空中スキップ

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感想 : 40
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  • Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784838715404

感想・レビュー・書評

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  • 電車の中で読むのが気恥ずかしいくらいガーリーな装丁なのに、ときには面食らうくらい底意地が悪い想像力に満ち溢れた本。想像力が奔放過ぎて、頭の屋台組みを内側からぐいぐいゆさぶられる気持ち良さがある。

    妄想爆発なだけではなくて、どんなに奇妙な状況にあったとしても、ひとの心情が伝わってくるのもよい。アメリカの田舎が舞台だったり未成年が主人公だったりしたときの、出口のない感じは胸に迫るものがあった。

    「百ポンドの赤ん坊」、「アベレージ・ジョー」、「産まれない世界」あたりが特に良かったけれど、個人的に、「秋冬ファッション・カタログより」の、ヒロインがハイジャック犯を追い詰めるやり方が気持ち悪くて真っ当でツボだった。

  • ブラックでシュールな世界。
    行き過ぎず、物足りなさもない、ちょうどいい世界。
    それらを物語る才能に感心するばかり。

  • 好きです。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「好きです。」
      岸本佐知子が訳す本は全部読みたいと思ってしまうくらいツボなのですが、中でもジュディ・バドニッツの奇妙さは味わい深いですよね。...
      「好きです。」
      岸本佐知子が訳す本は全部読みたいと思ってしまうくらいツボなのですが、中でもジュディ・バドニッツの奇妙さは味わい深いですよね。
      で、、、ジュディ・バドニッツの翻訳が「文學界」(文藝春秋)に昨年から連載されていて、早く一冊に纏まらないかと待っています。
      2013/06/18
    • marikoさん
      私も岸本佐知子大好きです。
      その入り口がこの「空中スキップ」でした。
      新刊、楽しみですね。
      私も岸本佐知子大好きです。
      その入り口がこの「空中スキップ」でした。
      新刊、楽しみですね。
      2013/06/25
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「私も岸本佐知子大好きです。」
      M.ジュライ、L.デイヴィス、J.ウィンターソン、ショーン・タンと思いつくまま書いたら一杯出てくるヨ。。。
      「私も岸本佐知子大好きです。」
      M.ジュライ、L.デイヴィス、J.ウィンターソン、ショーン・タンと思いつくまま書いたら一杯出てくるヨ。。。
      2013/07/06
  • 処女短篇集。23篇収録。
    多分このあたりに着地するんだろうなぁなんて思っていると、もう一跳ねあって、驚くやら楽しくなるやら。シビアだけれど、優しいまなざしも感じられる。シュールで、どこかせつなくて、後口はよく。癖になりそうな味わい。
    どの作品もいいのだけれど、とんでもないことを当たり前のことのように、揺るぎない確信をもって勧めるおばたちが怖い「借り」、ガール・スカウトたち〜と思わず叫んでしまいそうになる「秋冬ファッション・カタログより」、滑稽譚なのだけれど、喧騒の後の孤独が想像されてしみじみしてしまう「アベレージ・ジョー」、ずずずず。と這いずる百ポンドの赤ん坊のイメージは圧倒的だけれど、最後、子どもの柔軟な精神を描いて、この子は大丈夫と安心できる「百ポンドの赤ん坊」、産まれない世界の後に訪れた産まれる世界を描くことで、明るいやるせなさを感じさせる「産まれない世界」、赤ん坊屋の仕事ぶりが本当に魅力的に描かれた「ハーシェル」あたりが特に。
    物語がするするっと心に入ってくるのは、翻訳のうまさもあるのかも。
    ――Flying Leap by Judy Budnitz

  • 装丁が綺麗な本。でもその短篇集は怖い。江國香織さんの「赤い靴」もそう思ったが、より怖い。病院の廊下で心臓を提供することを強いられたり、パンを作るように生地をこねて焼いて作り出すのは、赤ちゃんだったり。それぞれの短篇はいろいろな描き方をしてあるので、退屈しない。

  • グロテスクで摩訶不思議。そんな描写があるってわけじゃないのに、えぐみがすごい…。こんなものを書く作家がいるのか…。

  • 表紙からは想像もできないほどの
    切れ味の鋭い文章が怒涛の如く
    読者を時に惑わせる作品です。
    切れ味良好、さっくり、と。

    著者の職業経験から
    赤ん坊を扱う作品はまた
    考えさせられるものがあります。
    命がはぐくまれなくなる社会もまた
    恐ろしいものですし、
    そのプロセスがない社会もまた
    恐ろしいものなのです。

    結局のところ、人は存在自体が
    罪なのかもしれませんね。
    「借り」における主人公の母親の親族の
    手のひらの返し方といい。
    自分たちだけよければいいわけで。

    この作品に関しては
    読書の際は要注意。
    とてつもなく落ち込みます。

  • 奇想が楽しい。面白い読書体験でした。

  • 2007-2-25

  • 目次より
    ・犬の日
    ・借り
    ・秋冬ファッション・カタログより
    ・道案内
    ・チア魂
    ・アートのレッスン
    ・イェルヴィル
    ・アベレージ・ジョー
    ・飛ぶ
    ・作曲家
    ・公園のベンチ
    ・百ポンドの赤ん坊
    ・本当のこと
    ・お目付け役
    ・バカンス
    ・スキン・ケア
    ・産まれない世界
    ・レクチャー
    ・電車
    ・パーマネント
    ・ブルーノ
    ・焼きつくされて
    ・ハーシェル

    どれもこれも理不尽で不条理。
    愉快な設定のすくわれない読後感。
    これは万人受けする作品ではないだろう。
    けど、ハマればくせになること請け合いだ。

    日常と混在する非日常。
    重みすら感じる違和の正体を探ろうと手を伸ばせば、そこには何もない。
    何かは確実にそばにいたはずなのに、感じることができたのに、手を伸ばせば何もない。

    それは夢のようなもの。
    それも、悪夢に近い。
    逃げれば追いかけてくるが、受けいれるとそれは消える。
    感触だけを残り香として。

    ショートショートの感想なんて書けないよ。
    何書いたってネタバレになるんだからさ。

    でも、例えば「借り」
    母が心臓の病に倒れる。
    心臓移植をするしか助かるすべはない。
    だけどドナーを見つけるのには時間がかかりすぎる。

    母の姉たちは僕に言う。
    「あんたの心臓でどう?」
    僕の心臓をあげちゃったら、僕はどうなる?
    「そんなこと、あとで考えればいいじゃないの」
    「そもそも自分の母親の命を救うのに、どうして心臓くらいやれないんだ」

    これ想像以上に相当悲惨な話ですが、なんだかからりとしているのは僕の人柄によるのでしょうか。
    読み終わったとき笑っちゃったもの。

    世の中はシュールで不快なことにふたをしたがるけれども、たまには解放してやらないと、キレイなだけの上っ面な世界で窒息してしまうかもな。
    そんなことを思いました。

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