反社会的勢力 (新書y)

著者 :
  • 洋泉社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862488558

感想・レビュー・書評

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  •  ヤクザの世界に身を置いたこともあるという著者(劇画『クロサギ』の原作者でもある)が、「暴力団排除条例」の対象となる「反社会的勢力」について解説した本。「反社会的勢力とはいったいどういうものなのか。そして、中核をなす暴力団は今後どうなっていくのか。さらに、暴排条例によって何が変わるのか」が考察されている。

     本書より3ヶ月早く刊行され、同じようなニーズからベストセラーになった類書が、溝口敦の『暴力団』(新潮新書)である。
     本書は結果的に同書の二番煎じのような印象になってしまい、そのせいかあまり売れていないようだ。しかし、内容はこっちのほうが上だと思う。暴排条例のなんたるかがよくわかるし、相撲界の野球賭博事件と島田紳助引退など、近年の一連の事件と暴排条例の関係についても、点と点をつないで一本の線にするようにすっきりと腑分けされている。
     溝口の『暴力団』が、古い資料と手持ちの知識でまとめたやっつけ仕事の感が強かったのに対し、本書はていねいな取材をふまえて書かれているし……。

     著者は暴排条例を、「二一世紀の日本にとって大きな転換点となる可能性のある『切れすぎる刃』なのではないか」と危惧する。暴力団排除といえども、「やはり法に則って行われるべきであり、条例の拡大解釈で憲法を無視してなし崩し的に行われていいことではない」と……。
     たしかに、暴力団員が集団で行う初詣や寺社への参拝まで条例違反として禁ずるなど、暴排条例の適用には行き過ぎがあると私も思う。

     ただし、本書はけっして暴力団擁護の書ではない。著者は、「それ(暴排条例)が人権無視であったとしても、自ら呼び込んだ面は否定できない」と、暴力団の行き過ぎた肥大化がもたらした“社会との全面対決”であるとの認識を示すのだ。

     少し前、暴排条例が芸能界にもたらす影響がさかんに取りざたされ、「紅白歌合戦」で演歌勢がゼロになるのではないか、などと言われた(実際には、昨年の紅白に影響がなかったのは周知のとおり)。しかし、著者はむしろ、一般企業に与える影響こそが甚大なのだと指摘する。

     実業界は角界や芸能界と違い、暴排条例の影響をモロに受けることになる。(中略)もちろん、当局は一罰百戒を狙っているわけだから、摘発例は出るだろう。そんなケースでも、仮に問題企業の名が「公表」という事態になれば、倒産という最悪の結果も十分に起こり得る。

     誰もが知る大企業が暴排条例に触れて摘発され、そのことをマスコミに大々的に報じられ、取引先が一斉に手を引き、あっという間に倒産に至る……もしもそんなことが起きれば、たしかに“見せしめ効果”はバツグンだろう。そして、それはいつ起きても不思議はないのだ。

  • 反社会的勢力、いわゆる暴力団について書いた一冊。
    一部半グレなどもあるものの、その辺の線引きはあまり明確にはしてない。

    踏み込みが足りないので学術的価値があるかというと?だけど、「暴力団って何?」という人にとっては勉強になるかと。

  • <内容>
    反社会的勢力がどのような存在であるかを当事者インタビューを踏まえて記述。将来的に反社会的勢力がどうなるかを考察する

    <感想>
    暴力団以外にも、半グレなどにも言及している。
    しかしながら、内容は他の作品と同じ。

  • 実際に反社会的勢力にインタビューをして、それを基に著者なりの考察を加えて論を進めているので、安定している感じがありました。暴力団排除条例施行についての問題点をわかりやすく解説しています。

  • 総論に関しては特段目新しい情報はなし。

    「第三章 特殊知的能力 ー ブローキングの実態」は参考になった。特に産業廃棄物ブローキング。

  • わかりやすい。暴排条例施行の意味や背景、社会と暴力団の関係の変化など。組員、警察、一般人などそれぞれの目線があっていい。角界の野球賭博、八百長、六代目の出所、紳助問題…一連の動きが絡み合いながら、ときに意図的に暴力団イメージが醸成されてきていると。

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