新潟が生んだ七人の思想家たち

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  • 論創社
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  • Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784846015466

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  • こころよき 疲れをおぼゆ 草にねて 若葉の梢 仰ぎてあれば  
     相馬御風
     
     近代短歌史で、相馬御風は必ず年表に載る存在だが、今日その名は、早稲田大学校歌「都の西北」の作詞者、あるいは、松井須磨子が歌った「カチューシャの唄」の共作者として知られていることだろう。

     新刊の「新潟が生んだ七人の思想家たち」で、御風と、同郷の童話作家小川未明、そして、小中学校時代を新潟で過ごした社会思想家・活動家の大杉栄との、濃密な交流を知ることができた。

     御風は、1883年(明治16年)、糸魚川町(現・糸魚川市)生まれ。父は町長を務めるなど、名家であった。

     10代から短歌を学び、大学卒業を前に歌集を上梓。その早熟な才能は周囲に認められ、卒業後は、島村抱月が再刊した「早稲田文学」の編集にあたった。

     詩集や翻訳童話の刊行など、文筆の幅を広げる中、2歳年下の大杉栄と「近代思想」誌上で論争も繰り広げた。とはいえ、激しい応酬というよりも、互いの思想を認め合い、敬意を表しながらの論争であった。というのも、社会変革のうえで、両者とも「人間の解放・自由が実現しているか」という点を重要視しており、互いに共有する部分が多かったからなのだろう。

     御風は、東京での多忙な生活に見切りをつけ、30代半ばで故郷に戻り、そのまま晩年まで過ごした。自然をいつくしみながら、トルストイの翻訳に没頭し、郷土の歌人や文化を育てる生活を選んだのだ。掲出歌は、心の平安をまさにあらわしている。
    (2016年10月9日掲載)

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著者プロフィール

小松隆二(こまつ・りゅうじ)
[現職]慶應義塾大学名誉教授、東北公益文科大学名誉教授。
[主要著作]『企業別組合の生成』(御茶の水書房、1971 年)、『社会政策論』(青林書院、1974 年)、『理想郷の子供たち―ニュージーランドの児童福祉―』(論創社、1983 年)、『難民の時代』(学文社、1986 年)、『大正自由人物語』(岩波書店、1988 年)、『イギリスの児童福祉』(慶應義塾大学出版会、1989 年)、『現代社会政策論』(論創社、1993 年)、『ニュージーランド社会誌』(論創社、1996 年)、『公益学のすすめ』(慶應義塾大学出版会、2000 年)、『公益の時代』(論創社、2002 年)、『公益とは何か』(論創社、2004 年)、『公益のまちづくり文化』(慶應義塾大学出版会、2005 年)、『公益の種を蒔いた人びと―「公益の故郷・庄内」の偉人たち―』(東北出版企画、2007 年)、『新潟が生んだ七人の思想家たち』(論創社、2016 年)、『日本労働組合論事始』(論創社、2018 年)、『戦争は犯罪である―加藤哲太郎の生涯と思想―』(春秋社、2018 年)他。『大杉栄全集』編集委員(現代思想社、1963~65 年。ぱる出版、2014~16 年)、『下中弥三郎労働運動論集―日本労働運動の源流―』監修(平凡社、1995 年)、他

「2023年 『新居格の生涯 自治を最高の基礎として』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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