頼〉を攻略したか

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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822255565

感想・レビュー・書評

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  • ダークサイドのディラーが顧客の信頼を損ねないために、品質や配達やサービスにはるかに気を使う。には驚きました。良く考えてみると、犯罪者であれ普通のビジネスであれ継続的に果実を得て成功するにはやはり顧客からの信頼を得ないと成り立たないことがわかります。こうした信頼の過程を本書では1つ目ローカルの信頼とし身近なコミニュティー内での顔見知り2つ目制度への信頼として学校、役所、メディアの報道など3つ目 は、分散された信頼として今のネット社会であると位置づけています。以前の信頼は下から上に流れていて、より高い権威に人々が信頼の礎をおいていましたが、ネット社会では横に向かって水平の信頼に移行して、昔ほどマスコミや政府や権威的なものの信頼度が減ってきている。ただ、行きすぎると中国が義務化しようとしている個人の信用格付けシステムなど一部の権力がそれを利用する危険性もあることなど様々な視点から今後の信用について考えさせられる良書です。

  • 日頃自分は一体誰(何)を信頼しているか、省みても良いかもしれない。近代において我々の信頼の対象は主に制度だったり(その範疇である)大企業だったりしたが、インターネット以来、それは個人へと分散化したと本書は説明する。確かにそれはネット取引やSNSを利用する自分を見れば納得で、制度や大企業への(頻繁に明らかにされる不正に対する)不信への帰結かとも思う。興味深かったのはダークネット上でも、アマゾンのレビューシステム等顔負けの手法で「健全」に違法取引がなされているという事例。闇市場における信頼の重要性などは、人が信頼無しには生きていけない事実を、図らずも如実に示している好例に感じた。ただ近年は、個人間を繋げるシステム(サービス)がひとつの大企業に集約されたり、中国の信用スコア制の様に国家統制が始まりつつあるなど、信頼の行方は不確実性を伴ってもいる状況。本書ではピアツーピアのブロックチェーンが新たな信頼の世界を現出する画期になると結んでいる。示唆に富んだ内容だったが、面白く的確な挿話を沢山紹介し、読み飽きなかった。

  • ・ローカルな信頼→制度への信頼→分散された信頼
    ・テクノロジーを通じて人を信頼する。レーティング、前払い、プラットフォームへの信頼とホストとゲストの絆=コミュニティ内の信頼
    ・プラットフォーム自体は何の資産も持たず、サービス提供者を雇用せず、ブランド名だけでサービスを売っている
    ・ユーザーがプラットフォームに求めることはさほど変わらない。悪いことが起きるリスクを減らして、何かが起きた時にそこにいてくれることを望んでいる
    ・信頼できるか否か:有能さ、頼りがい、正直さ

  •  2017年の調査結果には、「信頼危機」というわかりやすい見出しがついた。政府、マスコミ、ビジネス、NGOへの信頼は、史上もっとも低かった。なかでもマスコミの低下は著しく、すべての国で82パーセントの人がマスコミを信頼していないと答えた。

     2004年、アリババはアリペイというオンラインの決済システムを導入した。ペイパルのような直接の支払いでなく、アリペイは買い手から先に支払いを受け取り、それをエクスロー勘定に入れる。売り手が商品を発送し、買い手が商品を確かめて満足してはじめて、そのおカネが売り手に渡る。それは、不確実性を減らす単純な方法で、この場合は決済にまつわる不確かさを減らすことになった。

     では、これほど多くのエリート組織が今同時に崩壊しているのはなぜだろう。そこには3つの理由があり、どれも一部は重なっている。ひとつは責任の不平等(悪事に対して罰を受ける人もいれば、罰をまぬがれる人もいる)。次に、エリートと権力の終焉(デジタル時代の到来で階層がなくなり、専門家や金持ちや権力者へのやみくもな信仰が薄れた)。最後に隔離されたエコチェンバーだ(文化的な同類が寄り集まり、反対意見に耳を貸さなくなった)。

     この章で説明した3つの原則ーカリフォルニアロール、メリット、信頼のインフルエンサーーつまり、「それは何?」「自分にとってどんな得になる?」「ほかに誰がやっている?」という3つの問いが、バカげていると一蹴されたアイデアを不思議に見慣れたものに見せる方法を教えてくれる。新しいアイデアへの信頼がどのように広がるかが、この3つの原則で説明できる。

     今の時代の責任の問題は、あり得ないほど複雑だ。プラットフォーム自体は何の資産も持たず、サービス提供者を雇用せず、ブランド名だけでサービスを売っているからだ。‥
    「世界最大のタクシー会社であるウーバーは、車を1台も所有していない。世界でもっとも利用者の多いメディアであるフェイスブックは、コンテンツを作らない。世界でもっとも価値の高い小売企業のアリババは在庫を一切持っていない。世界最大の宿泊業者であるエアビーアンドビーは不動産を持たない。何か面白いことが起きている」

     「ユーザーがエアビーアンドビーに望むのは、何かがうまくいかなかったときや計画と違うことが起きた場合に、僕たちが支えになるってことだ。それができれば、8割方は大丈夫」

     情報があるという幻想は、無知より危険だということだ。「信頼には敵がひとりではなくふたりいる。悪どい人物と偽りの情報である」

     信頼に値するかどうかは3つの要素に左右される。その人は有能か?その人は頼りがいがあるか?その人は正直か?
     有能さとは、その人があることをやり遂げる能力があるかどうかだ。…
     頼りがいとは、その人があなたのためにやると言ったことを必ずやるかどうかだ。…
     正直さとは、誠実さと意図の問題だ。

     薬物の売人はネット上のほうがより正直になるようだ。このことは、犯罪の生態系のなかで、テクノロジーの助けまたは監視によって人々がどう信頼を構築しているかを教えてくれる。

     巨大な社会的圧力がのしかかり、人々は体制に従ってどんな形の異議も避けるようになるだろう。否定的な意見や、常識に反する考えは、行き場を失う。このシステムは徹底的に個性を排除し、同調を促す。そんな社会の同一性を想像すると、頭がくらくらしてしまう。

     現在Talaはケニアで5番目に利用者の多いアプリだ。…テクノロジーによって信頼のボトルネックが迂回され、より多くの経済活動が生み出されている好例がTalaだ。

     分散された信頼が、人々や国家に、今の信頼なき状況から抜け出す道具と力を与えてくれるという大きな可能性を信じているからこそ、私はこの本を執筆した。今のわたしたちは、不信という危険な嵐が通り過ぎるのを待っている。分散された信頼はその嵐を切り抜ける方法を見つけ出す助けになれる。…
     本書には、分散された信頼がひと回りして権力が中央に集中し、最初の志が奪われてしまった事例もいくつか描かれている。アマゾンやアリババやフェイスブックがそうだった。商業や情報を民主化する手段としてはじまった会社が、一極に権力の集中する巨大企業になり、価値ある秘密の個人情報を支配している。
     しかも、支配者を抑制するはずの制度、たとえば監督機関や労働組合は、新しいデジタル時代に進んでいる独占に対応する力がない。分散された信頼が抱える本当の難問は、それが市場の力と人間の欲に抵抗できるか、あるいはそれに耐えられるか、ということだ。
     中国の社会信用制度を見れば、分散された信頼のネットワークが、政府の支配する国家的な恥や介入のネットワークになる可能性があることがわかる。そして、ユートピアを求めた初期のビットコイン採掘者に何が起きただろう?採掘業者が危険なほど中国に集中し、ビットコインの背景にあったユートピアの理想とは反対の方向に向かっている。ワールドワイドウェブがもたらしてくれると期待した情報の非集中化と世界中での多様なアイデアの交換は実現されたが、同時に新しいタイプの同一化と集中が進んだ。ひと握りのソーシャルネットワークのさなかでのつながりと階層が、わたしたちの見るものや読むものを支配している。…そして、デジタルに集中した力にわたしたちは抗えなくなっている。その力を人々の手に取り戻したくても、もし間違った人に渡したらどうなるだろう?またはひと握りの人たちに力が集中したら?ひと握りの悪者に力を手渡してしまったら最悪なことになる。

  • 信頼を様々なangleから考察、分析し、今後デジタル時代における「信頼」を得、維持するためのメカニズムの構築がkey となることを示唆する圧巻の書

  • 久々にいい本。

    人が新しいものを信頼する3つの原則=アイデアを受け入れる3原則。
    それは何? 自分にどういう得が? 他に誰がやってる?
    人間は本当に新しいものは欲しがらない。馴染みのあるものがこれまでとちょっと違うやり方で提供されると欲しい。アップルのデザイナーの目標は「はじめてなのに見慣れたもの」。カリフォルニアロールの話。

    持たない会社Pferとして成功してる。
    「ウーバーは車を持たず、世界最大のメディアのフェイスブックコンテンツを作らず、世界一の小売企業のアリババは在庫を持たない、宿泊業者のエアービーは不動産を持たない。何か面白いことが起きている」

    サービスが原因でえ何か問題が起きた時Pferはその責任を負うべきか。
    Pferは問題を抑止できる存在であるがゆえににある程度責任は負うべき。
    ただし、利用者側もそのような不安定な信頼の上で成り立っていることを意識すべき。過度に簡単に信頼する(信頼の飛躍)には気をつけるべし。我々はクレジットカードをブラックボックスに入力している。システムが滞りないと感覚が麻痺してしまう。

    信頼の3要素。有能さ、頼りがい、正直さ。

    分散した信頼を成り立たせる主要な方法は口コミ。
    偽レビューの可能性や問題もあるがユーザにみメリットがあり売り手にも責任ある行動をとらせる有効な手段。

    データを預けているという意識は持ちづらいが、その弊害ともいうべき動きが出てきている。
    中国では社会信用制度(国民格付け制度)。2020年には強制参加になる。
    セサミクレジットという会社がユーザにあらゆる行動を点数付けするサービスを国の指示のもと提供。
    何をやってるかが全て監視されて点数付けされる社会。プライバシーはもはやなし。

    信頼のステージは、F2Fに直接的な相手を信頼してたステージ。制度を信頼するステージ(ブランド力、業種、学歴、名声、資格、評判など)(BCの世界はこれを揺るがす)。
    そして今は、分散された信頼のステージ(レビューシステム)。



  • かなりおもしろかった。
    アリババ、エアビー、ウーバーなど、ネットを介して見ず知らずの人や初対面の人を「信じられる」のはなぜか?AIチャットボットの信頼性とは?ロボットは信じられるのか?
    ダークウェブでの薬物の闇取引でECサイトのような「レビュー」がしっかり機能している話、そして同じく評価を水増ししようとする者がいるとか…。
    中国で進む個人の信用スコア(国民の格付け)、最後はブロックチェーンまで、「信頼」についての興味深い事例と論考。

  • 東2法経図・6F開架 335.15A/B66t//K

  • 前作『シェア』で共有型経済(シェアリング・エコノミー)を提唱した著者が、企業・個人がデジタル時代の「信頼」を攻略する仕組みを解説した書。誰もが様々なモノ・サービスを評価しレビューを書く時代だからこそ、改めてオンライン上での「信頼」の功罪について考えたい。

    第1章 信頼の壁を飛び越える
    第2章 信頼が地に墜ちるとき
    第3章 はじめてなのに見慣れたもの
    第4章 最終責任は誰に?
    第5章 偽ベビーシッター
    第6章 闇取引でも評判がすべて
    第7章 人生の格付け
    第8章 われわれはボットを信じる
    第9章 ブロックチェーン1 デジタル・ゴールドラッシュ
    第10章 ブロックチェーン1 信頼のマシン

  • 共有ビジネスが広がったり、ネットのレビューに重きを置いたり、信頼につけこもうとするようなサイトを簡単に信頼したり。考えたら、いずれもこの10年程度のことであり、変化のスピードに改めて驚愕する。
    本書は、信頼をテーマに、このような変化を綴ったもの。何か結論を導き出そうとするわけではないので、まどろっこしい感じもしたが、変化の様子、劇的な利便性の一方で、プラバシーや個人の社会性を平気で踏みにじられそうな恐ろしさをひしひしと感じることができる。

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著者プロフィール

作家、ソーシャルイノベーター。『シェア』(2010)で提唱した「共有型経済」は、タイムズ誌による「世界を変える10のアイデア」に選ばれた。2013年には世界経済フォーラムにより「ヤング・グローバル・リーダー」にも選出。ニューヨーク・タイムズ、ガーディアン、WIREDなどで寄稿編集者を務めるほか、インターネットとテクノロジーを通したシェアリングエコノミーの可能性やビジネス・社会における変化についてコンサルタントや講演などを行っている。またオックスフォード大学サイード・ビジネススクールで「協働型経済」コースを教えている。

「2018年 『TRUST 世界最先端の企業はいかに〈信頼〉を攻略したか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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