いつだって読むのは目の前の一冊なのだ

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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (704ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861827877

作品紹介・あらすじ

読書人必読の書評集成。
辣腕の書評家にして口達者な本のセールスマンが広大な読書の世界へ分け入り、2003~2019年という大きな時代の変化のなかで選び抜いた逸品、全444冊!


 これは週刊文春の「私の読書日記」の十六年分を集めた本である。実はこの前に『室内旅行』と『風がページを……』という二冊の集成をまとめている。その後ずっとさぼっていて、気づいたら本にしないままのものがたくさんたまっていた。それをぜんぶ強引に束ねたからこんなに分厚い本になってしまった。いわゆる枕本。寝転がって読んで眠くなったらそのままこれを枕に昼寝することができる。枕頭の書であり枕草子だ。短いものの集成だから後架に置くという手もある。
 しかし気をつけて頂きたい。書評というのはすべて誘惑の文章である。そんなにおもしろい本なのかと思って購入に走ればこれはきりがない。……うっかり乗って散財にはご用心。(本書「まえがき」より)

感想・レビュー・書評

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  • 週刊文春「私の読書日記」16年分(2003~2019年)全444冊の書評本。
    ぶ、分厚すぎやわ!おもっ。それが第一印象。
    読めるか?戸惑うわたしに、著者の池澤夏樹さんは〈まえがき〉でアドバイスを 笑。
    「いわゆる枕本。寝転がって読んで眠くなったらそのままこれを枕に昼寝することができる。枕頭の書であり枕草子だ。」
    ふふふ、枕草子ですか、うまいなぁ。もちろん、本書を枕にして寝転んでみたけれど、言わずもがな硬くて痛くて。わたくし、もう少し柔らかい枕が好みです……
    とはいえ、全くもって眠くなどならない書評本。かなり集中して一気に読んでしまった。
    なんだろ、本との波長が合ったのかもしれない。“読みたいチェック本”が数えきれないほど。

    いちばん興味を持ったのは、自然科学の分野。
    そこには、今まで見たことも聞いたことも、そして考えたこともないような景色が広がってる。とにかく「知りたい」と思える本ばかり。
    池澤さん自身が、大学時代に物理学を専攻されているし、「アマチュアの科学ファンだ」とエッセイ『科学する心』でも書かれている。
    なんといっても「物理とはなんぞや」の世界にいたわたしを、“物理=星屑、キラキラ、光、粒と波、そしてキラキラ”というロマンティックな(とてつもなく間違った方向への)イメージへと誘ったのは、池澤さんの『スティル・ライフ』なのですから!
    そんな池澤さんが書評するのだから、読みたくなるのは仕方がないこと。

    続いて気になったジャンルは、エッセイそしてルポルタージュ。
    エッセイやルポルタージュって、“自分の知っている人や、気になる事実だから読みたい率”が私のなかでは高かったけれど、紹介されているものは、知らない人、知ろうとしてなかった事実ばかり。それが池澤さんの文章によって、魅力的だったり、おもしろそうだったり、考えようと思ったり、何かと引っ掛かる部分が出てきて、どうしても読みたくなるのだ。

    他にも詩や短歌、俳句。絵本、小説、教養、歴史、時事問題などなど、あらゆる分野。
    もう目移りするばかりだ。チェックした本だけでも読むのに数年はかかるかもしれない。
    惜しむらくは読みたい本のかなりの割合、もう流通していなくて中古本を探さないといけないこと。こうやって書評本などを通じてしか面白い本の存在を知ることができないのは、もったいなくて至極残念。
    本屋さんでたくさんの面白い本が、いつでもいつまでも待っていてくれたなら、どれだけ心豊かでいられるだろう。それだけでなく心強くさえいられる。そうなれば、本との出会いによって世界が広がる人も、人生を変えてしまうほどの本と出会える人も、もっと増えるかもしれないのにな。

    〈しかし気をつけて頂きたい。書評というのはすべて誘惑の文章である。そんなにおもしろい本なのかと思って購入に走ればこれはきりがない。なにしろぼくは辣腕の書評家、口達者なセールスマンだ。うっかり乗って散財にはご用心。〉

    ……はい、気をつけます。

    • しずくさん
      >しかし気をつけて頂きたい。書評というのはすべて誘惑の文章である。そんなにおもしろい本なのかと思って購入に走ればこれはきりがない。なにしろぼ...
      >しかし気をつけて頂きたい。書評というのはすべて誘惑の文章である。そんなにおもしろい本なのかと思って購入に走ればこれはきりがない。なにしろぼくは辣腕の書評家、口達者なセールスマンだ。うっかり乗って散財にはご用心。〉

      セールストークそのものですね!(笑)
      2020/07/15
    • 地球っこさん
      しずくさん、こんにちは。

      まさにそのとおりです。
      誘惑されちゃいますよ(*^^*)
      しずくさん、こんにちは。

      まさにそのとおりです。
      誘惑されちゃいますよ(*^^*)
      2020/07/15
  •  週刊文春に十数年間連載されていた「私の読書日記」という、コラム(?)というべきか、読書レビュー(?)というべきか、書評(?)というべきか、まあ、呼び名はともかく、公称444冊、実は、その倍くらいの書籍が話題にのぼってくる、アホみたいに楽しい本です。コタえらられません!(笑)
     詳しくはゴジラ老人シマクマ君の日々で、あれこれ書いています。覗いていただければ嬉しい(笑)。
     https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202311050000/

  • 200915*読了
    驚くべき分厚さ、しかもすべてが読書日記!(書評と言いたくない)索引を除いて660ページほど!索引を入れると700ページ!これを完読した自分を褒めたい。図書館で借りて、毎日寝る前にこつこつと読みました。
    2003年から2019年までの読書の記録。
    小説よりも、化学、生物学、数学、歴史、時にはキノコの本まで、あらゆるジャンルの本を読まれていて、世の中にはこんな本もあるのだなぁ、と感心しきりでした。
    宇宙の本やエッセイ、小説など、結局は自分の興味のある分野になってしまうのだけれど、気になった本、約20冊をブクログの読みたい本リストに追加。
    池澤夏樹さんといえば、世界文学全集と日本文学全集!この全集をすべて読む、というのが私の夢です。

    いやぁー満足。読書って、本って、なんてすばらしいのだろう。
    この本のタイトルがまたいいですね。「いつだって読むのは目の前の一冊なのだ」その通り。読書好きなら、うんうん、と頷くしかない。わたしもいつだって目の前の一冊を大事に読みます。これからもずっと。

  • 池澤夏樹氏が週刊文春の「私の読書日記」に連載した16年分(2003-2019)の自選自薦の書評444篇は、日本十進分類法を網羅するほどの読書量と密度の濃さに圧倒されます。 当然のことながら、ごく僅かの既読本と積読本を除いても大半が未読本ばかりでした。SF好きの春菜さん(長女)お薦めの、藤井大洋著『オービタル・クラウド』(ハヤカワ文庫)が気になり付箋でマーク。 おっと!図書館返却前に、いっぱい付いた付箋を忘れずに剥がさなくっちゃな。

  • 流し読みもいいところ

    数百冊の本と簡単な解説が載っているので積ん読作成のタネに

  • 活字の海で作家がいざなう読書の愉悦 相次ぐ書評集 格好の案内役に
    2020/8/8付日本経済新聞 朝刊
    書棚を見ると持ち主の頭の中が分かるといわれるが、それは書評集にも当てはまる。どんな本を選び、どういった感想を抱いたかが書かれているからだ。最近相次ぎ出版されている作家による書評集は、物語の面白さや社会的意義、未来の可能性を示すことで、読書の愉悦をこれでもかと訴えてくる。

    作家による書評集の刊行が相次いでいる(左から著者は池澤夏樹、角田光代、樋口恭介)
    作家による書評集の刊行が相次いでいる(左から著者は池澤夏樹、角田光代、樋口恭介)

    8月初め刊行の『物語の海を泳いで』(小学館)は直木賞選考委員を務める作家、角田光代の書評集だ。第1章「物語に出合う」は少女時代に読んだアストリッド・リンドグレーン『長くつ下のピッピ』などにまつわるエッセーだ。「読むものがないと、退屈」で自宅の風呂場にもトイレにも寝室にも本を置いている、といった「読書術」も明かされる。

    第2章「心に残る、あの本この本」ではジョン・アーヴィング、赤松利市、一木けいらの多彩な作品を取り上げた書評を掲載。中でも梯久美子『狂うひと』への「私的感想文」は熱い。第3章「わたしの読書日記」では2007~18年の読書の日々をつづっている。

    書評の心得は「自分話にしないようにしています。後はあらすじの紹介ばかりにならない、批判しない」と角田。本書の読者には「一冊でも読んでみたいと思って、実際に読んでもらえたらとてもうれしい」と期待する。

    「世界文学全集」「日本文学全集」の個人編集で知られる作家の池澤夏樹も、書評集『いつだって読むのは目の前の一冊なのだ』(作品社)を19年12月に刊行した。03~19年に「週刊文春」に連載した「私の読書日記」をまとめたものだ。「辣腕の書評家、口達者なセールスマン」(「まえがき」)を自称するだけに、本を手に取りたくなる文章が並ぶ。

    04年に「移住者」に注目し、サラエボから米国に移った作家アレクサンダル・ヘモンの長編『ノーホエア・マン』を取り上げるなど、書評を通じて時代の変遷が味わえる。

    今年5月刊の『すべて名もなき未来』(晶文社)は17年にハヤカワSFコンテスト大賞を受賞しデビューした樋口恭介の書評中心のエッセー集。イアン・マキューアン『贖罪(しょくざい)』を語った文章が印象深い。「小説は完璧にはなり得ない。/しかし、『試みることが全て』なのだ」。そこに自らの創作姿勢もにじむ。

    角田は読書の楽しみを「『今、ここ』の現実以外に無数の現実世界があり、それはもしかして『今、ここ』よりずっとうつくしくて上質な世界かもしれず、そこにいつでもいけること」とする。書評集は格好の案内役だ。

    (編集委員 中野稔)

  • 芥川賞作家、池澤夏樹氏「いつだって読むのは目の前の一冊なのだ」(2019.12)、はい、そうですねw。週刊文春の書評コラム16年分をまとめた本です。外国の本が結構多いです。全698頁。さっと一読して、読んでみようと思った本は、大竹昭子「きみのいる生活」、水波誠「昆虫 驚異の微小脳」、村山斉「宇宙はなぜこんなにうまくできているのか」、水野美紀「私の中のおっさん」、岩田誠「鼻の先から尻尾まで」など8冊。読了してた本は、クレア・キップス「ある小さなスズメの記録」、高橋のら「猫にGPSをつけてみた」など9冊でした

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著者プロフィール

1945年生まれ。作家・詩人。88年『スティル・ライフ』で芥川賞、93年『マシアス・ギリの失脚』で谷崎潤一郎賞、2010年「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集」で毎日出版文化賞、11年朝日賞、ほか多数受賞。他の著書に『カデナ』『砂浜に坐り込んだ船』『キトラ・ボックス』など。

「2020年 『【一括購入特典つき】池澤夏樹=個人編集 日本文学全集【全30巻】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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