- Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
- / ISBN・EAN: 9784860644000
作品紹介・あらすじ
世界史における重要な局面を、劇を見ているような感覚で楽しく詳しく学べるシリーズ第5弾です。第一次世界大戦は戦争の常識を塗り替え、20世紀の世界に多大な影響を与えた避けることのできないテーマです。本書では第一次世界大戦の原因から結果までをヨーロッパ戦線を中心に扱い、近代兵器が続々と登場して、これまでにない惨禍をもたらした戦の内容をドラマティックに描いていきます。臨場感あふれる解説と“歴史が見える”イラストで学べる、まったく新しい歴史教養書!
感想・レビュー・書評
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私が世界史と軍事史の沼にどっぷりハマっていくキッカケとなった本。
マンガを思わせるようなイラストと小説のような読ませる文章で、
この本に出会った時の私は中学生になったばかりで世界史の知識など全くなかったが、翌日には読了してしまった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
第一次世界大戦については、日本の歴史の授業では殆どやらないのではないでしょうか。いろいろ理由はあると思います、学習する時期が年度の終わりに差しかかっていて、現代史は全体的にやる余裕がない。日本が活躍した場面や、大きな被害を受けたことがなく、それ以降の太平洋戦争やその前の、日清日露戦争に時間が費やされる等です。
社会人になって好きな分野の本を読むようになっても、第一次世界大戦に焦点をあてて本を読む機会があまりありませんでした。最近、神谷正史という河合塾の講師がわかりやすい現代史に関する解説本を書いていることを知り、これが2冊目です。
この本では、第一次世界大戦がいかに、欧州を中心とした世界を変えたかがわかりました。総力戦という言葉がキーワードですね。古代から続いていた、戦争が軍人や彼等を管理する、王・貴族だけのものから、国民全体を巻き込む「総力戦」になったのがポイントですね。
それを理解したことで、なぜ戦争被害が大きくなったのか、その現実を目の当たりにして、なぜそれまでの意識を変えて、国際連盟をつくろうとしたのかが分かってきました。
以下は気になったポイントです。
・セルビアがオスマン帝国に大敗を喫した戦い(コソヴォポリエの戦い:1389.6.15)は、セルビア国民が喪に服す「国恥記念日」であった、オーストリア皇太子がセルビアにやってきた日は、カトリック教圏(オーストリア)では、グレゴリウス暦だったので6月28日であったが、ギリシア正教圏(セルビア)ではユリウス暦であり、正に記念日(6月15日)であった(p31)
・第一次・二次バルカン戦争(1912-13)は、第一次世界大戦の前哨戦とも言われるが、これは、オスマン帝国の衰退こそが生み出した戦争である(p58)
・第一次世界大戦には、1)開戦当初から同盟国(ドイツ・オーストリア・ハンガリー)、2)中立から同盟に参戦した国(ブルガリア、トルコ)、3)当初から協商側(英仏露セルビア、モンテネグロ)、4)中立から協商側(ポルトガル、ベルギー、イタリア、ギリシア、ルーマニア)5)最後まで中立(オランダ、ルクセンブルク、スペイン、アルバニア、スイス)がある(p52)
・三国協商は存在しない、露仏協商(1891)、英仏協商(1904)、英露協商(1907)の総称にすぎない。これに対して三国同盟とは、フランスと敵対していたドイツが、イタリアに接近、フランスを仮想敵国とする軍事同盟(1881)で、オーストリアも加えて1882年に生まれたもの(p64)
・戦力=兵力2乗、という法則を見つけ出した。西軍10、東軍6の場合、東軍が全滅するまで戦うと西軍が残る数は、兵力計算の「10-6」ではなく、戦力計算の「10^2-6^2=64」となる(p74)
・古今東西、戦いをいうものは、まともに正面から突撃するのは「愚将」のすることで、「名将」は、つねに敵の裏をかき、虚をつくモノである(p79)
・参謀総長の小モルトケは、主力軍(西部戦線右翼)、陽動軍(西部戦線左翼)、東部戦線軍に、きれいに均等化してしまい、もともとシュリーフェン伯爵が考えていた、主力軍に帝国陸軍の4分の3を割くという各個撃破作戦は影も形もなくなった(p87)
・国体とは、「国家の基本的な政治体制」であり、帝制・王制・共和制等がある、日本は「帝制」である。大日本帝国は無くなり、いままでに6つの帝国が消えた(1917ロシア、1918ドイツ第二、1918オーストリアハンガリー、1922オスマン、1974エチオピア、1979イラン)が、日本は現在でも、れっきとした「帝国」である。(p114、118)
・最初から「利権争い」を目的として戦っていれば、これ以上戦ってもお互いに益がない、と思えば戦争は終結に向かうが、目的が「正義の戦争」「民主主義の戦争」であれば、話しが別となる(p116)
・日露戦争は、国家予算2.6億円に対して、戦費が17億円、14億円が借金であった(p125)
・ドイツ領内から火薬の原料であるチリ硝石が全く取れなかった。英国海軍は海上封鎖をしたので、火薬の備蓄がなくなったら勝利できると信じたが、ドイツでは空気(窒素)からアンモニア、そして硝酸、火薬を生成した(p135,136)
・1911年の伊土戦争で、イタリア機が偵察機として使用された、戦闘機として使われたのは第一次世界大戦から(p140)
・ブルガリアは、セルビアにマケドニア地方を第二次バルカン戦争で取り返されたので、(セルビアのいる)協商側にたっても仕方ない。従って、ブルガリアは同盟側にたって参戦した(p162)
・1906年に完成した「ドレッドノート=怖いものなし」と名付けられた戦艦を基準として、それと同等規模を、弩級戦艦(ドレッドノート級戦艦)と呼んだ。一回り大きいものを「超弩級戦艦」、さらに大きいものは「超々弩級戦艦」、戦艦大和は「超々々弩級戦艦」にランクされている(p177)
・東軍10、西軍5で戦って、東軍4=10-6、西軍1=5-4の場合、損害は東軍の方が多いが、兵力差は、2倍から4倍になった。これを戦術で勝って、戦略で負けた、という(p179)
・戦略とは、最終目的を達成するための大まかな方針、作戦とは、戦略を成功に導くための個別的・具体的計画、戦術とは、作戦を成功に導くための現場での手段・方術、これを会社経営にすると、戦略:幹部会議で経営方針を決める、作戦:経営方針に基づいてプロジェクト立ち上げ、戦術:プロジェクト達成のために現場が臨機応変に対応、となる(p180)
・いつの世も、新しいものを摂取できない者は、時代にかき消されていく運命にある、つねに感覚を研ぎ澄まし、新しいものを理解・取り入れる柔軟性を持ち続けることが、生き残っていく重要なカギとなる(p190)
・首都ペトログラードまで陥落しそうな勢いに、狼狽したレーニンは、首都をモスクワに移して、ただちに和平交渉を再開した(p234)
・ドイツとソ連は、ブレスト=リトフスク条約で、全ロシアの農業生産の3分の1、工業力の4分の3を占める土地を失った(p234)
・イタリアは途中退場して、会議を放り出した。これは「決定は断じて認めない」という意思表示となる。最後まで列席した場合は、この決議を認めたことになる(p310)
2016年10月1日作成 -
この本にも書かれているように、第二次世界大戦のことを知るためには、第一次世界大戦から一連の流れを知ることが不可欠。
この本では、わかりやすく、本質的な歴史の流れをきちんと捉えています。 -
とてもいい本だと思う。
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見開き2ページのなかにイラストによって複数の状況が描かれているのだが、情報盛り込みすぎの感があり、少々見づらい。漫画のように右から左、上から下へ、というルールがないことも原因だと思うが。
人物名もいちいちフルネームで書かれており、煩わしく感じる。
また、事実と意見の混同が散見されるため、一歩引いた目線が必要だと思う。 -
第一次世界大戦の背景、経過、結果を
ドラマチックに分かりやすく描いている。
河合塾・神野の「世界史劇場」シリーズは
傑作だと思う。
受験生は必ず読んでおくべきである。 -
面白いし、読みやすいんだけど、筆者の思想が偏りすぎ。
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第一次大戦のことは、実はあまり良く知らなかったのでまずはざっくりとこの戦争がはじまった経緯と、展開をおおまかに知るためにこの本を買いました。
著者は河合塾の講師だそうで、著者写真としてはスキンヘッドでサングラスの怖い人風の人が写ってます。
内容はわかりやすくて、私の目的に合致したよい本ですね。