- Amazon.co.jp ・本 (172ページ)
- / ISBN・EAN: 9784828849119
感想・レビュー・書評
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<機内の現実に、現実を超えたものが割り込む怖さ>
収録作は表題作と『チャス・マッギルの幽霊』の2作。
いずれも児童文学とされており、さして長い話ではない。
本書自体は絶版だが、2006年に岩波書店から、他の短編等を加えた形で刊行されている。岩波版は、映画監督・宮崎駿の肝煎り。
あまり深い理由はないが、何となく色付きでない形で読みたい気分だったので、旧版を借りた。
どちらも戦時中を舞台とした、不思議さと怖さのある作品である。
怖いようで、どこかユーモアもあり、それでいて虚無の影もちらつき、かと思うと温かさも漂う。現実感と浮遊感がない交ぜになった、何だか不思議な雰囲気である。
『チャス・マッギルの幽霊』は、古い「幽霊屋敷」で少年が出会う怪異と、少年の善意がもたらす、思わぬ解決の話。
『ブラッカムの爆撃機』は、夜間爆撃にあたる若い兵士が遭遇した、空中の恐怖。
機内の描写の現実感と、そこに切り込んでくる亡霊の恐ろしさの対比が印象的。若い兵士たちをまとめる「親父」の頼もしさと、ドイツ軍中尉・ディーターの悲運の描写が冴えている。
*学生時代、英語のクラスで若い空軍兵士(多分、英兵)の詩を読んだのだ。空を飛んでいて精神が現実離れしていくさまを描いたもので、何となく記憶に残り続けている。原典にあたりたくて探したが、当時のプリントもさすがに取っておいていなくて、行き当たらない。残念。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ちょっと不思議な、小さな優しい事件を描いた「チャス・マッギルの幽霊」がとてもいい。第二次世界大戦時のイギリスという舞台がうまくはまっている。同じ幽霊譚でも「ブラッカムの爆撃機」は不気味さと迫力がある。
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勧められなかったらおそらく手に取ることはなかっただろう1冊。
著者はあとがきに「戦いのなかの勇気について」の作品で、戦争を賛美するものではないとのコメントを寄せている。
『チャス・マッギルの幽霊』がよかった。 -
今でも 自衛隊基地に戻ってくる 日本軍の幽霊がいるそうだ。こないだ NHKを見ていて ガナルカナルで ボコにされた部隊だと言うことを知った。塹壕に入っている兵隊の上を 戦車がゆっくりと動いて 兵隊を踏みつぶしていったとか。幽霊は どんな姿で 戻ってくるんだろうか 眼ばっかりになってやせ果てた姿で戻ってくるんだろうか それとも 一番美しい姿で戻ってくるんだろうか。
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20070228
宮崎駿の書き下ろし付きの新装版が出たのを見て、再読。この人の本は戦争ものが多くて、結構不気味なのが多い。だけど、それ以上にほかの何かがぐいぐいと引き込んでいく。
「海辺の少年」はキラキラした世界が、「弟を地に埋めて」は世界の終末を静かに、だけど生きようとする決意が見える。
「機関銃要塞"の少年たち」が読みたい。 -
短編集が二話納められている作品です。
どちらも、第二次世界大戦が時代背景となっており、ホラーじみた世にも奇妙な物語のような話。戦争時代の話となると、大体日本の話かドイツ、アメリカといった物が今までの私の中で主でした。イギリスはどうも陰が薄い感じがしていましたが、改めて、戦争の時イギリスはこんな感じだったんだと思わせてくれました。戦争自体が話の主だったものではないのですけど、多分個々からみればきっと善良で、笑ったり泣いたり怒ったりして、ただ国という枠付けの中からでられないだけなんだろうと思う。戦争の話を読んでていつも思うけれど、なんだかそれが哀しい。平和が一番である事はわかっているのに。