ユーモレスク

著者 : 長野まゆみ

• マガジンハウス (2003年2月1日発売)

作品紹介・あらすじ

弟は隣家から聞こえてくるユーモレスクが好きだった。六年前に行方不明になった弟・真哉。鏡合わせに一棟を分けた隣家は、それ以来「近くて遠い」場所となった…。不在の人の記憶が紡ぎ出す切ない物語。

感想・レビュー・書評

[hinasayoさんの感想 · 2012年6月5日]

長野さん、相変わらず独特な感じのスタイルですね。
この本が学校の図書室にあったことがまずびっくり。
内容も、ミステリーかと思いきやそれほどでもなく。
激しい起伏も特に無かった気がしますが、文章があまりぎっしりした感じじゃないので早く読めますし、退屈するようなものじゃなかったです。
個人的に三の宮さんがすごく好きです。優雅、って言うんでしょうか・・・

[umeさんの感想 · 2010年6月18日]

行方不明の弟を中心に紡ぎ出す切ない物語。
女性が主人公・女性目線で話が進んでいくのが新鮮で、読み始めは長野作品を読んでる気がしなかったけど、男同士のあやしい雰囲気が出てきた辺りで「ああ…やっぱり」と思った。弟の死を受け入れる家族や周囲を淡々と描いていて切ない。

[tokoさんの感想 · 2008年11月10日]

過去をふりかえるものがたり。きょうだいってなんかいいよね。かぞくのあれこれっていたくてさびしいなぁ。なんか不思議な世界だった。なつかしい響きのある世界だった。

[きぃさんの感想 · 2008年9月30日]

今回もやはり綺麗な表紙に惹かれて。

居なくなった人を巡って、綴られていく物語。
癖があまりなく大人しめの文体だったが、面白かった。
誰にでも薦められる。読みやすいが、時間がいつもよりかかった。
身近な花や小物が出てくる分想像もしやすかったので、細かく頭の中で思い描いてしまったのだと思う。

この人は本当に「水辺」が好きなんだなぁ、と思った。
やはり、銀河鉄道の夜の「カムパネルラ」に強く影響されている部分があるのだろうか？
生きているのか、死んでいるのか。その境目を行き交う魂に魅せられているの…か。
水死体とはどんなものだろうか？

そして少し人とは異なる性癖の持ち主が数人。…そして少年。
どういう理由があって、こういう話を書くんだろう。
私は文章を読むと、そちらに気をとられてしまうときがしばしばあるが。
長野まゆみの小説を読んだあと、こんな風に感想などを書いているときは、特にそう感じる。

…しかし、少年に関しては、なんとなく理解できる気も…しなくもない（笑）

[浅葱さんの感想 · 2023年5月19日]

余韻の素晴らしい作品。
失踪した弟を待つ主人公家族と、その隣家の関わりを遠回りして見ているような作品。
ユーモレスクは雨の日をイメージするけれど、それに似た感覚を覚える。狭い部屋の中で部屋を眺めながら、外の雨の世界を思い描くような。
服飾品店の店員らしい主人公の観察もその印象を強めている。
答えはない。
姉は嫌い。好きに幸せを手に入れて、最後に気持ちまで軽くする自分勝手さが嫌い。

[みこ（みみ）さんの感想 · 2023年3月12日]

高校生以来に再読
当時読み終わっても物語からなかなか抜け出せず色々と想像したのを覚えていて、手に取ってみたけど、読み終わり予想よりさっぱり爽やかに感じるのは歳を重ねたということなのかな、としみじみしてます

[二次元研究所さんの感想 · 2020年1月4日]

4-8387-1427-0 155p 2003.2.20 1刷

[橘さんの感想 · 2017年11月25日]

とても密やかで、切ないお話でした。服飾に関するところも、長野さんの美意識が感じられて好きでした。比和と真哉と和、性別をあまり考えさせられませんでした。和はまだ学生だったので、学校生活の中では男子として暮らさないといけないのが面倒そうでしたが。人に惹かれるのって、性別は関係ないな、と長野さんの作品を読んでいると改めて思います。素敵なものは素敵。こちらにいろいろと想像させる、余白のあるところも好きな作品でした。真哉はやっぱり帰ってこないのかな。三の宮が気になる存在です。

[marurimushi112さんの感想 · 2017年8月10日]

初読みの作家さん。
これまでには読んだことのない筋書きと表現と空気感。
案外好きかもしれない。

お話としては、多少現実味が感じられない気もするけど、男同士の恋愛も半透明な中性的な雰囲気があった。
百貨店の紳士服が詳しく描かれ、へーそうなんだぁ、って感心することが多く、そこも面白かった。

『ユーモレスク』大好きな曲、おなじみのバイオリン曲になっちゃうけど、頭の中でずっと流れてる。

[morimoriさんの感想 · 2015年7月25日]

突然いなくなった弟を、いつ帰ってきてもいいように服・食器・布団・部屋を整えて、待ち続けている家族。
いなくなった時何があったのか、弟がその時思っていたことが浮かんでくる。

ネクタイの選び方って、そうなのよね～。

著者プロフィール

長野まゆみ（ながの・まゆみ）東京都生まれ。一九八八年「少年アリス」で第25回文藝賞を受賞しデビュー。二〇一五年『冥途あり』で第四三回泉鏡花文学賞、第六八回野間文芸賞を受賞。『野ばら』『天体議会』『新世界』『テレヴィジョン・シティ』『超少年』『野川』『デカルコマニア』『チマチマ記』『45°ここだけの話』『兄と弟、あるいは書物と燃える石』『フランダースの帽子』『銀河の通信所』『カムパネルラ版 銀河鉄道の夜』「左近の桜」シリーズなど著書多数。


「2022年 『ゴッホの犬と耳とひまわり』 で使われていた紹介文から引用しています。」