スター女優の文化社会学――戦後日本が欲望した聖女と魔女

著者 :
  • 作品社
3.75
  • (1)
  • (2)
  • (0)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 41
感想 : 2
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861826511

作品紹介・あらすじ

彼女たちはいかにして「スター」となったのか。なぜ彼女たちでなければならなかったのか。原節子と京マチ子を中心に、スクリーン内で構築されたイメージ、ファン雑誌などの媒体によって作られたイメージの両面から、占領期/ポスト占領期のスター女優像の変遷をつぶさに検証し、同時代日本社会の無意識の欲望を見はるかす、新鋭のデビュー作!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「美と破壊の女神 京マチ子」からたどりつきました。本書は、2015年に提出された修士論文「映画的身体の歴史社会学ー占領期/ポスト占領期におけるスター女優の身体表象と言語分析」の改稿とのこと。アメリカの厳重な検閲が敷かれた1945年の敗戦からの占領期、映画の自主管理体制が整った1949年から1954年ぐらいまでのポスト占領期に時期を絞ったことが大きな着眼だと思います。その時代の映画は民主主義のショーウインドウだったからです。そこで監督でなくスター女優をフューチャーしたのも新しい。当時の観客が見入られたのは、作り手の意図、ではなくスクリーンの上での存在感、そしてスクリーンを越えたペルソナだったからです。それを原節子と京マチ子に絞って論じています。決してイメージ上、交わることのない二人ですが、実は、結構同じ監督にキャステリングされていたことがわかります。まるで戦後民主主義というリングに立つBI砲、ジャイアント馬場とアントニオ猪木のようなタッグだったのだと知りました。本書ではあまり言及されていませんが、お互いにどう意識していたか、ちょっと興味がわきました。

  • 力作だった。私が偉そうに「力作」というのは違うと思うが、そうとしか言えないほどの力の入った論考だった。

    最初まず、字が小さい、詰まってる、最後まで読めるだろうかと子供のような心配をしたが、全く問題なかった。
    原節子、京マチ子の出演作品、意外にも割と見ていた。ほとんど映画の記憶を残せない私であるが、本文に取り上げられているシーンは割と覚えていた。なので、そういう風に見るのか、そんなこと何も考えないでぼーっと見てたなぁ、もう一度見直したいなぁとか思いながら楽しく読めた。もちろん見ていない作品の方が多いので、これから見てみたい。
    映画というのは、その時代と共にある、時代と切り離しては考えられないものだということ、スターもまたその時代を演じる、その時代の役割、その時代に求められているものを演じるということがよくわかった。

全2件中 1 - 2件を表示

著者プロフィール

映画研究者/批評家。東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授。単著に『椎名林檎論——乱調の音楽』(文藝春秋、2022年)、『アクター・ジェンダー・イメージズ——転覆の身振り』(青土社、2021年)、『24フレームの映画学——映像表現を解体する』(晃洋書房、2021年)、『美と破壊の女優 京マチ子』(筑摩書房、2019年)、『スター女優の文化社会学——戦後日本が欲望した聖女と魔女』(作品社、2017年)、共編著に『川島雄三は二度生まれる』(水声社、2018年)、『リメイク映画の創造力』(水声社、2017年)、翻訳書にポール・アンドラ『黒澤明の羅生門——フィルムに籠めた告白と鎮魂』(新潮社、2019年)などがある。

「2023年 『彼女たちのまなざし 日本映画の女性作家』 で使われていた紹介文から引用しています。」

北村匡平の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×