対立の炎にとどまる――自他のあらゆる側面と向き合い、未来を共に変えるエルダーシップ

  • 英治出版
4.09
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  • Amazon.co.jp ・本 (420ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862763068

作品紹介・あらすじ

怒りの渦中にこそ 新しい対話が生まれる

旧ソ連諸国の民族紛争、日本企業におけるジェンダー格差、職場の人間関係……。
自分と相手の奥底にある感情に耳を傾け、あらゆる対立の場に変容をもたらす「ワールドワーク」の実践書。
世界のリーダー/ファシリテーターから支持される名著、完訳復刊!

感想・レビュー・書評

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  •  冒頭から「ワールドワーク」「エルダーシップ」「アウェアネス」など聞き慣れないカタカナ用語が雪崩のように出てくるので頭を抱えてしまった。自己啓発本の類を読むといつも思うけれど、こういう独自に意味を付与された用語を使うことなく内容を説明することは本当にできないものなのだろうか…何が言いたいのか全然頭に入ってこないよ…

     とは言え中盤以降、少しずつ用語に慣れてくるにしたがって徐々に内容を掴めるようになってくる。まず本書で語られる「ワールドワーク」という試み。対立や衝突が起こったとき、それを直ちに止めたり仲裁したりしようとするのではなく、その只中(「ホットスポット」と呼ばれる)に敢えてとどまることで新たな対話が生まれ、和解や相互理解が可能になるという考え方だ。日常会話というよりは政治的な集会やカウンセリングなどの場において、さらに当事者同士ではなく第三者的な立場にいる人間にとって重要となる概念のように思えた。

     127ページあたりの「消極的な復讐心」について書かれている章も非常に興味深かった。共感の嵐。ただここも、自身の復讐心にどう対応するかという視点ではなく、復讐心を抱えた人と対峙したとき「ワールドワーカー」としてどのように振る舞うべきかという視点で進んでいくので、自分の問題を解決したいと思って読んでいくと思ったような答えは得られず、やきもきしてしまうかも。わたしは立派な「ワールドワーカー」となって人々や世界の問題を解決するより先に、立派な「ワールドワーカー」と出会って自分の問題を解決したい…傷付けられたときに涙を堪えて笑って誤魔化したり何事もなかったように振る舞ったりすることが子どもの頃から癖になってしまっていて(だって「パワー」を持った相手を前にしてそうし続けるしかなかったから)、大人になった今もまさに「消極的な復讐心」に囚われている日々なのよ…つらい。

     第七章は虐待についての章。虐待被害者と対話する際のステップが示されていて、読みながら著者と対話しているような、話を聞いてもらっているような気分になった。子どもの頃のことを思い出すのは辛いし、いまだにベッドに入っても何時間も眠れなくて苦しくなる夜もあるけれど、そういう話、誰かにちゃんと聞いてもらったことないなあ。恥ずかしい記憶を思い出すこと自体が苦痛だから蓋をする。だからいつまで経っても当時の屈辱が薄れずに残り続ける。

     この本を読みながら一番強く思ったのは、ここでは何を言っても泣いても喚いてもいいですよという場所が欲しい、ということ。長年、抑圧続けてきた自分の怒りやネガティヴな感情と心ゆくまで向き合って吐き出して楽になりたい。カウンセリングでも行こうかな。誰かに、わたしが話し終わるまで否定せず批判せず論破しようとせず何も言わずじっとそばで聞いていてほしい。でもそれと同時に、誰かにとって自分がそういう存在になれたらもしかするとその人の救いになれるのかもしれないとも思った。きっとすごく難しいけれどそれができたら自分にとってもすごくプラスになるような気がした。

  • ミンデルの長らく絶版になっていた「紛争の心理学」の新訳の完訳版。

    ひさしぶりのミンデル。

    最近は、ナラティヴのほうに関心が向いていて、方法論的にはナラティヴとプロセスワークは対極にある気がしていたのだが、この本を読むと、意外に共通点があることを発見して、驚き。

    つまり、権力関係の見方とか、社会的なコンテキストの捉え方とかは、かなり共通点が多い。

    ただ、状況を見立てたあとの介入の仕方は、かなり違う。でも、もしかするとなにか統合することができるかもしれないヒントもあるような気がした。

    この本がでたのは、ソ連崩壊後の時期。さまざまな問題がでてくるにもかかわらず、なんらかの新しい世界が開かれていくかもしれない希望もあった時だったのかな?

    今読むと楽観的に思えるビジョンもあるし、やっぱ、ミンデルは神秘主義的なあやしさがあるなとも思う。で、そのあたりのところが、以前の抄訳版では訳されなかった部分だったりしたことがわかって、ちょっと面白かった。

  • 対立を解決しようとするのではなく、そこから学び、なるがままに任せるエルダーシップ。対立は解決するべき問題ではなく理解するべき現象である、というNVCやミディエーションの考え方にも近いのかなぁと思った。
    また自分のあり方、ランクという言い方をしているけれどもその場における影響について自覚的であれ、というメッセージも響いた。

  • ランクの概念を初めて知った。

    ランクが高い人は、そのランクの影響に気づかない。

    もっと冷静になれ、感情的にならないでほしい、対抗の手段を選んでほしい等は、ランクの低い人を周縁化することになる。

    トラブルメーカーは可能性を秘めた教師、話を聞かれずにおかれた人。

    対立に留まり、そのエネルギーを創造的な方に向ける。

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著者プロフィール

プロセスワーク、ワールドワークの創始者。マサチューセッツ工科大学大学院修士課程終了(論理物理学)、ユニオン大学院Ph.D.(臨床心理学)。ユング心理学、老荘思想、量子力学、コミュニケーション理論、市民社会運動などの知恵をもとに個人と集団の葛藤・対立を扱うプロセスワークを開発。世界中の社会・政治リーダーやファシリテーターの自己変容を支援している。著作に『対立を歓迎するリーダーシップ』(日本能率協会マネジメントセンター)、『ワールドワーク』(誠信書房)、『プロセス指向のドリームワーク』(春秋社)など多数。

「2022年 『対立の炎にとどまる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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