合理性を超えた先にイノベーションは生まれる

著者 :
  • クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784844373216

作品紹介・あらすじ

他人と違うことをやらなければ勝てない原則を忘れていませんか。誰もが知る合理的な分析手法に従って結論を出している限り、行き着く答えは似通ったものになる。平均点を超えて突出した結果を出す経営。

感想・レビュー・書評

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  • 個人的にとてもフィット感があった。
    約10年前に書かれた本だが、変化の激しいと言われる現在でも褪せずに読むことが出来る。
    合理性を超えた先にイノベーションは生まれる。けれども企業活動を真面目にやると合理的になり、イノベーションは生まれなくなる。イノベーションのジレンマ。
    人は合理性だけでは惹きつけられない、むしろ非合理に惹きつけられる。明らかに役立つセミナーより、アイドルのコンサートの方が来場者が多いように。理屈よりも心。
    ただ合理的がいけないのではなく、合理的に全てを判断すると、誰でも出来る意思決定となり企業間での差別化が出来なくなる。論理的に考え尽くして最後はインテリジェントエイヤーが経営者に求められる。直感。合理的判断は西洋の文化で人間が先天的に身につける力ではない。一方直感は人間本来のもので、東洋の宗教などで磨かれた考え、禅など。ここに差別化のヒントがある。
    こうありたいと願うことから全ては始まる。人生はひととき。その思いを常に忘れずに行動する。そうありたいと思う。
    事業単独、単年で評価すると、ミクロのわなにハマりがち。担当者にも会計年度跨いだヨコの視点を身につけてほしい。Googleの生態系モデル。利益が事業体から発生しない、だから思い切ったことができる。
    合理性は国や時代によっても違う。トヨタのジャストインタイムは中国では受け入れられない。中国人はクルマをすぐに買いたい。それは過去の自国の体制の度重なる変化で未来が不透明であると知っているから。日本の成熟した市場とは違う。
    ソフトバンクの企業買収に対するKDDIの反応「うちは普通の会社ですから」は他社と違うことをやらないと勝てないというビジネスの鉄則から外れていることを説明する事例。大企業病、サラリーマン役員病。
    ジョブズが新卒採用に来たら雇える日本企業はあるのか?
    リーダーシップ3.0
    自律した組織をリードするリーダー、アメーバ組織。
    理念に基づきチームごとに独立自尊。
    スカンクワークス
    20%を本業以外に。ルールがんじがらめではイノベーションや自由な発想は生まれない。
    働きかた改革はなんのため?

  • ロジカルシンキングに代表されるように、「経済合理性」はビジネスの基本です。
    しかし、所謂イノベーション(競争環境の非連続的な変化、パラダイムシフト)というものは、得てして合理性だけでは説明のできそうにない、一見合理性を無視したかのような事象といえます。
    著者は、イノベーションとは合理性を無視するのではなく、「合理性を超えた」先に生み出されるものだと解釈し、多様な事例で「合理性を超えるための」示唆を与えてくれます。
    取り上げられる企業は当然のごとく、アップルやグーグルをはじめ、JALやパーク24など、日本企業もいくつか登場します。

    イノベーションを取り扱った数ある専門書の中にあって、本書のユニークなポイントとして面白いと思ったのは、「合理的なビジネスとは何か」「合理性を超えているとはどういう状態か」といった本書の核心について、表面的な事例だけをツラツラと書き連ねるだけでなく、統計学や会計、財務の視点から迫っているところです。
    具体的には「平均値を用いる危うさ」、「機械的な減価償却配賦の限界」、「キャッシュフローはプラスであるべきという考えへの疑問提議」などで、より実務的で具体的な数値を例にイノベーションについて考察することが可能となっています。

    また、合理性を超えるためには、経営者の独断や(合理的に考えた場合の)リスクを背負う覚悟が避けられないことから、企業の内部統制や監査といった、コーポレートガバナンスの仕組みがイノベーションを阻害する危険性を指摘しています。
    さらにこのような風潮は米国よりも日本にディスアドバンテージがあり、そういった意味で、「麻薬の常習歴があり、最終学歴は高卒。未婚のまま彼女を妊娠させ、生まれた子どもは認知しない。天下のスタンフォード大学では不適格な発言を連発。交通法規もまったく無視し、スピード違反で捕まっても反省の色ひとつ見せずに警官に悪態をつく。」このような人間=スティーブ・ジョブズが、日本の上場企業の社長になれるとは到底思えない、という著者の意見には納得させられました。
    一方で、日本ならではの、助け合いの精神や、あいまいさを許容する風土などを活かした日本的な経営の可能性に示唆を与えつつ、教育や働き方の変革についての提言もあり、決して日本企業に悲観的ではありません。

    企業とは、経済的な成長が至上命題であるため、「経済的に合理的か」「経済的に論理的か」といった問いからは逃れられない運命にあるわけですが、本書の冒頭にもあるように、本質的に人間は「わくわくすることが好き」なのであり、わくわくするモノ・コトには非合理的な側面が強く、合理性だけでは人間は惹き付けられないという、企業がビジネスを行っていく上で根本的なジレンマが存在します。
    そのようなジレンマを一挙に解決するツールや特効薬は存在しないと自覚した上で、常にそのヒントやチャンスを積み重ねていくために、本書が提示する視点はとても参考になると思います。

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著者プロフィール

税理士、公認会計士、コンサルタント

「2023年 『管理職3年目までに 「会社の数字」に強くなる! 会計思考トレーニング』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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