関係人口をつくるー定住でも交流でもないローカルイノベーション

著者 :
制作 : シーズ総合政策研究所 
  • 木楽舎
3.15
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本棚登録 : 245
感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863241183

作品紹介・あらすじ

【地域を元気にする「第3の人口」!”過疎最先端地域”島根から学ぶ、地域との関わり方】
人口減少時代を迎えた日本。いま地方都市では、過疎化や少子高齢化が進み、全国の地方自治体が移住・定住に力を入れている。でもよく考えてみると、どこかの定住人口が増えれば、結局どこかが減ることになるのではないか?
実は、人口が減ることなく“増えるばかり"で、地域を元気にできる「第三の人口」がある。それは、住んでいなくても継続的に特定の地域に関わる人を指す「関係人口」だ。この関係人口の存在が日本の地方をおもしろくし、社会をよくしていくヒントになるのではないだろうか?例えば、ひと月のうち一週間をどこかの地域で過ごして自分の商いをはじめたり、東京で地域のおいしいものを食べる会を開いたり、東京でとある地域の情報のみをラジオで発信したり……。
一例として、本著で共通しているのは、東京にいながら島根のソーシャルな事例を学び、島根との関わり方を考える講座「しまコトアカデミー」の受講生だったということ。本書には、同講座がどのように関係人口を増やしていったのかが描かれている。そして、そのことが結果的に島根への移住者を増やし、島根を元気にすることにつながっているということもだ。
これからの地方、そして日本の未来をよりよくしていくかもしれない「関係人口」という考え方。“過疎最先端"の島根を舞台にした、最先端の地域との関わり方、学んでみませんか。

感想・レビュー・書評

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  • 流行りのビッグワードであったLOHASは形だけのカッコよさや表面的なアプローチの多さが見え隠れして敬遠し、今盛んにいわれているSDGsも、形だけと本気の狭間で色々な立ち位置の企業や団体が入り乱れる姿を冷淡に眺め、他人事として捉える人が多い気がする。
    それでも社会は、少しづつよい方へ向かって行って欲しいと願いつつ、小さなあがきを繰り返す人も増えている。そんな中で「関係性人口」という考え方は実践的な可能性を秘めていると感じます。
    確かに潮流はきていて、より大きなうねりになる関わり方を探る価値は有るなぁと思い読了。
    行動あるのみですね。

  • 地方創生への手段として①移住定住②交流観光につづく③関係人口をつくるの提唱を整理した内容。今後の人口減少を食い止められない状況下で、①②では自治体間でパイの取り合いをするだけそんなのやめようというアンチテーゼが含まれる。住むか住まないかではなく関わるか関わらないか。

    都市部でも地方と関われるそのやり方、移住定住以外の滞在の仕方、それらにきっかけを持つひとを増やすための方法などが紹介される。

    それらの工夫を通して、あくまで移住定住を目的としないと主張しながらも移住者が多く生まれたことがインパクトになっている。結局、移住者が発生しないと地方経済学的にウィンウィンになれないのでは?という疑問が頭に残り、関係人口の増加でそれを克服できるイメージや順序が見えなかった。

  • まさにしまコトアカデミーを受講している今、身に染みる部分がたくさんあった。
    みんなただ楽しそうだけど、なんなのだろう、その部分が垣間見れる一冊。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/699545

  • 都市部の人は繋がりを求めている。そのつながりを提供できるのが、関係人口による地域再生であり、それは地域にとっても都市部の人にとってもWin-Winの関係になりうる。

  • 脱成長や人口減少社会、共同体というキーワードを掘っていると地方への関心が高まる。その流れで地方との自分のかかわり方を模索する上で移住でも観光でもない関係人口というものがあると知ってこの本を読んだ。

    結論的にいえば、関係人口とは、地方とのつながりを作ることによりその土地に愛着を感じ、継続的な関係性を作ることと言えそうだ。

    人口減少する中で観光や移住でパイを奪い合うのではなく、いろんな地域にいろんな関係性をもつ関係人口を増やすというのが有効ではないかとこの本はいう。

    都会でよくあるUターン説明会では、市の職員が良さを説明したりするが、結局実際のふれあいを得ることは難しい。また、仮に旅行に行ってもそこは観光地とその周辺にいるだけで、日常とのつながり、地域との交流というのは難しい。
    関係人口の創出には寄与しづらい。
    それを克服するための作者も関わっている「しまコトアカデミー」であると。
    そこでは、セミナーというかインターンと呼ばれる授業が何回か行われる。授業の中で座学もあれば現地でのフィールドワークもあると。その中で、地域との関係値を見つけていく。それにより継続的な関係性をつくる一助にするというわけだ。

    田舎がない都会育ちの方、Uターンして地元に貢献したいけど貢献の仕方が分からない方、今の働き方に疑問をもっている方という背景を持つ人にはすごく刺さる取り組みなんだろうと感じたし、惹かれる部分も多くあった。
    現状に諸手をあげて肯定できないような都会暮らしをしている人は読んでみると面白いはずだ。

  • SOTOKOTO:木の下
    地域を盛り上げるキーワード:関係人口を増やす、未来をつくっている手応え、自分ごととして楽しい

  • 物の本によると「ソリューションは組織的に起こせるが、イノベーションは属人的にしか起こせない」と書かれていて、まちづくりや過疎地対策にはその両面がある気がする。

    例えば過疎地の公共交通維持であれば、乗合タクシーなど制度的な解決策(ソリューション)があり、予算さえ確保すればどこの自治体でも再現できる。

    一方で関係人口の創出は、それに携わる関係者の人間的魅力やセンス、才覚や人脈などがモノを言うイノベーション的な事業ではないかと思う。だから他の自治体が表面的に真似しても再現が難しく効果が出ない。だから普遍的な解決策にならない。

    だとしたら、しまコトアカデミーの意義とは何か?ソトコト編集長や地元のカリスマNPOなど、尖った人材を巻き込めたことではないか。そしてやるべきことは、もっともっと大勢の尖った人材を巻き込んでゆくことではないか。なんの保証もないけれど、それが未来のイノベーションにつながると信じて。

  • 地方移住の現実と島根を中心にした取り組み事例の本。こういった本はあたかも素晴らしい効果があるように書かれているが、結果のエビデンスがない。
    (アンケートは費用が発生しているため、満足と思いたい気持ちが働く)実際に、何が、どのように、数値で良くなったか?を示せないとただの自己満足。将来的にふるさとに貢献できる取り組みをしたいが、あまりこの本は参考にならない。コロナで繋がれない今、ビデオでは熱量の伝播は難しく、参加者は決してモチベーションが高いわけではない。今後、このコロナ堝でどのように啓蒙することができるのか?今後の課題だと思う。

  • ・よそ者は定住しなくても効果をもたらす。よそ者が関わること自体が、地域の力になる。
    ・人口減少が続いてきた地域では、住民の意識の後退やあきらめなどが報告される。
    ・ソーシャルな若い世代にとって地方は「チャンスがたくさんあり、人が成長できる場所」と映ってさえいる。
    ・関係案内所:地域の面白い人を紹介したり、地域への関わり方を案内したりする場所。
    ・完璧であったり、一人勝ちしなかったりする。隙やほころびが必要。
    ・潜在的に町のことを考えている層が、次のステージに進める場所。
    ・島根に将来戻ってくる人たちのための「いけす」を東京で作るようなイメージ。
    ・地域にとって課題だと考えていることが「関わりしろ」

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著者プロフィール

島根県浜田市生まれ。大阪大学文学部卒。1999年、山陰中央新報社に入社し、琉球新報社との合同企画「環(めぐ)りの海−竹島と尖閣」で2013年新聞協会賞を受賞。2014年秋、同社を退職し、フリーのローカルジャーナリストとして、変わらず島根に暮らしながら、地域のニュースを記録している。
主な著書に『関係人口をつくる―定住でも交流でもないローカルイノベーション』(2017年、木楽舎)、『未来を変えた島の学校―隠岐島前発ふるさと再興への挑戦』(共著、2015年、岩波書店)など。2018年度総務省ふるさとづくり大賞奨励賞受賞。2020年、大阪大学大学院人間科学研究科後期課程修了。博士(人間科学)。2021年4月、島根県立大学地域政策学部准教授に着任。また、過疎の発祥地から「過疎は終わった!」と問い、百年続けることを掲げる年刊誌『みんなでつくる中国山地』プロジェクトも仲間と始めた。

「2021年 『関係人口の社会学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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