WILDHOOD(ワイルドフッド) 野生の青年期——人間も動物も波乱を乗り越えおとなになる

  • 白揚社
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784826902311

作品紹介・あらすじ

「すばらしい!『青年期』のすべてがわかる最高の一冊。
動物だけでなく人間についても驚きの発見に満ちている」
——ユヴァル・ノア・ハラリ(『サピエンス全史』著者)

見た目はぜんぜん違っていても、人間と動物の若者には驚くべき共通点がある。
どちらもおとなへと成長する過程で「青年期」を経験し、乗り越えるべき4つの課題も同じ。
若者が危険なことばかりしたがるのにはちゃんとした理由があった。
前作『人間と動物の病気を一緒に見る』で医学界に一大センセーションを巻き起こしたタッグが、人間と動物の青年期の不思議に挑む。

★賛辞の声続々!★

青年期の危険な旅路をこれほどまで深く掘り下げた本はほかにない。
すばらしい書きぶりにページをめくる手が止まらなかった。
——フランス・ドゥ・ヴァール『ママ、最後の抱擁』著者

人間と動物のティーンエイジャーがこんなにも似ているなんて、ほんとうにびっくり!
この本大好き!
——テンプル・グランディン『動物が幸せを感じるとき』著者

子どもはどのようにしておとなになるのか、あなたの考えを変える1冊。
——ダニエル・E・リーバーマン『人体600万年史』著者

感想・レビュー・書評

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  • 人間という枠を超えて、生き物の青年期というものを考察した研究。人間、人間以外の動物、魚、虫たちの青年期に共通する傾向や、なぜ生き物は青年期に自ら危険な旅にでるのか、などが書かれていて、非常に面白かった。
    人間の思春期の子供を育てている親としても、大変勉強になった。

  • 青年期という観点で見れば、人や動物がなぜああなのかは、若いから(あるいは若くないから)こそああなのだと捉える事ができる。若さゆえの過ちは人間の専売特許ではないらしい。思春期は皆経験するし、皆その特徴を知っているにも関わらず、これほどの普遍的事実は普段忘れがちで、その分本書の主旨を新鮮に感じた。また動物と暮らした経験のある人は、尚更野生の青年期をその体験から導き出せるに違いない。幾種かの動物の観察経過を通して、彼らの知られざる生態に迫るのが読みどころのひとつ。擬人化に注意したとしながらも、やはり人間の習性や社会性との親和性を認めてしまうのは、著者または読者の失態というよりは、根本的に同じ祖先を持つ(かつ今日まで生き延びてきた)生き物だから、と解釈する方がしっくりくる。性行動においても、アプローチから受け入れまでに多様なドラマがあり、常に即物的ではないとするくだりは、絶滅危惧動物の繁殖が簡単でない事実を鑑みれば説得力あり。動物の中に人間を見、人間の中に動物を見る。分厚いがページ数を感じない面白さで、誰にでもお薦めできる一冊。

  • 野生は合理的だ。そして、その合理的行動は、人間ほど多様な選択肢に溢れている訳ではないが、面白い程、人間と共通する部分がある。彼らが人間に似ているというよりは、人間が彼らに似ている。自己や種の保存に関わる本能は、共通だからだろう。本著はその切り口を、セーフティ、ステータス、セックス、セルフリライアンスというSから始まる四つのワードで解説する。

    本著のタイトルでもあるワイルドフッド。青年期。人間社会でも不安定なこの時期に、動物たちも様々な経験を通じて成長する。この時期に、防衛手段を身につけて、集団における地位を確立し、性的行動の準備をし、自力していく。

    人間に似ているなと感じた話を幾つか。例えば、アルビノのように風変わりな個体がいる。アルビノは目立つから、集団全体が捕食の危険にさらされる確率が高くなる。従い、集団による排除が起こる。人間でも、特に青年たちが、みんなが持っているブランドを身につけたがる心理は、このように捕食のターゲットとして選ばれるのを避ける方策でもある。

    次に、自分を狙うにはコスパが悪いと言うメッセージを送る。自分を追いかけてもエネルギーは足りなくなるし、貴重な時間を無駄にするだけだと。ヤンキーの見た目のようなものだ。健康である、怯えていないことを示すことで、捕食するには厄介な相手だと示す。さらに、ストッティングという逃げ切れる力を見せる行動、例えばヒバリのエスケープソング、ガゼルのプロンキングという奇妙なジャンプ。声による威嚇は、体内に酸素をたくさん取り入れる力があり、捕食者に対してトラブルへの警戒を呼び起こす。イキる、空いばりのような所作だ。

    動物は知らない相手のステータスがどのようなものか、社会的順位の推移的推論とよばれる能力を使い推測できる。これにより直接の衝突を最小限にし、平和を保ち、怪我を減らす、行動省略法だ。
    毛づくろいのグルーミングもステータスと関係。人間社会では、褒め言葉やおべっか。

    縄張り争いにあぶれてステータスが下がり、ふさぎ込んで死んでしまう場合がある。社会的転落。侮辱や屈辱、金銭的損失、失恋などステータスの低下の体験により気分が落ち込む。群れにおける自分のステータスを感知しては気分が揺れ動く。

    何だかよく見る光景だ。人間も動物も変わらない。

  • 女子栄養大学図書館OPAC▼ https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000055725

  • レビューはブログにて
    https://ameblo.jp/w92-3/entry-12720316021.html

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  • 日本経済新聞社小中大
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    WILDHOOD 野生の青年期 バーバラ・N・ホロウィッツ、キャスリン・バウアーズ著 動物も経験する生きにくさ
    2021/11/20付日本経済新聞 朝刊
    思春期・青年期と聞けば、壊れかけのRadio、理由なき反抗、若きヴェルテルの悩みを思い出す。本書は主に動物の話を扱っている。人間と同じように動物にとっても青年期は生きにくいことが、同情を禁じ得ないように描かれている。人間にとっては青年期の苦悩が芸術になるかもしれないが、動物にとってそれはいったい何の役に立つのだろう。青年期とは、その前半に思春期を含む、子どもから大人への移り変わりの時期と捉えられている。この本では、思春期を生殖能力が獲得されるまでの時期として、青年期を体と行動をひとつにまとめ上げていく時期として定義している。


    主人公はキングペンギン、ブチハイエナ、ザトウクジラ、ハイイロオオカミ。彼らの青年期が、他の様々な動物たちや人間の行動と丁寧に比較され、物語として描かれる。動物たちが直面する問題は、安全と地位の確保、セックス、そして自立である。

    ペンギンは危険なアザラシのいる海域を泳いで渡ることで、恐怖を学ぶ。運よく生き延びたペンギンは、その後アザラシを避けるようになる。ハイエナは強い階級社会で生きる。低順位のハイエナでも、運がよければ順位を上げることができる。高い順位の友達を作ることは、有効な手段だ。クジラのオスは習得に何年も要する歌をうたいメスに求愛する。メスはオスの資質を歌から判断し、求愛に応じる。オオカミが親元を離れ自立するためには、学ぶことがたくさんある。社会の中での礼儀作法、求愛、狩り、縄張りの作り方。群れに留まるべきか、離れるべきか。

    これらの物語を中心に置きながら、本書は進化学、神経科学、社会心理学等、広範な知識を野生の青年期という課題を軸に授けてくれる。私自身、今まさに思春期の子どもを2人抱えている。自分自身が思春期・青年期にいたときの悩みや怒りや不安を、幸いなことに私は忘れてしまった。だから自分の子どもたちをペンギン並みに理解しがたく感じることもある。この時代の無防備さと無鉄砲さと衝動性が世界を開いてきたことを、大人は忘れてしまうのだ。本書を読んだことで少しは度量の広い父親になれることを私は願うが、そう上手(うま)くいくものでもないのが人生の機微である。

    《評》東京大学教授 岡ノ谷一夫

    原題=WILDHOOD(土屋晶子訳、白揚社・3300円)

    ▼ホロウィッツ氏は米ハーバード大人類進化生物学客員教授。バウアーズ氏は科学ジャーナリスト。

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著者プロフィール

ハーバード大学人類進化生物学客員教授。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)心臓内科教授。進化・医学・公衆衛生に関する国際協会(ISEMPH)会長。バウアーズとの前著に『人間と動物の病気を一緒にみる』がある。

「2021年 『WILDHOOD 野生の青年期』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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