アリになった数学者 (たくさんのふしぎ傑作集)

著者 :
  • 福音館書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (48ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834084344

感想・レビュー・書評

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  • ほんものの3、確かに見たことがないなあ。
    人間の数学者にとって、数は存在しないものだ。その存在しないものを、言葉も宗教も人種も何もかも違う人同士が共通のものとして理解しあっているのだと、まず思い出させられてはっとする。

    そしてアリにとっては、「数はまわりからてらされ、まわりをてらしかえしながら刻々と変化しつづけている、生きた数」らしい。群れ全体のからだで感じるもので、もっとずっと広くて自由なもの。
    アリになったことがないので真実のほどはわからないが、なぜだかとても納得する。確かに、生きものにとっての数とは、本来そのように生命ぜんたいで理解するものなのかも知れない、と。

    アリにとっての数を、いつか理解したいと思える素敵な本だった。

  • 「数や図形がそもそもどういうものなのか」を探求するために、著者はアリとなって考えていく。
    私にとって、その深い未知の世界の、ほんのほんの一片をのぞき見た感じ。
    そうか、数学者って(森田さんがなのかな)私が当たり前だと思っている概念を、全く別の視点で無の状態から考えていくんだと初認識した。

    “アリに数がわかるだろうか。
    アリにはかぞえるための指がない。
    たくさんのものを同時に見わたす視力もない。“
    それならばと、アリになり、アリたちに話を切り出すとの、発想!

    アリにとって、「数ははじめから生きている」
    「同じ 1 にも、色や、輝きや、動きがある」
    「アリには折ってかぞえる指はないが、群れの中の一匹ずつが、群れ全体の器用なゆびのように、世界のすみずみを探索している。」

    「自分の知っている数は、生きた数のほんの小さなかけら」なのだとしたら、「その世界は広くて自由」だけれども、それはもうとてつもなく無限だ。
    数学者は、それをずーと考えている。
    すごいなぁとしか言葉がでないけれど、同時にワクワクする。
    数学苦手な私だけれど、数学は面白いと思った。
    この本に出会った子どもたちはどう感じるのだろう。とても興味深い。

    ずーとずーと考え続けたら、数や図形の心がわかるようになるのだろうか…

  • 人間の考えてることは一方向でしかないことが改めてわかる
    脇坂さんの絵もいいなぁ。

  • 2017.8.5
    ちょっと感動する。数の話。数学の話。頭を使って考えさせられながらも物語がある。数学の世界おもしろそうじゃないか。これを絵本にしたのがすごいし、よかったよなあ。子どもはどう感じるんだろう。もう少し大きくなったら読ませてみたい。

  • アリは計算しているのか
    面白い思考実験だ。

  • 子供向けにしては結構難しいことが描いてあると思うが、分からないながらも抽象概念に触れてみるということはたまにはいい経験になるんじゃないか。世界の見方は一様ではなく、見る立場によって変わってくるという感覚が少しでも伝わればいいと思う。

  • 人類の数学、蟻の数学。
    その差異を例に、ひとがひととしてあるがための数学を探していく物語の、たぶんプロローグ。

    どの学問でも同じだと思うよ。人間という存在の生きるかたちから生まれて、やがてその生々しい息吹の届かない思考域で理屈を展開するようになる。それでもなお、根はひとの生きるこの世界に張っていて、いつかはひとの世に還る(あるいは還ることを夢みている)。
    もしも人間ではない生物が学問を追究していくのなら、その生きものの生きるかたちに沿った発想と展開になるだろう。自分たちの生きていく世界を認識する以外の認識の仕方は、神ならぬ存在には決して手にはいらないのだと思う。もしかしたら神にだって、神の目に映る以外の視野で世界を認めることはできないのかもしれないけどね。

    鴉はカアと鳴く。その鳴き声にはひとの脳では理解できない、気づきもしない情報が含まれているのかもしれない。

    人類は生命を定義する。しかしその定義からは洩れている何らかの意思と生命を持った「生物」はあるのかもしれない。どこにでもあるような石には、それとも水滴には、あまりに私たちとはかけ離れていて感知することもできない「意思」や「生命」が宿っていて、彼ら石は、水滴は、彼らの定義で「生きている」のかもしれない。

    それぞれにそれぞれのものさしが存在していて、そのものさしで各自は世界を認知している。そのものさしがある限り、いくらでも世界をはかることができる。微生物を、素粒子を、宇宙の始まりを、経済の行方を、ひとの心の揺れ動きを、ひとのあるべき理想を、言葉の成り立ちを、生命の起源を、私たちは私たちのものさしがある限り、理解していくことができる。
    しかしそのものさしを当てることのできない事象を、私たちは理解するどころか、きっと察知することもできないのだ。

    「宇宙は数学という言葉で書かれている」(ガリレオ)

    私たちが理解できる宇宙は私たちの数学で書かれている。
    私たちは私たちの理解できる数学という扉を通してのみ宇宙にアクセスできる。

    それはきっと蟻の理解できる宇宙とはなにもかもが違っているのだろう。
    けれど同じ宇宙の断面なのだ。

  • 『アリになった数学者』(福音館書店) - 著者:森田 真生 - 森田 真生による自著解説 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS
    https://allreviews.jp/review/2618

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    1とはなにか? アリたちに導かれ新しい数の世界へ。
    数や図形を便利につかう方法を教えてくれるのが「算数」。「数学」は、そもそも、その数や図形とはなにか? と考える学問です。そんな「数学」の世界を探求する数学者は、ある日気がつくと、アリになっていました。数学者は、アリたちと数学について語りあいたいと願います……。さて、アリたちに人間の数学、「数」は理解されるのでしょうか? 数を通してこの世界をどう理解するか。アリたちが導くあたらしい数の世界へ。
    https://www.fukuinkan.co.jp/book/?id=5757

  • 【図書館・新刊棚】アリの世界の数は動いていて生きている!アリには人間の数学は分からない。それと同じくらい人間にはアリの数学が分からない。読んでいて、所々でヨシタケシンスケさんが頭に浮かんだ!発想って自由なんじゃないかと。この絵本はいろんなことを考えさせられると思います。

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著者プロフィール

森田 真生(もりた・まさお):1985年生まれ。独立研究者。京都を拠点に研究・執筆の傍ら、ライブ活動を行っている。著書に『数学する身体』で小林秀雄賞受賞、『計算する生命』で第10回 河合隼雄学芸賞 受賞、ほかに『偶然の散歩』『僕たちはどう生きるのか』『数学の贈り物』『アリになった数学者』『数学する人生』などがある。

「2024年 『センス・オブ・ワンダー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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