ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集 (福音館創作童話シリーズ)

著者 :
  • 福音館書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834084573

作品紹介・あらすじ

きみはいつものように、あけっぱなしの玄関から、どんどんぼくの部屋にあがりこみ、ランドセルをおろしながらこういった。「せんせいが、おまえは本を読めっていうんだ。ことばがなってないから」。ぼくは一冊の詩集をきみに手渡す。「ここんとこ、読んでみな」。詩は、おもしろい。そして、詩はことばを自由にし、ことばはわたしたちを自由にする。20篇の詩を通して、詩人斉藤倫と楽しみ、考える、詩のことそしてことばのこと。

感想・レビュー・書評

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  • ーさあ、きょうは、どんな詩を読もうかな。
    きみと、ぼくは。
    えいえんに、ながい、もうすこしの、あいだ。 (p.158)

    タイトルに惹かれて手に取った本。

    小学生の「きみ」と、大人の「ぼく」とで一緒に味わう詩の世界。
    "ただしいことばってなに?""自分がなにをしゃべっているのか本当に意味がわかってる人なんていない"。
    言葉について、詩について…。「きみ」と「ぼく」が語り合い、詩を読み合い、考える。
    詩集でもあり、哲学的な要素を含んだ物語でもある。
    こういう雰囲気の本は好き。


    ーもう知ってるとおもうけど、くちずさむだけで、だいじょうぶだ、とおもえるような詩が、せかいにはたくさんある。
    その詩たちが、いつか、きみを、みちびくような、気がする。
    (p.153)

  • 図書館本。長女「この本、面白い。分からないこともたくさんのあるんだけど。」と。詩を散りばめて、僕と大人(お父さんの友達)との会話を軸に話が進みます。この本の全部を教えない、同じ目線で物事を見ようとする大人に育児の原点があるように思います。良書。すごく良書。そして、長女とフェーズが合ったことも至福です。

  •  久しぶりの斉藤倫さんの本。『ポエトリー・ドッグス』を読んた時と比べて、わからないことを気にせず、楽しく読めている自分がいた。人として進んだのか、後退したのかよくわからないけれど、以前の自分とはちょっと違うところに今いるような気がした。変化が無いようで、衰えることは目立ってきた今日この頃なので、嬉しい変化だった。

    最後のほうは、何故か泣きそうな気持ちになった。主人公の人を思う優しさを感じ取って、感動したのかもしれない。そんなに泣かせに来ている本ではないんだけれど…

    主人公の大人であるぼくの家に、少年が度々遊びに来る。その少年と言葉に関する話などしなから、毎回詩や俳句を紹介する。

    その少年の父や母と、主人公は深い関係があったらしい。たまにそのことに触れる記述が個人的にとても気になり、いつしかそれを軸としてこの本の世界を捉えているようになってしまっていた。それが作者の狙いなのか、狙いから外れてしまっているのかはわからないけれど。

    本の題名は、最後まで読むと、大体わかるような感覚があるけれど、何度読み返しても味わいが出てくる。この本当のような嘘のような少年との時間が、読者の心の中にしっかりと存在して、表紙の絵が時空を超えてつながっている扉のように生き生きと見える出てくる。
    内容も、題名も、表紙も、最高に素晴らしい一冊だった。

  • 余白があって、それぞれの解釈を歓迎されているようだった

    私は詩を読んだことがほとんどなく、小学校の教科書で習ったくらい。
    だから、想像を膨らませることすら難しく、音を楽しむくらいになってしまったけど、知りたいなと思った。詩の世界を楽しめるようになりたいと思った。

    ハッとする言葉も多くて、1番印象的だったのは、夏を特別な季節にするために、アイスはとけるのではなく、しなないといけないという話。

  • ことばとことばにならないの中間とか、
    そんな話を小さなこに、
    できるおとなになりたい
    じっくりかみしめる本

  • 2024.3.3

    深いい!!

    “いちどしかないことと、くりかえすことは、どっちがいいんだろうね。二回めがあるから、これが、一回めだった、って気づくんだよね。
    もし、きょう枝豆を食べなくて、こないだ、ふたりで枝豆をたべたことが、じんせいでたった一回のことだったとする。そしたら、じんせいで一回しかなかったって、気づくかな”

  • 詩も最高だし、詩が読みたくなるお膳立ても素敵だし、え、このひとは誰なの(もしくは誰でもないの)?と思わされる余白も良いし、推し詩人の詩も出現しうわほってなった。★★★★★では足りないおもしろさ



  • 国語の授業では苦手でした。

    意味がわかるもの、リズムが面白いものは好きですが、何のこと?って思うものの方が多くて。

    この本は、「ぼく」と「きみ」のやりとりが面白く、また、共感するところも多く、こんなふうに詩をとらえることもあるのか、と思いながら読みました。

    「ことばは、ことばになる前は、ただのおとなんだ」
    「それぞれのことばには、それぞれの、ひびきやリズムがある。あたまのなかで、ぱっともじにおきかえて、いみにしてしまうから、きこえなくなるんだよ」

    そしてまど・みちおさんの「きりん」

    かわいらしく、アフリカの草原の景色が目に浮かびました。

    後半は、はっきり書かれてはいないけれど、「死」を意識させられました。

    石垣りんさんの「崖」は人間の、
    金子みすゞさんの「大漁」は鰯(生き物)の、
    それぞれの命について。

    「じっさいにあったことや、現実にあったこととはべつに、ほんとうにあったこと、が、ある。」

    本の中の「ぼく」と同じく、考えさせられました。

    小学校高学年以上、そして子どもに関わる人にお勧めします。

  •  詩人のおじさんのところに、近所の小学生の男の子が、ちょくちょく顔を出し、その都度、なにげない日常の出来事を通じて、「ことば」の意味や、その背後にかくれた心情を考察し、参考となる「詩」を教えながら、子どもの成長を垣間見るという体裁をとった、詩のアンソロジー的なお話。

     毎度、詩人が何か料理を作ろうとするときに、男の子がやってくるのがおかしい。

     平易な言葉で、つづられた本文は、子ども向けなのだろう。
     とはいえ、子ども向けと侮ってはいけない。思索の内容は、実に深く、哲学的でもある。日常の「?」から解きほぐし、ものごとの真実に近づこうとする試みが、似ている。

    「ほんとうのことが、ちらっとでも見えたら、それは、〈いい詩〉っていえるんじゃないか。」

     と、詩人は少年に教える。
     「?」に対し、問いを発し、なにかに喩えたり、— 喩えることは、ものごととものごとを繋げ、ひとつにする行為だ ― 詩作のアプローチを通じ真実を見ようとする。

     そうか詩と哲学は、近いんだな。

  • 柔らかい文体に、どこか懐かしさが込み上げてくる。夏の場面もあるし。いつまでも読んでいたい感覚になる。
    胸に刻みたくなることばがたくさん出てきたな。でも、忘れてしまうんだろうな。でも、それでいいんだろうな。

    こういうのを、「エモい」というんだろうな。

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著者プロフィール

斉藤倫 詩人。『どろぼうのどろぼん』(福音館書店)で、第48回児童文学者協会新人賞、第64回小学館児童出版文化賞を受賞。おもな作品に『せなか町から、ずっと』『クリスマスがちかづくと』『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』『さいごのゆうれい』(以上福音館書店)、『レディオワン』(光村図書)、『あしたもオカピ』(偕成社)、『新月の子どもたち』(ブロンズ新社)』絵本『とうだい』(絵 小池アミイゴ/福音館書店)、うきまるとの共作で『はるとあき』(絵 吉田尚令/小学館)、『のせのせ せーの!』(絵 くのまり/ブロンズ新社)などがある。

「2022年 『私立探検家学園2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

斉藤倫の作品

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