動物のペニスから学ぶ人生の教訓

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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861829253

作品紹介・あらすじ

それは戦争ではなく愛のための道具であり、誰かを脅かすものではなく誰かと親しくなるためのものなのだ。

感想・レビュー・書評

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  • ===qte===
    動物のペニスから学ぶ人生の教訓 エミリー・ウィリンガム著 多様性の中でヒトを考える
    2022/9/17付日本経済新聞 朝刊
    刺激的な書名が約束するとおりの一冊である。


    まず、動物界に見られる多種多様なペニスの形態や機能が大量に紹介・解説される点において、本書は期待を裏切らない。さながらペニスの小事典といった趣だ。

    「人生の教訓」についてはどうか。著者が提示する教訓は、おそらく多くの読者の期待を裏切るだろう。だが、一読後、たしかにそれもまた動物のペニスから学べる教訓にちがいないと納得できるはずだ。読者の期待や先入観を裏切りながら約束を果たす、きわめて良質な科学読み物である。

    本書は、いったんヒトの世界からできるだけ離れて、動物界のペニスが見せる驚くべき多様性を、これでもかと読者に見せつける。特定の動物をお手本にするような議論では、都合のよい牽強付会(けんきょうふかい)の誤りを犯すことになるからだ。

    では、本書はそこからどのような教訓を引き出すのだろうか。

    著者は、動物のペニスが見せる多様性の連続体のうち、ヒトのそれはどこに位置するだろうかと問う。すると、ヒトのペニスは、性的対立を背景として強制交尾のための武器のように特殊化したカモ類などの反対側、すなわちあまり特殊化しておらず、より「兵器化」の少ない側に位置していることがわかる。しばしば見られる、ヒトのペニスを強さや攻撃性の象徴とする通俗的イメージの空虚さもよくわかる。

    そこから著者が引き出す教訓は「ヒトのペニスは戦争ではなく愛の道具であり、脅すためではなく親密さを高めるために用いるものだ」というものである。これは決して美辞麗句やスローガンではない。動物界の多様性を見渡したうえでの結論なのである。

    動物を直接お手本にするのではなく、多様性の連続体のなかにヒトを位置づける本書のスタイルは、生物学の科学読み物のひとつのお手本になりうるだろう。また、本書はフェミニズムの本でもある。著者はペニスに関する膨大な記述を紹介しながら、膣(ちつ)に関する知見がきわめて少ないことを指摘する。これは現代にいまだはびこる「男根幻想」(本書の原題)の産物である。多様性の提示を通じて幻想や偏見を解毒するという、現代の啓蒙書に期待される役割を見事に果たす一冊でもある。

    《評》フリーライター 吉川 浩満

    原題=PHALLACY(的場知之訳、作品社・2970円)

    ▼著者は米国のジャーナリスト、科学ライター。原題は男根(Phallus)と誤謬(Fallacy)を組み合わせた造語。
    ===unqte===

  • 生物学、あるいは科学全般、ひいては社会にはびこる、著者の言う「ペニス偏重主義」は是正されなければならないというのは論を俟たない。その上で言うのだが、この本ではその男性優位の現状に対する著者の抗議と生物界における様々なそして興味深い性交渉を紹介することとが上手く交通整理されていない印象を受けた。二つを一旦分けて構成し直すと更に良くなりそうなのだが。どちらも大切で興味深いトピックなのだけに少し残念である。

  • 性淘汰の進化生物学研究そのものが、男性優位の文化的背景の影響を受けてきた。

    うーん、そうだろうな。
    生物の膣の研究はあんまり進んでないらしく、女性器の研究も、男性器がまずあって、みたいなところがあるようだ。
    目立つもんな。
    9900万年前の、ザトウムシの勃起したモノの化石まで研究されて来たという。

    進化の過程で、本当に多様な性交が多種の生物で顕現しているのも驚きだ。女性器を男性に挿入して精子を吸い上げるなんてのもあると聞く。

    人間の場合は、極めて非暴力的なモノであり、人としての社会性が無ければ成り立たない。

    若干、西洋の考え方と違うところは感じるものの、著者の、脚注でのツッコミが面白すぎてなんとも味わい深い。

  • 『#動物のペニスから学ぶ人生の教訓』

    ほぼ日書評 Day579

    久々に1点をつけよう。
    我慢しながら1/3まで読んだが、あまりにもくだらない。

    https://amzn.to/3CFEUPM

  • 科学読み物として100点の本だと思う。これまでの性淘汰や性行為に関する研究は男性的であったという指摘からはじまり、終始アイロニックなもの言いで読者を楽しませてくれる。男性も女性も楽しめるし、タイトルで敬遠せずに多くの人に読んでほしい1冊。

  • 請求記号 481.35/W 74

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著者プロフィール

(Emily Willingham)
米国のジャーナリスト、科学ライター。テキサス大学オースティン校で英文学の学士号、生物学の博士号を取得後、カリフォルニア大学サンフランシスコ校で泌尿器科のポスドクフェローを務めた。著書に、The Tailored Brain: From Ketamine, to Keto, to Companionship, A User’s Guide to Feeling Better and Thinking Smarter (Basic Books, 2021)、共著に、The Informed Parent: A Science-Based Resource for Your Child’s First Four Years (TarcherPerigee, 2016) などがある。『ワシントン・ポスト』『ウォール・ストリート・ジャーナル』『イーオン』『アンダーク』『サンフランシスコ・クロニクル』ほか多数のメディアで記事を執筆。『サイエンティフィック・アメリカン』の寄稿記者も務めている。

「2022年 『動物のペニスから学ぶ人生の教訓』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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