デジタル・デビル・ストーリー 女神転生 (fukkan.com)

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  • 復刊ドットコム
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  • Amazon.co.jp ・本 (447ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784835448848

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  •  連綿と続く、デビル・ストーリーの原典。
    『真・女神転生』シリーズ、『ペルソナ』シリーズなどに波及した悪魔と人間が織り成す物語、『女神転生』の原作小説。
    『女神転生』の本来のシステムは、プログラムを用いて悪魔を召喚するというものだった。この設定は『デビル・サバイバー』や『デビル・チルドレン』でも似たようなものが流用されている。また、仲魔という概念はゲーム固有のものであり、小説では「ケルベロス」以外、仲魔らしい仲魔は現れない。だが仲魔という概念がなくとも、「プログラムで悪魔を呼び出す」という設定にとても惹かれる。
     物語は主人公、中島朱実の復讐譚から始まり、更には東京を中心に日本を舞台にした悪魔との死闘の物語となる。また、タイトルである『女神転生』は、日本神話の女神であるイザナミの転生体である、白鷺弓子をヒロインに当てていることに由来する。中島は弓子、イザナミと協力し数多の悪魔を打倒するも、やがて悪魔たちは人間を取り込むことで勢力を増やしつつ、中島の処刑を目論むようになる。最終的には、悪魔たちは自らの手を汚すことなく、人間たちを操り抜くことで中島の殺害に成功する。悪魔との戦いの物語でありながら、「人間の敵は所詮人間である」という命題、また「悪魔に力を借りることの恐ろしさ」、「人を殺めた罪の重さ」などを主題に物語を展開している。
     暗い物語ではあるが、悪魔と言う題材を活かしつつ、人間の心の闇を描き出すことに成功している作品だと言えよう。
     キャラクターに関しては、人間、悪魔含めキャラクターを立たせることに成功している。また、ジュブナイルノベルであるものの、非常に大人の登場人物が多いことも特徴である。
     ストーリーに関しては政府や宗教団体、数多の人間たちから死後の世界、魔界をも巻き込んだ壮大な物語を形成している。更に、物語の根幹を成す設定、悪魔召喚プログラムがとてもユニークである。世界観に関しても、悪魔召喚の魅力が非常に高く、人が多量に死ぬダークネスさとマッチしている。
     テーマに関しても、悪魔の怖ろしさを描きつつ、人間の怖ろしさも同様に描いている。
     文章に関しては淡々とした筆致で、恐怖や混乱、狂気や悲劇を描き抜いている。
     台詞関しては深い台詞や紋切り型の台詞などはなく、ユニークな台詞もない。ただただ人間の動によって、ストーリーから世界観、テーマまで描いている。
     彼の有名な『女神転生』シリーズの原作を読んでみたが、なかなか面白い小説だった。この原作に数多のデジタル・デビル・ゲームを数多に生み出す魅力があったのは、間違いの無いことだ。デモニッシュかつダークネスな内容だが、残酷劇で終わらない凄みと重みのある小説であった。

    キャラクター:☆☆☆☆
    ストーリー :☆☆☆☆
    世界観   :☆☆☆☆☆
    テーマ   :☆☆☆☆
    文章    :☆☆☆☆
    台詞    :☆☆☆

  • ゲーム・アニメ・マンガと様々なメディアで語り続けられる、女神転生の出発地点、コンピューターを使い悪魔を召喚するという発想にアーサー・C・クラークの「発達しすぎた科学は魔法と区別がつかない」という言葉を思い出す。

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