21世紀エネルギー革命の全貌

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  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861824524

作品紹介・あらすじ

シェール革命、福島原発事故、中国や中東産油国の行方、新エネルギー開発競争…エネルギー大転換期の未来を見通す。欧州を代表するエコノミストが戦略と政策をまとめあげたベストセラー。

感想・レビュー・書評

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  • エネルギー政策の世界の動向を広く見渡し、中長期的な視点から今後のエネルギーのあり方について論じている。

    著者がフランスの研究者・実務家あるだけにヨーロッパの事例が中心となっている。そのため、電力供給の安全保障といった観点では日本とはやや事情の異なる議論とはなっているが、エネルギー源の多様化や再生可能エネルギーに関するロードマップについては、非常に有益な議論ではないかと思う。

    特に、再生可能エネルギーは低炭素化への効果においても、食料生産など関連する他の産業への影響においても多面的な要素があり、化石エネルギーの単純な代替という議論ではなかなか解ききれないものであり、「科学技術」の代替手段というより、地域ごとに利用できるさまざまな資源を、これまでにない組み合わせによって地域分散型のエネルギー・システムを作る取り組みと位置付けている点が重要であると感じた。再生可能エネルギーは、技術革新だけではなく、企業及び雇用の創出の余地も大きいという点も、地域経済との相関性の高さに関する重要な指摘であると感じた。

    そして、その推進のためには、乱高下する化石燃料の価格に左右されず、一貫した投資による再生エネルギー開発を継続していくことで、技術と市場の発展を促すべきであるという点は、長期的な視点に立った提言であると感じた。ちなみに、化石燃料の価格は長期的なトレンドとしては上昇傾向が支配するとしており、そのような将来に向けて、どのような代替エネルギー供給システムを構築しておくかは戦略上非常に重要であると感じた。

    最後に解説の増田氏がまとめられている新たなエネルギー・システムに重要な八つの視点が、全体を見通すのに非常に有益と感じた。

    1、節度(Discipline)―節約を超え、システム全体を貫く「哲学」に昇華
    2、簡明(Simplicity)―先端的ではあるが複雑すぎない
    3、多様(Diversity)―エネルギー源、供給源、需要面の多様性
    4、透明(Transparency)―家庭も含むすべてのプレーヤーへの透明性
    5、信頼(Reliability)―供給途絶などのリスクの最小化
    6、経済(Economy)―コストが高すぎない
    7、環境(Environment)―環境負荷の低減
    8、安全(Safety)―高い安全性

  • 欧州におけるエネルギー政策のブレイン的存在、ジャン=マリー・シュヴァリエによる21世紀のエネルギー論。
    次のエネルギーとして何を選択すべきか。これには、安全性、効率性、多様性、イノベーションという4つの軸で考える必要があると説く。しかし、これらの問題は、国ごと、地域ごとに、エネルギー調達の容易性や経済性、そして、それに対するリスクをどこまでとるのかなど考えが異なり、一つの答えに収れんする話ではない。著者は、こうした問題に対して、いくつかの観点から理論的に考察を加えている。
    福島原発事故以来、日本には脱原発をさけぶ声が多いが、原発を続けるリスク、原発をやめるリスクをもっと掘り下げて考えるべきと考えさせらえる本である。

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