いつか、すべての子供たちに――「ティーチ・フォー・アメリカ」とそこで私が学んだこと

  • 英治出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862760500

感想・レビュー・書評

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  • 誰かの役に立ちたいと言う大学生の思いを全国に広げようとしている姿は素晴らしいと思った。
    ただ、どのようにそれを実現したのかが書かれており、教育という目線ではあまりみることができなかった。

    起業の仕方、資金をどうするかなどの苦しかったことが多く書かれており、子どものためにという視点は少なかったように思う。

  • アメリカで、大学卒業生の理想の就職先ランキングトップ10にも入ることもある「ティーチ・フォー・アメリカ」の創始者が、その立ち上げから事業の発展までの過程を綴っている。

    1988年に設立されたということですでに30年以上の持つ組織になっているが、設立から最初の数年間は、財政的に非常に厳しい中での運営であったということが、よく分かった。

    NPO組織ということで、さまざまな企業や財団からの支援によって活動が成立するが、実績がない状態でこのような支援を集めるということは、至難の業である。印象としては、手あたり次第、できることは何でもやるという形で、資金を集めていったということを感じた。

    変革を起こすための組織を立ち上げるためには、理屈だけではなく、情熱をもって愚直にやり続けるということも大切なのだということを強く感じた。

    一方で、このような実績はないがビジョンとして見どころのある人や活動を支援する人が、アメリカ社会の中のどこかにはいるということにも、考えさせられた。

    いずれはティーチ・フォー・アメリカのような活動につながっていく芽を、何らかの形で支援したいと考えている数多くの組織や個人がいるということが、アメリカ社会においてはひとつの強みになっていると思う。

    一方で、教育プログラム自体の開発については、公判で若干触れられているものの、本書の中ではそれほど多くは触れられていなかった。

    大学を出たばかりの学生が2年間、教育が行き届いていない地域に入って教員をするというプログラムであるが、その教員としての能力を支援し、向上させるためのプログラムについては、おそらく多くの課題や工夫があったのではないかと思う。

    このような点は、別の書籍で主に触れられているのだろうか。

    いずれにしても、非常にエネルギーにあふれたNPOの草創期の物語で、読んでいて力をもらえるような本だった。

  •  今日の学生たちは、メディアが言うのとは反対に、だれよりも「アメリカに恩返しがしたい」と思っています。欠けているものがあるとすれば、それは共有できるスピリット、そしてミッションです。

    ■評価項目
    粘り強さ/コミットメント/誠実さ/口頭でのコミュニケーション能力/熱意/繊細さ/独立心と積極性/組織のなかでの働ける能力/自己評価する力/生徒に認められなくても行動できる力/概念的な能力・知性

     初年度を通して私が自信を失わずにいられたのは、何かの奇跡のように思える。 なぜ、ストレス や仕事量に打ちのめされなかったのだろう。必要な応募者を集められないとか、新人教師を雇うよ う学区を説得できないとか、必要な資金を集められないなどと考えて、断念しなかったのはなぜだ ろう。私が持ちこたえられたのは、私のアイディアが持っている力を盲目的に信じていたからだと 思う。失敗の可能性が現実的にあるのか、実のところ私には、よくわからなかった。ただ、そうし た考えがふと心をよぎったことは数回あった。

     重要なのは、あなたが子供たちから尊敬され、賞賛される力があるかどうかです。子供たちは、私たちの真の思いやりと関心を必要としています。つまり、子供たちのことを考えているということ、そして彼らを信じているということを示さなければならないのです。

     ニックは、本部と各地のオフィスのあいだに生じていた「こちら側 対 あちら側」という雰囲気を和らげるよう、両者の関係を改善する方法も教えてくれた。彼の提案は、「本部にいるリーダー全員が、担当する分野の展開については、本部でも各地のオフィスでも責任を持つ」というものだった。これにより、各地のオフィスからの情報や関心が、本部の方針にも確実に反映されることになる。

     「よい文章、思考、話し方」「責任」「継続的学習」「素直さ」「達成」「効率」「誠意」

     これまでの年月で、私は重要なことを学んだ。第一に、ティーチ・フォー・アメリカのミッショ ンの力強さだ。当初から私はティーチ・フォー・アメリカのアイディアに確信を抱いていたが、敢育における課題の大きさを考えはじめたときに、わき道にそれてしまった。結局、私は戻ってきて、教育における不平等が存在する限りティーチ・フォー・アメリカは不可欠だと考えるようになった。私たちは、今日成長しつつある子供たちを助けるだけでなく、変化を起こそうという思いを持った、民間のリーダーを大勢育成している。このリーダーたちが今後成し遂げるであろうことは、私が新たな活動を形成して達成できることよりも、はるかに大きい。
     また、ニック・グローバーが以前私たちに言ったように、プログラムと資金調達の面のバランスを保つことがいかに重要であるかも学んだ。お金がなければ計画を続けていくことはできない。同時に、限られた資金を何に使うかに関して、戦略的に考えることのメリットも学んだ。資金面でのむずかしい選択を迫られたことで、私たちのプログラムは強化された。
     そして、ここ何年かで学んだなかでおそらくもっとも重要なのは、有能な組織を懸命につくりあげることによってのみ、ミッションを遂行できるということだ。ティーチ・フォー・アメリカは、私がよいマネジャーになる方法を学んで初めて、力を発揮できる。そして私はそのための多くを学んだ。能力のある人たちで私の周りを固め、明確な目標を定めてともに働き、そして彼らの能力を伸ばすことがいかに重要か。私は、自分がスタッフのどこを評価するかを学び、評価に値する価値を身につけてもらうにはどのような文化をつくればいいかも学んだ。
     要するに、私が学んだのは、ミッションを実現しようとするのであれば、理想的なビジョンに加えて、それ以上のものが必要だということだ。最終的には、大きなアイディアは重要だし不可欠だ。だが、それを実行するための基本となる部分に十分に注意を払わなければ、アイディアは実現しない。この教訓を活かせば、この先ティーチ・フォー・アメリカをさらに強化していくことができるだろう。また、有能なコープ・メンバーや卒業生はどうしたら誕生するのか、そして、すべての子供たちが真の力を発揮できるような教育システムを立ち上げるには何が必要かを考える際にも、この教訓を活かしていくことができるだろう。

     だが、さまざまな学年でさまざまな科目を教える、傑出した教師たちと出会うなかで(声の小さな人も大きな人も、クリエイティブな人も分析的な人もいた)、私はよい指導とはカリスマ性の問題ではないと気づいた。魔法のようなものでも、説明のつかないものでもない。傑出した教師たちは、生徒に対して明確な目標を設定し、人々を(この場合は生徒とその家族を)目標に向かって努力するよう動機づけ、目標を達成するためひたむきに努力し、指導の効果を常にチェックして実績をあげていく。要するに、よい教師とは、よいリーダーなのだ。

     理想の芽を育てる「大地、太陽、水」は、つまり「未知のアイディアに目と耳を傾けるオープンさ」であり、「そのアイディアをリスクを取って支援する寛大さ」という「アメリカ的」姿勢にほかならない。

  • 教育に関して何かしらの関心がある人は読んでおくべき1冊。日本でも同様の課題は起きている。

    【ウェンディ・コップとは?】
    無茶苦茶な計画を立てる、いつもギリギリで生きながらえているが、常に「いつか全ての子供たちに」という志をもち周囲を動かした。

    【TFAの課題認識】
    低所得層/マイノリティに属す生徒の学業達成率は、白人/中流層/富裕層の生徒に比べて低い。なぜなら、試験で低成績の教師は、低所得層の生徒に割り当てられる傾向にある。

    【TFAの考えた打ち手】
    米国で最も優秀な大学からトップクラスの卒業生を採用し、教育困難地域で2年間教師として任務に着かせる。後にTFAに携わった人間が教育的不平等を是正する根本的な変革をリードしていく。

    キーワード:決して綺麗なサクセスストーリーではない。現場の思考錯誤を実感できる一冊

  • 事業の立ち上げから軌道に乗るまでの道程を描いた書籍だ。
    社会経験がない一大学生が「平等な教育」を目標に掲げ、実現していく。
    飾る部分が殆んどなくなく、資金調達等の苦悩ぶりを生々しく当時の状況を記している。
    目標を達成する為に重要なエッセンスが詰まっている書籍であると思う。

  • アメリカで今一番就活生に評価を得ているNPOの本を読んだ。

    ファンドレイジングの難しさ、理想と想いに出資を多額に積むアメリカの文化、非常に勉強になった。

  • TeachForAmericaの立ち上げから軌道に乗るまでのマネジメント記。Teachの部分に興味があって読んでみたけど,多くは金を集めてくる話だった。お金がなければ立ちゆかないのだから,理念のために泥臭い仕事をし続ける著者の根性はすごい。ずっと誰かから金を集め続ける仕事がこの先続くのかと思うと私ならぞっとする。すぐに事業化して独立してやっていけるようにと思ってしまう。
    日本でも同じようなことをしている人はいるのかな。

  • 現在、社会的企業として名声のあるTeach For Americaの挫折と成功について、詳細に描かれた自伝。社会や国家のために良くすることを行うためには、全力で取り組みすべてを投げ打つ必要があるのだと感じた。

  • アメリカの教育制度や社会的バックグラウンドは日本とは違うけれども、すごく大きくて野心的なビジョンをもった事業だと思う。具体的な成功談は分かったような分からないような伝わりにくい内容だと思ったけれど、自分が卒論で書いたことと実に似通った問題意識に感銘を受けた。TFJのこと調べてみよう。

  • 教育格差のレベルが他国と段違いのアメリカならでは。しかし、凄い情熱だ。彼女の不屈の闘志に私も励まされるような感じがした。

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