作品紹介・あらすじ
映画『トラ・トラ・トラ!』は、クランクインまもなく、黒澤明監督の解任という事態となり、初期方針を変更しながら完成、公開されることになった。この映画に最後まで一貫して従事した美術チーフの近藤司は、福岡県遠賀郡芦屋町海岸に建造された二隻の軍艦、戦艦長門と空母赤城を担当した。映画に参加した多くのスタッフが既にこの世を去っている。黒澤明、村木与四郎美術監督しかり、脚本の小國英雄、菊島隆三ももういない。わずかに生き残る証人の一人だった近藤 司が語る事実の一片から、全てを知る手掛かりがひも解かれる。
感想・レビュー・書評
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1970年に公開された二〇世紀フォックス社の映画『トラ・トラ・トラ!』で、二隻の軍艦、戦艦長門と航空母艦赤城の巨大セット建造にたづさわった近藤司のインタビューを取りまとめた本(2012/11/16出版)。
映画『トラ・トラ・トラ!』を制作するにあたっての裏話的な興味深いエピソードが、本書ではいろいろ記載されています。
例えば、零戦(零式艦上戦闘機)が航空母艦赤城に海から着艦するシーンを撮影するにあたり、特攻隊の生き残りを探してもらい、着艦シーンを撮ったというエピソードでは、当時の自衛隊の技術で40~50メートル上を飛ぶところ、特攻隊は水面ギリギリを飛んでくるので、日本の特攻隊の凄さまざまざと感じたと云うエピソードや、顧問として参加していた開戦劈頭にパールハーバ奇襲攻撃をした日本海軍機動部隊の元航空参謀 源田実 参議院議員に対する印象について書かれています。 又、珍しい戦艦長門と航空母艦赤城の巨大セットの写真や絵コンテ等々、興味深い写真が多数掲載されており、なかなか面白いドキュメント本だと思いました。
著者プロフィール
1951年宝塚映画撮影所の開設とともに入社。美術チーフとして数々の名作を担当。木下恵介、成瀬巳喜男、豊田四郎、川島雄三、久松静児などの名監督との作品に従事する。『トラ・トラ・トラ!』には、黒澤明監督の要請で当初から参加した。監督降板事件の後も映画完成の最後まで美術班に従事した。その後、宝塚映像専務を経る。
「2012年 『木で軍艦をつくった男』 で使われていた紹介文から引用しています。」
近藤司の作品