2030年ジャック・アタリの未来予測 ―不確実な世の中をサバイブせよ!

  • プレジデント社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784833422406

感想・レビュー・書評

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  • 順調に推移している世界と悲惨になりつつある世界をそれぞれ具体的に上げて、それらを合わせて、未来を考察します。
    市場と民主主義はお互いに強化しあいながら新たな富の創造を促進するはずであったが、世界は既にとじておらず、まったく別の力学が働いていて、この力学こそが従来の市場と民主主義の蜜月関係を破壊し、世界を逸脱させた。その力学とはグローバル経済であり、国際的な法整備を喫緊の課題として挙げています。
    また、自分の幸福は他者の幸福に依存していることに自覚して、世界のためにも行動する準備をしろとも訴えます。
    未来予測というより、エリート層に向けての世界の協調とノブレスオブリュージュを諭した書と読みました。

  • 「これまでに述べてきたことから判断すると、これらの問いに対する答は否定的だ。最悪の事態が起きる可能性はきわめて高い。二〇三〇年までに大きな危機や壊滅的な戦争が起きる。そして世界的な危機や戦争は、人類に不可逆的な被害をもたらす。
     否定的な理由は、地球規模の複合的な課題を自覚している人々の数が極めて少ないからだ。また、それらの課題を理解したところで、今日、全世界に作用する巨大な力をねじ曲げられるとは思えないからだ。…」

    「… そして、民主主義が機能するのは国内だけであるため、民主主義はまもなく幻想になると覚悟しておく必要がある。。そして民主主義と市場は近視眼的な要求によって逸脱するかもしれないと心得て置くべきだ。」

    ”自由を求め怒りにかられつつ他者を批判する”ことが横行している。
    いまや学問が進歩して、どのようなわがままも「個人の自由や尊厳」に結びつける理屈を作れるようになった。「公共の福祉」を求める人間はほとんどいない。皆「自分への福祉」を「公共への福祉」と言い換えている。このような流れが民主主義を終わらせるということなのだろう。

    ジャック・アタリは「審判のいない市場」と「地球規模の法の支配がないこと」が世界を壊滅的な状況に導くと言っている。「怒りの克服」と「利他主義」しか人類を救う道はないと結んでいるが、二〇三〇年までにそれが可能とは思っていないようだ。(そう書いてはいなけれど)

    ただ、最後に述べられている一人ひとりへの一〇段階の自省のすすめ、そして世界のための行動一〇箇条、これに耳を傾けよう。この破滅的な将来を生きていく一人ひとりにとって、自分の人生を救う道標になるだろう。

    閑話休題。
    読むのに1日もかからない二〇〇余ページの本に未来予測を詰め込んである。専門家は「ずさんだ」というのだろう。(著者の「二十一世紀の歴史」はもっと大部だったようにも思う。もう10年前のことだから記憶は曖昧だ。)
    何を持ってずさんというのだろうか。一方でデータを乱用して「相関関係」から「因果関係」をおそまつに説明する風潮について冒頭でアタリも指摘している。

    仮説を構築する能力はプロセスに対する理解と洞察力による。そして未来の世界を予測するにはありとあらゆるプロセスに対しててそれが求められる。未来予測は予測でしか無い。その元になる仮説が証明されるのはすべて終わったあとだ。何度も試行を繰り返せない場で予測の正しさを問うことは虚しい。

    人々の行動を作る説得力はどこから来るか。部分部分の専門的な正しさでなく、本人の学術的成果の追求という個人の欲を離れ、多くの視点を持ち多様な価値観を是認して、多くのプロセスを常識的な因果関係で説明できるかにかかっている。古今真理は常に単純だった。

    本書の結論は自分が考える今後数十年の世界の未来像とほぼ一致している。悲観的な将来をほぼ不可避と予想しながら、自分や家族に言うことは「どのような世の中になったとしても、怒りを制御し、自分の力で切り抜けていく覚悟をもって生きていこう。」ということだ。

  • フランスの叡知、ジャック・アタリ氏の2016年での未来予測本、すべての世界情勢を数値統計データで整理した上で分析/考察している。

    アジアの片隅で一般庶民として生きている私でさえも直感でなんとなくわかっているが、氏の予測では地球上は混沌化しつづける一方で止まる兆しも皆無とのこと。

    昔は、個人内、地域内、国内だけに目を向けて、今できる最良のことだけを一生懸命やれば、良い結果が必ずついてきていたが、グローバル化した今、それが通用しなくなってしまった。

    どうすればよいか、アタリ氏は利他主義が世界を救う唯一の手段であると提案。もう、それだけ先が読めない事態らしい。

    持続可能な生きがい、楽しさ、幸せ、すぐに答えはでない。でも21世紀を生きる大人として真剣にそれを考え続けていこうと思った。

  • このまま何もせず手をこまねいていては破局は避けられない。我ら幼い人類は今こそ目覚めなければならないというのは分かるが、日々の忙しさにかまけて結局破滅を受け入れざるを得ないというのが感想。今更遅いというのも実感。資本主義の揺籃期と考え合せると、社会の革新はイノベーションよりも価値観の変革によってなされるという思いをより強く持った。また今日本が抱えている問題(少子高齢化、公的債務の増大など)が日本のみならず先進国が抱える問題でもあることが分かった。高給取りになれば配偶者に快適な生活環境を提供できる、つまりこの目的は利他主義にもとづいているのだ。

  • h10-図書館2022/05/06ー期限5/20 読了5/7 返却5/8

  •  ジャック・アタリ氏はアルジェリア出身のようで、アフリカ・サブサハラ地域の動向を加味して論議を組み立てていただけるのは幸いでした。

     しかし、ロシア、中国、インド、南米といった地域には必要なだけの焦点があたっていない。
     というか、今回のロシアウクライナ侵攻の道筋を正確に予見されているあたりを読むと、本当は情報あるけど、書いてないだけなんじゃないか、と疑ってしまいますね(笑)。


     確かにアタリ氏が述べるように、もう台本は書かれていて、上演を待つばかりなのかもしれない。
    「「自分自身ができるかぎり高貴な生活を送りながら世界を救う」

    このような徳治主義では、刻々と変っていく現実には歯が立たないのではないかなと危惧します。

    また、アタリ氏がよく述べる
    「自分自身になれ」という言葉ですけれども。
    私は最近禅に凝っているんで「そのおっしゃっている『自分』てなんですかね? ここへ出してみてくださいよ」と言いたくなってしまう。
     自分が口で号令すれば、みんながとたんに「自分自身になれる」というお考えなのだろうか。

     言いたいことはわかるが、それは簡単なことではない。
    長い長い自己治癒のプロセスを経なくてはならない。そんなことをしている間に、状況は刻一刻と変わっていく。それでもやはり、そこから始めなくてはならないのかなと思う。

     しかし、読みようによっては、この方「大義のために死ね!」とおっしゃっているようで、危険な感じもします。

  • 2017年初版、私は2023年に手に取り読んだ。
    その時すでに、2030年までウイルスの発生とロシアウクライナ侵攻を予見していたことに驚いた。

    どうも中々頭に残らない内容で、この本の面白いところは、20%くらいしかない印象だった。

    この人の未来予測は、参考になる。

  • この本を読んで、社会的な発言が記載されている本を多く読むようになった。まだ自分自身がどのようなものなのかわからない。積極的な生き方で人生を送ることを触発される内容であった。
    〇すなわち、世界の最良の部分を引き出すためであり、われわれ全員が自分自身になるためである。
    〇自分自身の人生を大切にすることだ。自分の人生を決定するのは他者だなどと考えてはいけない。自分は唯一無二のつかの間の存在であることを意識すべきなのだ。
    〇自分の人生に意義をもたせるつもりなら、そして余生を楽しむだけの暮らしに甘んじるつもりがないのなら、世界を理解すべきである。
    〇2016年、世界中で600以上の大学が4,200のムーク(インターネット上で誰もが受講できる講義)を開講しているといわれる。
    〇インターネットが提供する健康管理サービスは統合化が進み、電子カルテによって情報の共有が自動化され、物理的な距離はあまり問題にならなくなってきている。
    〇国際移民の38%は途上国から途上国への移住であり、34%は先進国で暮らすために途上国を離れた人々である。
    〇とくにサヘル地域(おもに、マリ、ニジェール、チャド、中央アフリカ、ブルキナファソ〔サハラ砂漠南縁部に広がる半乾燥地域〕)は、合計特殊出生率が6から7を維持する世界唯一の地域である。
    〇難民のおよそ86%は、途上国が受け入れている。
    〇従来型の農業システムでは、人口密度が平方キロメートル当たり40人を超えると、農地の潜在能力が破壊される。ちなみに、サヘル地域の人口密度は、すでに平方キロメートル当たり150人を突破したところもある。
    〇種子市場は、モンサント─バイエル社、デュポン社、シンジェンタ社による寡占状態であり、種子の特許の50%以上はこれら三社が保有している。
    〇2015年に生まれた女性の平均寿命は、日本人なら86.8歳、シオラレオネ人なら50.8歳である。
    〇このような状況は深刻な危機をもたらす。歴史を振り返ればわかるように、中産階級がプロレタリア化すると反乱を起こす。彼らはソーシャル・ネットワークで富裕層の豪奢な暮らしぶりを目の当たりにし、著しい格差を容認しなくなる。「激怒」の社会構造の原動力はおもに中産階級に宿るのである。
    〇少数の企業がメディアを経営するこうした傾向は、他の西洋諸国にもみられる。たとえば、イギリス(三つの企業が日刊紙の70%を傘下に収める)、オーストラリア(二つのグループが日刊紙の90%を経営)、フランス(十数社でほとんどの大手メディアを所有)である。
    〇大きく発展した民主主義は、10年ほど前から後退している。民主主義体制の国は多数派ではなくなったのだ。実際に今後、民主国で暮らすのは世界人口の40%だけである。
    〇自由を断念することなく「大惨事」を回避するための二つの方法は、一つめは、市場が解決してくれると期待し続けること、二つめは、人類の存在意義を維持することである。
    〇今から2030年までに、経済成長と社会調和が必要である。
    〇源泉が変化するのはほぼ間違いない。
    〇2030年、人類の三分の二は都市部で生活する。
    〇都市化は経済成長の要因でもある。
    〇新たな道具(機械学習、深層学習)により、予測モデルはより効率的かつ詳細になり、知識および医療分野は次第に自動化される。人間は機械と会話するようになる。
    〇ようするに、技術進歩と生産年齢人口の増加並びに中産階級の急激な増加が組み合わされば、経済成長の好循環が再スタートすることが出来る。
    〇東アジアと南アジアでは、女性の人口は男性より1億6000万人少ない。女性不足は、とくに中国、インド、パキスタン、バングラディシュで深刻化し、2030年には2億3400万人になる。
    〇先進国では男性より女性の人口のほうが多くなる(その理由は、女性のほうが長生きだから)
    〇海洋に漂うゴミの量は、現在の魚5トンにつきゴミ1トンの割合から、2025年には魚3トンにつきゴミ1トンにまでになる。
    〇2030年ごろまでに大気中の温室効果ガスの濃度は37%増加する。そのころには対流圏オゾンの濃度の上昇によって早死にする人の数は、2000年と比較して四倍になっている
    〇2050年までにロシアの大気には、そうしたメタンガスの20~30%が放出されると予測されている。
    〇気候変動は、ロシア、カナダ、ウクライナにはプラスの影響をもたらす。
    〇ようするに、世界の食糧事情は2040年ごろに最盛期を迎え、その後は悪化の一途をたどるのだ。その結果、農産物価格は急騰する。
    〇2030年には、技術進歩によって現在の雇用の半数以上は失われるだろう。まずは単純労働がなくなる。だが、これを埋め合わせるだけの雇用は創出されない。
    〇オートメーション化が難しいのは、とくに医療や教育の分野の職種である。
    〇経済成長が乏しければ、西側諸国の住民の70~80%の所得は、2030年ごろまで停滞ないし減少するはずだ。
    〇個人の自由が行き過ぎると、個人的な楽しみが際限なく正当化される。
    第一に、次世代に自由を保障するためなら、自分の命をなげうってでも成し遂げようとする者は現われなくなる。
    〇医療は予防医学や公衆衛生を犠牲にして、個人の健康を守る役割を担うようになる。
    〇最後に、生命を最大限に優先するようになるため、とくに物事の探求に際してわずかなものであれ、リスクは一切認められなくなる。
    〇2030年のアメリカの公的債務のGDP比は116%、日本は264%、ユーロ圏は97%だろう。公的債務の膨張により、金融関係者には巨額の資金が供給されるため、資産価格は上がり、収益とは関係なく急騰する〔バブルの再発〕。
    〇民主主義に対する批判の声は次第に高まり、ついに民主主義は否定される。なぜなら、民主主義は意義を失い、市場は制御不能に陥るから。
    〇でも深層Web〔通常の検索エンジンでは収集できない情報サイト〕でブランド品の設計図を手に入れて模造品を作る。
    〇独自の医薬品や麻薬を合成し、武器を製造する。
    1. 中国では、不動産部門、公営企業、規制の対象外の金融業者の借金バブルがはじける。
    2. 保護主義の激化によって危機が発生する。競争と不況に直面し、保護主義と国家主権主義に閉じこもる国が増える。
    3. ヨーロッパの危機は、次のように展開する。イタリアやドイツの銀行システムが崩壊する、あるいはユーロ圏の国が自国通貨への回帰を問う国民投票を行なうため、それらの国から預金が流出する。
    4. 日本はすでにマネタイゼーション〔日銀の国債買い入れ〕を積極的に行なっているからであり、また、人口に占める退職者の割合が増えるため(彼らは生活のために預金を取り崩す)、今後五年の財政収支は赤字で推移する。
    5. アメリカの金融危機は、アメリカ企業を含む企業に対してきわめて投機的なポジションで投資するシャドー・バンキング・システムの主要プレーヤーの破綻によって引き起こされる。
    6. 原油価格に絡む危機は、テロ集団や海賊、さらには原油価格を1バレル当たり100ドル以上で推移させようと企む国が、ホルムズ海峡やマラッカ海峡を閉鎖することによって生じる。
    〇人類を全滅させる大惨事は他にもたくさんある。それらは2030年以前に明らかになるだろう。たとえば、数十億人の人々が水不足に襲われる、大勢の人々が命を落とすまで治療法のわからない新型ウイルスが発生する、地球温暖化が予想を上回る速度で進行する、遺伝子工学の実験室で取り返しのつかない失敗が起きる、人工知能が人類を消滅させる決定を下す、狂った武器商人が(政府あるいは民間の)顧客に掘り出し物の兵器を使うようにそそのかすなど。
    〇民主主義が機能するのは国内だけであるため、民主主義はまもなく幻想になると覚悟しておく必要がある。そして民主主義と市場は近視眼的な要求によって逸脱するかもしれないと心得ておくべきである。
    〇楽観的であっても、悲観的であっても、あきらめても、ナイーブであってもいけない。熱意をもって取り組むのだ。
    〇われわれは、現代を席巻する利己主義、貪欲さ、野蛮さなどに代わる、利他主義、共感力、優雅さの倫理を次世代の利益に活かすために、死ぬ瞬間まで必死になって闘わなければならないのだ。
    「自分自身ができる限り高貴な生活を送りながら世界を変える。」
    1.自分の死は不可避だと自覚せよ  誰もが考えたくないことを心にとめておく必要がある。すなわち、自分は唯一無二の存在である、この世は諸行無常である、自分の人生をよりよくするのは大切なことである、今現在を最期だと思って生きる、堕落、侮辱、束縛、疎外などに対して、健全な怒りをぶつける、誰もが暮らしやすい世の中になるための最良の道筋を残しておくために全力を尽くす、などである。
    2.自己を尊重 自分自身のことを真剣に考えろ  この世において各自にあてがわれた時間は少ない。だからこそ、その時間を最大限有効に利用しなければならないのだ。意義のないことや、凡庸なことはすべきではない。非常に高度な野心が必要であり、自分でなくてもできるようなことは、仕事でもプライベートでもなすべきではない。なぜなら、すべての人生はその本質において唯一無二であり、その成就においても同様だからである。
    3.変わらない自分を見つけろ  多様な生き方が可能であり、またそうした生き方が望ましい。だが、誰もが何よりも大切にすべき不変的な価値観をもつ。それは祖先から受け継いだものや、自己の価値観の寄せ集めから生じる。
    4.他者が行なおうとすること、そして世界の行方について、絶えず熟考しながら自分自身の意見をまとめろ  その前提として、先入観なく、好奇心旺盛にして注意深くなければならない。共感力(つまり、偏見にとらわれず、他者の利益を考慮しながら彼らの立場に立つ能力)は必要不可欠だ。共感力とは、たとえ他者の行動が利己的、不誠実、敵対的だと思えても、彼らの価値観、不変的なもの、探求しているものを見出し、なぜ彼らがそのように行動するのかを理解しようとすることである。
    5.自分の幸福は他者の幸福に依存していることを自覚せよ  自分と世界は相互依存していることを自覚するのだ。
    6.複数の人生を同時かつ継続的に送る準備をせよ  われわれは死すべき存在であり、あの世の暮らしのことはわからない。また、いつの日かこの世で輪廻転生するかどうかも定かでない。野心と勇気をもって堂々と大胆に、複数の生涯プロジェクトをすぐにでも構想するのだ。それらのプロジェクトはできる限り、独創的かつ誠実なものであることが必要である。
    7.危機、脅威、落胆、批判、失敗に対する抵抗力をつけろ  それらに対する抵抗力を身につければ、レジリエンス〔へこたれない精神〕と勇気が得られる。他者に責任を押しつけることなく、自身の失敗から教訓を導き出すことができるのだ。屈辱、不満、疎外に対する憤懣を決して忘れてはならない。常に本質に向かって歩むのだ。すなわち、自分自身になるのである。
    8.不可能なことはないと思え  思いもよらないことを望め。ありそうもないことを考えろ。待つのではなく行動するのだ。どんなプロジェクトであっても、自分の取り組むプロジェクトが実現不可能だと認めるべきではない(ただし、科学的に反論できない場合や、道徳的に正当化できない場合は別である。)
    9.実行に移す  これまでの八つの段階をマスターしたなら、自分自身で、自己のために、自分にとって意義のある(複数の)プロジェクトを、理性を働かせ、他者の意見に耳を傾け、謙虚な姿勢で実行に移すのだ。
    10.最後に、世界のためにも行動する準備をせよ  本書の分析に触れた結果、「あきらめた評論家」のような投げやりな態度になってはいけない。無数の「自分自身になる」が統合すれば、世界は変わる。なぜなら、彼らは当然ながら利他主義者だからだ。

  • 読後の感想ですが、正直8割くらいの中身は頭の中に残りませんでした。第1章は世界の動向についてかなりのトピックを網羅しながら、次から次へと数字が紹介されますが、まるでAIがネット上から数値を集めて書いたような無機質な文章でした(これはアタリ本人が書いたのではなく、アシスタントが数字を集めて書いたか、本当にAIに書かせたのではないでしょうか)。第2章の解説にきて、ようやくジャック・アタリの匂いがしてきます。つまりアタリ本人の主張が明確になるということで、ここは興味深く読みました。そして3章になると、また数字の羅列がはじまり、無機質な文章が始まりますが、2章の主張も織り交ぜながら、という意味ではまだマシかもしません。そして第4章では明るい未来を創るために人々が利他主義になる必要があること、そして「利他主義を通じて自己実現を図る」ための取り組みについても提言されていました。

    アタリとしては読者の危機意識をあおるために延々と数字を羅列しているのかもしれませんが、その部分はもっとページ数を減らし、むしろ自分の主張・提言をより明確にするようページを割くべきでしょう。全般的に本書の構成が雑という印象はぬぐえず、またアタリの提言である「利他主義を通じて自己実現を図る」についても、個人的には方向性を気を付けないと危険な全体主義への道筋もあり得るとは思いました。アタリも当然それは認識していると思うのですが、であるならもっとページを割いて丁寧に解説してほしいというのが感想です。

  • 経済、医療、農業、政治、環境、テクノロジー、金融等々、現状の把握と2030年の予測をする。
    明るい未来もあるが、かなり危機的なシナリオも考えられると言う。
    未来をつくるのは我々だし、その負の側面を回避できるのも我々だ。

    危機的なシナリオとして、
    2030年、民主主義に対する批判の声は次第に高まり、ついに民主主義は否定される。なぜなら、民主主義は意義を失い、市場は制御不能に陥るからだ。
    たとえば、民主主義の社会では、長期的な課題に対処できない、不人気な決定は下せない、技術進歩を一部の人のためにしか利用できない、気候変動に対処できない、移民を制御できない、社会の調和を保てない、国民の声を広く反映させられない、ましてや将来世代を考慮できない。また、富や権力の偏在を解消できない、市場の力を緩和できない、雇用を創出できない、中産階級の生活レベルを維持できない、安全を保障できない、人々の憤懣に意義を見出すことができない、激怒を制御できない。いわゆるエリートと呼ばれる人々が再生産され、彼らは自分たちの利益に応じて物事を決定する。
    激しい暴力や宗教原理主義に基づくラディカルなエコロジーというイデオロギーが登場する。民主主義が否定され、全体主義が復活する。脱宗教や原理主義を口実に民主主義と決別する準備が整う。

    誰もが安全を買い求める超監視社会では、あらゆるテクノロジーが利用され、安全を確保するために自由は忘れ去られる。民主主義は「民主主義を装った独裁制」という段階を経て独裁制へと移行する。
    こうした無秩序に対し、暴力、とくに公権力が振るう暴力は拡大し続ける。国は財政難を理由に教育費と医療費を削減する傍ら、民事と軍事の双方に利用できる数々のテクノロジーによって過熱する軍拡競争にしのぎを削る。
    1.中国ではバブルがはじけ、株式市場が暴落、人民元が大幅に切り下げされ世界の為替市場は危機に陥る。クーデターが勃発、最悪の場合、中国は国境を封鎖し、保護主義という大波を引き起こす。中国の製造業は崩壊し世界経済は危機に陥る。
    2.保護主義の激化によって危機が発生、保護主義と国家主権主義に閉じこもる国が増える。特にEUと米は、移民流入防止の為に国境を閉じ国際貿易は大きな危機を迎え、世界経済は崩壊する。
    3.伊や独の銀行システムが崩壊、あるいはユーロ圏の国が自国通貨への回帰へと向かい、それらの国から預金が流出。それが全世界へと波及する。
    4.巨額債務が維持できなくなり金利と物価が急上昇する。円は暴落し現金や金への逃避が加速して、世界経済か崩壊する。
    5、米金融危機は、投機的なポジションで投資するシャドー・バンキング・システムの主要プレーヤーの破綻によって引き起こされ、金融システムが崩壊し世界的な危機が発生する。
    6.テロ集団や海賊、さらには原油価格を1バレル当たり100$以上で推移させようと企む国が、ホルムズ海峡やマラッカ海峡を閉鎖することによって原油価格に絡む危機が勃発、世界経済に壊滅的な影響をおよぼす。

    世界大戦を勃発させる6つの起爆剤
    1.東、南シナ海における中国の挑発的行動、北朝鮮の軍人アクション。印中間の大河川の水資源を巡る衝突
    2.ウクライナを巡ってのロシアとNATO(トルコ含) 、シベリアの管理を巡っての中国(温暖化で肥沃な地となる)との争い。
    3.印パキ紛争の拡大(原理主義政権では特に可能性がある)
    4.シリア,イラク,サウジ,エジプト発の危機。原理主義者政権による政情不安定化、水を巡る争い等。
    5.サヘル地域やソマリア地域発のテロ組織活発化、大量移民発生に伴う混乱。
    6.イスラム国引き金の西洋対イスラムの全面戦争。

    危機が迫っていると自覚することが絶対に必要だ。そうした自覚こそが、危機を回避するための唯一の方法なのだ と言う。

    それに対しての姿勢では色々と述べているが、個々人にとってはあまりにも非力であり、例えば国連がとるべき姿勢まで飛躍されると、現実味が湧かなくなってしまった。

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著者プロフィール

ジャック・アタリ(Jaques Attali)
1943年アルジェリア生まれ。パリ理工科学校を卒業、1981年大統領特別顧問、1991年欧州復興開発銀行初代総裁。1998年に発展途上国支援のNPOを創設。邦訳著書に『アンチ・エコノミクス』『ノイズ』『カニバリスムの秩序』『21世紀の歴史』『1492 西欧文明の世界支配』など多数。

「2022年 『時間の歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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