BLと中国—耽美(Danmei)をめぐる社会情勢と魅力

著者 :
  • ひつじ書房
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784823412295

感想・レビュー・書評

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  • 今、ブク友さんにおすすめしていただいた唐酒卿老师の『将進酒(将进酒)』(台湾繁体字版)を読んでいる。明日をも知れぬ戦乱の世で繰り広げられる朝廷の権力争いが描かれた架空歴史ものの耽美(BL)小説。ラジドラも追っかけながら聴いてるのだけど、もう夢中で寝不足が続いてるよ。
    私は中華BLのなかでも仙侠や武侠、架空歴史など、壮大で美しく、そして醜くもある世界、中国ならではの古風、古代が舞台となったBLが大好き。
    どうして中華BLってこんなにも面白いんだろう。感動するんだろう。魔翻訳しながらでも読みたくて堪らなくなるんだろう……
    日本のBLは何冊か読んだことがあるのだけど正直こんな気持ちになったことはない。他の国のものも今のところ読んでみたいとは思わない(←後日、撤回することになりました 笑)。なのに中国のBLだけには惹かれてしまう。

    ストーリーが面白いから。
    恋愛(セックス含め)がストーリーの中心ではないところも好き。
    だけどそれらのシーンももちろん大好きだよ。ため息が出るほどきらきらしていたり、ちょっとした仕草に込められた気持ちにこそばゆくなったり、蕩けそうなほど熱く愛し合う二人にどきどきしたり。切なかったり、胸が痛くなったり、心がぐちゃぐちゃにかき回されることも含めて……漢字がね、並ぶ漢字に妄想が膨らむんだ。
    そう!漢詩や詩的表現が散らばっているのもすごく好き。意味を知るのはもちろんのこと、漢字を眺めているだけでも情景が思い浮かんだり、本当に読んでよかったなぁと思える。
    仙侠、武侠、古代王国の世界観、キャラたちの衣装や髪型などが好みってのもある。
    攻受ともに力強くて美しい!
    受けが女々しくないのがいいな。
    攻めがお料理や家事も完璧なスパダリなこと。
    受けだけを一途に何十年、何百年、何万年と想い続けているなんて最高に尊い……
    まあ、いろいろあるけれど、自分でも気づかないまま惹かれている中華BLならではの魅力がきっとあるんだろうな、と本書を読んでみることにした。

    とても読みやすかった。本書では日本語訳のある中国BL作品、実写ドラマ、アニメが考察の例に挙げられており、それらの原作を読んでいたこともあってスムーズに内容が入ってくる(本書では、中国BLと記されているので、これより先は中華BL→中国BLとする)。
    なかでも『魔道祖師』(作者:墨香銅臭)と『千秋』(作者:梦溪石)の小説、アダプテーション作品を比較し論じられている箇所が多く、両作とも大好きな作品なので大変興味深かった。
    あと、作家Priestの策略、及び彼女の作品『鎮魂』『天涯客』のアダプテーション作品についても述べられている。

    また、中国BLにハマると自然と調べたくなるのが中国の検閲制度。さらには原作とアダプテーション作品の違いなどについても分かりやすく説明されていて、今まで何となく知っていたことが上辺だけのものだったことに気づく。

    とはいえ、全体を通して文章は易しく注釈も丁寧につけられているので、中国BLを読んだことのない方にも理解しやすく興味深い内容になっていると思う。本書を読んで、一度読んでみようかなと思われる方もおられるんじゃないかな。
    一方、中国BLがお好きな方にはすでにご存知の内容が多いと言えるかもしれないが、中国の社会情勢を分析し、検閲やメディア規制による厳しい環境のなかでも発展してきた中国BLを論じた本書で改めて整理できるのではと思う。

    中国BLとフェミニズムやジェンダーについては、以前読んだ記事(雑誌『すばる』2023,6月号)からあまりにも大きな解釈(たとえば伝統的な儒教思想のヒエラルキー、社会的不平等への反抗など)もあることは知っていたけれど、私は儒教思想や家父長主義のなかで育ってきたわけでもないので、そのような環境から開放されたいという気持ちが中国BLへと向かった、と考えるのは私には当てはまらないと思う。

    ただ「男性なのに(だから)」「女性なのに(だから)」が必要のない世界で、好きな「人」(←人間という意味ではなくて)とハッピーエンドを迎えるBLの世界は何だかホッとする、というか、私も本当に幸せな気持ちになる。

    まだそんなに中国BLを読んだわけじゃないし、ジャンルも古風、古代ファンタジーのものに限られているのだけれど、どの作品の受けも、ステレオタイプ的な女性のようではなく、何度も挫折し心が砕かれてしまっても、それでも涙を見せずに(たとえ進む道が邪道だったとしても)自分の信念を貫き大義を果たすために前を向く、そんな強く美しい人たちばかりだった。
    そんな受けたちだから、攻めの彼らも一途に愛するし、守ってあげたくもなるし、肩を並べて一緒に歩きたいと願う。ともに困難に立ち向かい、そしてともに乗り越える、そんな対等な関係。すごく好き。

    その人だから好きになった、大切な人だから愛し合いたい。そんな二人を見ていると、私も「女性」という性別、性から生じる縛りやジレンマ、煩わしさなどから解放された気分になる。
    それらに囚われない世界は、本当に呼吸がしやすくて楽だ。

    しかしながら難しく考えることは置いといて。
    本書を読みながらずっと考えていた、私がこんなにも中国BLに惹かれる理由。
    人として強く美しい彼ら、私の愛おしい受けと大好きな攻めの二人が愛し合い幸せになることが、私の幸せでもあるんだってことなんだと思う。
    何の縛りもなく、ただ素直に自由に心のままに。
    幸せな二人の姿を見届けて涙が出るほど感動できるということが、私にとって最高に幸せなことなんだと。

    中国BLは私の生きていくための糧。今までもそしてこれからも、たくさんのBIG LOVEを読んでいきたい。
    本当に本当に作家の皆さまには感謝しかありません。検閲や規制などで表現の自由が制限されるなかでの作家活動は困難でしょうし、心が折れてしまいそうになることもあるんじゃないかなと私も心が痛くなります。
    それでも素敵な作品を届けてくださること、BL作品を作り続けていかれるのは、やっぱりBLが大好きって気持ちが作家の皆さまの心から消えることがないからなんだろうなと想像してます。本当に強いなぁ、すごいなぁと涙が出てきます。ずっとこれからも応援してます。
    私はやっぱり中国BLが大好き、愛してる。

    ※本書のテーマはどれも興味深く、そのなかでもとくに気になった部分、興味のある部分をメモしておきます……が、かなり苦労して絞ったわりには、とんでもなく長くなってしまったので、「再読記録」の方へ残しておくことにしました。
    ご興味がある方がございましたら「再読記録」を覗いてくださいませ。
    『魔道祖師(陳情令)』と『千秋(山河剣心)』の検閲についての比較など興味深かったですよ!

    • 地球っこさん
      番外編、了解しました!
      ボリューミーですね。もう読むしかないですね。た、の、し、み♡
      ムギョンわかります、わかります。
      やっぱりそこが一番大...
      番外編、了解しました!
      ボリューミーですね。もう読むしかないですね。た、の、し、み♡
      ムギョンわかります、わかります。
      やっぱりそこが一番大切ですよね。じゃないと魅力的な攻めにならないし好きになれないもの(ハジュンというより私が )。

      私が言うのもなんだけど、踏仙君、畜生だけど狂ってるけど嫉妬深いけど、好きになってやってくださいませ 笑
      そうそう5巻の途中からだんだんしんどくなっていくんです。ふたりがキュンキュンラブラブだったときが、まるで前世の死ぬ前に見た夢じゃないの!?って思ってしまうくらい、ガラッと雰囲気変わっていきます。墨然の過去エピも苦しい(⁠ ⁠⚈̥̥̥̥̥́⁠⌢⁠⚈̥̥̥̥̥̀⁠)

      将進酒2巻まだ前半です。
      ふたり交杯酒して桌の下で蘭舟が足すりすりして、それから……最高でした!
      そのへんはとても楽しく読めたけど、奚鴻軒が自刎して師父と先生が行方不明で……らへんで、また難しくなってふっと意識が……そしてハーフラインに逃げました 笑
      GWはハーフラインで息継ぎしながら2巻読んでしまいたい。そしてラジドラ聴きたいです。

      2024/04/25
    • 地球っこさん
      asaさん、こんばんは☆彡

      ハーフライン我慢できずに読み始めたら途中で止められず、結局GW入るまでに分冊出てるぶん全部読んでしまいました ...
      asaさん、こんばんは☆彡

      ハーフライン我慢できずに読み始めたら途中で止められず、結局GW入るまでに分冊出てるぶん全部読んでしまいました 笑
      すっっっごく面白かったです!
      早く完結まで読みたいです。

      ときおりプッと笑ってしまうムギョンの思考回路や
      クスッと笑うムギョンがなんか可愛くて。
      それ以上にムギョンの暴走する執着心や鬱々とした嫉妬深さ……たまらんかったです(⁠。⁠♡⁠‿⁠♡⁠。⁠)
      そんなムギョンがお好きなタイプのasaさんはきっと踏仙君を好きになってくれると確信しました 笑

      自分をしっかり持ったハジュンもいいですね。今まで読んだ中華BLの受けやハジュンのような強い精神力や包容力を持った受けが大好きです。
      asaさんのおすすめはどれも好みで楽しいです。

      ではでは、おやすみなさ〜い。

      2024/04/26
    • asaさん
      地球っこさん
      おはようございます。

      めちゃ早いですね!読み終わるの。
      良かったでしょ〜( •̤ᴗ•̤ )♥

      ムギョン、思考回路が壊れて...
      地球っこさん
      おはようございます。

      めちゃ早いですね!読み終わるの。
      良かったでしょ〜( •̤ᴗ•̤ )♥

      ムギョン、思考回路が壊れてるんじゃないかと思っちゃう所もあるけど……(*´艸`)
      頑固一徹なハジュンも好き♡健気すぎるけどそこがまた素敵。頑固さは千秋の沈嶠っぽい。

      攻め受け両方好みのタイプです。

      踏仙君、好きになると思いますよ……( ˶'-'˶)


      ミルキー出て来ました♡.*・゚
      甜甜甜……
      2024/04/27
  • 中国のBLは、いかに検閲をかわしヒットした?「耽美」の研究書刊行 - KAI-YOU.net
    https://kai-you.net/article/89014

    研究者学術情報データベース
    https://research-db.ritsumei.ac.jp/rithp/k03/resid/S001784

    ひつじ書房 BLと中国 周密著
    https://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-8234-1229-5.htm

  • BLや耽美……という概念をよく分かってない私でも分かりやすく読めました。

    文章の行間からほのかに漂うエロさは、検閲によって磨かれたんですね。魔翻訳でも感じられるのだから、作家さん達は相当文章を研究して練ってると思う。
    直接的表現よりほのかな方が好きですね。(笑)

    史実をあげての説明や、脚注も面白く読めました。

    • 地球っこさん
      asaさん
      私のほうがむっつりですよ(⁠。⁠・⁠/⁠/⁠ε⁠/⁠/⁠・⁠。⁠)
      将進酒は直接的な表現までいかないから、めちゃくちゃ頭フル回転...
      asaさん
      私のほうがむっつりですよ(⁠。⁠・⁠/⁠/⁠ε⁠/⁠/⁠・⁠。⁠)
      将進酒は直接的な表現までいかないから、めちゃくちゃ頭フル回転して妄想。え、え、この訳ってどんな状況!?って 笑
      ラジドラの衣ズレの音とか聴きながら 笑

      なんだろ、直接的表現と言っても翻訳ものだから苦手じゃないのかも。二哈は漢字だからどきどきするのかな。

      中華BLって行為自体が中心ってわけじゃなくて、その時のふたりの感情とか、情景とか、そういうものが丁寧に描かれていて、そちらのほうが印象的だから。ハーフラインもふたりの感情が丁寧に描かれてますよね。

      木苏里先生の本は今年中に1作品は絶対読みたいです。判官読む読む〜。asaさんが読まれたのは簡体字版の判ですか?

      「赤と白のロイヤルブルー」あ、私、これ小説読みたいと思ってたやつです!映画になってるんですね。あちゃ、アマプラは入ってなくて、でも観てみますね!
      実写、私も苦手なんですよね。将進酒も実写化とかしなくていいわ、アニメもしなくていいわ、ラジドラで大満足だわと思ってるくらい。
      天官賜福が実写化しても観ないと思う……
      大好きな作品たちは実写化しなくていいです 笑
      でも「赤と白のロイヤルブルー」はasaさんおすすめなので、ぜひとも観てみたいっ!

      ハーフライン、読みましたよ〜
      よかったですね!ムギョンがすごく変わってきて可愛いわ。けっこう泣いちゃってますね、彼。
      現代ものはハーフラインが初めてなので、そっかカミングアウトも描かれるんだって気づきました。双子ちゃんはすごく喜んでくれそうだけど、どんな展開になるのかな。
      こんなに番外編が濃いなら、本編3巻でも全然いけると思うんだけど。
      私、2巻のハジュンがお酒飲みながらジョンギュにムギョンのことが好きだって告白するエピソードと、ムギョンがワールドカップのときのハジュンのアシストの動画を観るエピソードが、なんかすごく好きで、また今日も読み返してました(⁠.⁠ ⁠❛⁠ ⁠ᴗ⁠ ⁠❛⁠.⁠)

      ではでは。今日も一日お疲れ様でした。
      2024/05/14
    • asaさん
      地球っこさん、こんにちは

      将进酒、妄想しまくりですよね(*¯︶¯♥)
      銅銭龕世も激しく妄想するところあります!!
      何せ三日三晩(/// ^...
      地球っこさん、こんにちは

      将进酒、妄想しまくりですよね(*¯︶¯♥)
      銅銭龕世も激しく妄想するところあります!!
      何せ三日三晩(/// ^///)
      魔翻訳読書の妄想楽しいですよね(笑)


      判官はjjで読んだ方が良いです。
      曖昧表現が良いんです♡ヒントは糸ですね。

      私も実写の天官賜福はあまり興味無いです。
      でも将进酒は見たかったなぁ……騎馬の陣法のシーンとか広大な風景でのシーンなど……
      陣法は自分の想像で合ってるのかなぁ……とか色々読書中悩んでたので(笑)
      確か、制作するって言われてたような気がするのですが、中止でしょうね。殺破狼も制作中だったんですよ。スチームパンク小説だから実写で観たかったんです。( ᵕ ᵕ̩̩ )

      ハーフライン、地球っこさんがすきだとおっしゃつていた箇所、私もお気に入りです♡.*・゚
      今紙の本で読み返してます。やはり紙の本の方が情景が浮かびやすいです。読み慣れているからでしょうかね(*'ᴗ'*)

      ではまた(*´︶`*)ノ
      2024/05/16
    • 地球っこさん
      asaさん

      天官賜福、あのEDは圧巻でしたね。あんなすごいED今まで見たことないです。続編制作されてほしいし、ラジドラも楽しみ、早く太康花...
      asaさん

      天官賜福、あのEDは圧巻でしたね。あんなすごいED今まで見たことないです。続編制作されてほしいし、ラジドラも楽しみ、早く太康花城に会いたい♡

      それで、なになに?三日三晩!?
      気になる気になる〜
      銅銭龕世もjjがおすすめなのかな?
      判官、え、糸!?
      将进酒の次にいきたいけど、えーどっちにしようか悩む。嬉しい悩みです。

      ああ、たしかに!将进酒のそういうシーンはなかなか想像だけでは追いつかないです。
      映画のように大画面で観たいです!
      迫力あるでしょうね。
      陣法のシーンは離北に二公子が帰ってからなのかな?
      でも、人物が……
      もう中華BLにハマってから三次元の俳優さんにさえときめかなくなってしまいました。
      二次元のキャラでしか妄想できなくなってしまいました。
      兰舟の美しさを、花城のかっこよさを、代替できる人間がこの世にいるとは思えない……もう重症です 笑
      とくに仙侠ものの世界観を実写化したものは私にはやっぱりムリかなぁ。陳情令もダメだったし。
      そして愛は、ブロマンスか友情に変わっちゃうんでしょうね……

      殺破狼はasaさんのレビューで「面白そう!」と思い、ちゃんと本棚に繁体字版スタンバってます。
      殺破狼の世界観は、私にはそれこそ想像だけでは追いつかなさそうです。観たいですーー

      ハーフライン、自分でもよくわからないのだけど、なんか面白くて(笑)
      何度も読み返してはプッと笑ったり、ニヤついたり、ホロッとなってしまったり。
      たしかに紙の本の方が情景が浮かびやすいですね。通読だけでなく、パラパラとめくって、すぐに読みたいところが見つかりやすい気もします。
      早く、続きの配信が読みたいです!

      赤と白とロイヤルブルー、街にただ一軒しかないレンタルやさんにもなかったので、とりあえずU-NEXTかNetflixかに配信されるのを待っておきます。残念!
      その代わり小説は購入しましたよ〜
      2024/05/16
  • (後で書きます。参考文献リストあり。カバーと表紙のイラストの違いが内容を示唆して興味深かった)

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