- Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
- / ISBN・EAN: 9784831826244
作品紹介・あらすじ
祇園祭が年2回、そして冬に行われた時代があった!?
先行するイメージを問い直し、複雑なその実像に迫る――。
紙芝居や小説・映画を通じて祇園祭に託された「権力に抵抗する民衆の祭」というイメージは、はたして実態に合うものなのか。
紙芝居など創作物の題材である戦国期の祇園祭(祇園会)にスポットを当て、室町幕府や延暦寺との関係、そして神輿渡御・山鉾巡行を担う都市民の姿、乱世の煽りを受けて式日が混乱を極めていく様子を、当時の政情や政教関係を踏まえて描く。
イメージと史実を比較し、中世都市祭礼たる祇園祭のリアルに迫った労作。
【目次】
はじめに
第一章 イメージとしての祇園祭
1 紙芝居「祇園祭」
2 小説『祇園祭』と映画『祇園祭』
第二章 天文二年の祇園祭
1 天文元年~二年六月の政治状況
2 天文二年の祇園祭
第三章 室町幕府にとっての祇園祭
1 祇園祭の再興
2 幕府と祇園祭
第四章 延暦寺大衆にとっての祇園祭
1 日吉社の祭礼と祇園祭
2 延暦寺大衆と祇園祭
第五章 神輿と山鉾の祇園祭
1 神輿渡御
2 山鉾巡行
おわりに
関連略年表/図版出典一覧/あとがき/文庫版あとがき
※本書は2007年に角川学芸出版より刊行された書籍の文庫改訂版です。
感想・レビュー・書評
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祇園祭はTV映像しか見たことはなく、これまで特別の関心はなかったのだが、法蔵館文庫入りした本書を手にとった次第。
本書の対象とするのは、主として室町時代後期、戦国時代にかけての祇園祭のあり様なのだが、史料上の制約でこれ以上は分からないとの言が何度か出てくるものの、逆にここまで分かるのかと感じ入った次第。さすが都京都の祭。公家の日記や寺社の史料に記述が残されていて、ある程度まで復元ができる。
ところで、祇園祭というと、"権力に抵抗する民衆の祭礼"とのイメージがあると著者は言う。どのようにして、そのイメージは作られていったのか、そして本当にそうだったのだろうか。これが本書のテーマとなる。
1953年に祇園祭に関する2冊の書物が刊行された。1冊は、論文「町衆の成立」等がおさめられた林屋辰三郎氏の『中世文化の基調』、もう1冊は民科京都支部歴史部会作成の紙芝居を書籍化した『祇園祭』。紙芝居では、権力側の横暴から祇園祭を守り抜こうとする京の町人の姿、団結力が高らかに謳われる。戦後歴史学徒が関わった国民的歴史学運動の一環としての活動であった。そしてさらに、祇園祭は小説、映画と新たな媒体に描かれ、イメージが広がりを見せていく。
このような権力対民衆という構図は本当だったのだろうか?応仁・文明の乱以降の有り様を、著者は史料に即して明らかにしていく。
祇園祭の実施年や時期を丹念に追いかけて、幕府や延暦寺大衆の関わり、神輿渡御、山鉾の担い手、経費負担の問題等の実際を、少しずつ明らかにしていく。
その結果、明らかになったことは‥‥
著者によれば、現代の祇園祭は中世期とは行路等だいぶ変わったものらしいが、是非直接に見てみたいものだ。
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