権力に抗った薩摩人 (南方ブックレット1) (南方ブックレット 1)

著者 : 芳即正

• 南方新社 (2009年8月19日発売)

作品紹介・あらすじ

鹿児島人は何故墓を大事にするのか?鹿児島は何故切り花販売量が日本一なのか。

感想・レビュー・書評

[Nobuyukiさんの感想 · 2010年10月15日]

　薩摩藩の真宗弾圧の歴史を概観すると同時に、そのなかで何世代にもわたって真宗の信仰を自治的共同体において保ち続けた「かくれ念仏」の伝統に光を当てる。藩の権力に抗して、またその暴力的な禁圧に耐えながら、寺ではなく、人のつながりのなかで何百年も信仰が保たれてきたのは驚くべきことであり、ベンヤミンの言う抑圧された者たちの伝統を目の当たりにする思いがした。その伝統としての民衆史にもう少し踏み込んでほしかったのと、参考文献などのリストがあればと思ったのを除けば、薩摩の「かくれ念仏」を概観するうえで好適の一冊と言える。