新訂版 “I t”(それ)と呼ばれた子 少年期 (ヴィレッジブックス N ヘ 1-11)
- ヴィレッジブックス (2010年6月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
- / ISBN・EAN: 9784863322493
作品紹介・あらすじ
「ぼくには、どこにも居場所がない」-実母によるすさまじい虐待から逃れ、ようやく子どもらしくのびのび暮らせると思えた里子としての暮らし。しかし、そこでも数々の試練がデイヴを待ちうけていた。母親から離れてもなお恐怖にさいなまれ、それでも母親に愛されたいという思いに心を揺さぶられる日々。学校や少年院でのつらい出来事や世間の偏見の目にさらされながら、それでも希望を捨てずに自分の生き方を探しつづける。米国カリフォルニア州史上最悪といわれた児童虐待の体験者が自ら明かす、少年期の記録。
感想・レビュー・書評
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虐待を受けた被害者だからこそ語ることのできる、打ちのめされた状態から「どのようにもがいて、社会(の「本流」とされる部分)に適応していったのか」という物語は迫力があります。
軽々しく「理解出来る」とは言えないことですし、もちろん日本とアメリカの事情も異なることは承知の上ですが、おそらく日本にも、類似の経験をして苦労している子どもたちや、彼らを救おうと奮闘しながら無力感に苛まれる福祉担当者、使命感や愛情をもって彼らに接する里親たちがいるのだろうと想像します。
ある意味「恵まれた環境」ともいえる私立学校で勤務している者として何ができるのか、ハッキリしたイメージは持てませんが、社会が「構成員全員で解決すべき問題があるのだ(例えば、現実に虐待を受けて社会性も含め様々な困難を抱える子どもがいること。また、虐待を止められずにいる大人がいること。彼らをどうにか救おうと努力し続けている人がいること。そして、無関心によりその問題を放置したり、「里子」となった子ども=問題児、という偏見をもって接したりする雰囲気が社会に色濃く残っていること)」という問題提起を生徒に対して行い、長期的な視点で取り組んでいくことが求められているのでは、とも感じます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
18歳までの物語です。あまりにも過酷な運命を経てここまで生きている、人格が保たれているということに驚きでした。自分の運命を受け入れて自分を見つめ直し未来へと行動を移す。主人公という人間も強いですが周りの環境や人に恵まれた奇跡のはてに主人公は存在するのだろうと思いました。
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色んな意味で壮絶です。
親ガチャだとかなんだとか言ったりもありますが,金持ちだとか貧乏だとかの話だけでも当然ないですよね。
弱いものが守られないというのはとても辛い気持ちになります。
今後どのような成長をするのかが楽しみです。 -
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私には絶対に体験できないこと、知らなかったこと虐待について深く知らなくてそれが当たり前になれるように願います。また、実体験ということもあり文字上からも虐待の酷さが伺えて今自分が生きている悩んでいることも幸せに感じるありがたさを持ちました。
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「普通」という概念の扱いの難しさ。
みんなそれぞれ「普通」を持っていて、まさかそれが他の人にとって「普通」じゃないなんて思っていなくて。
だからわざわざ自分の「普通」について他の人と話し合ったりしない。だからズレにも気づかない。
この本で感じる、「変な人」の多さも、大人の頼りなさも、どう言われてもなかなか理解できないデイヴくんの行動も、全部その人たちにとっては「普通」なのだ。
自分の「普通」は他人にとっては「普通」じゃない。
普通を疑うこと。
分かりきってると思うことや、当たり前だと思うこと、逆にどう考えても理解できない事、それらについて、率直に意見を交わすことの大事さがよくわかります。 -
主人公が母親から解放されたところから物語は始まる。どんなにひどい目にあわされても、やはり子供は親に好かれたい、認められたいと思ってしまうものだということが、よく伝わってくる描写があった。決して読んでいて楽しい本ではないが、主人公のような想像を絶する環境で育った子供が現実にいるということを、大人も子供も知っておくべきだと思った。
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自分の首を絞めることになると分かっているのに、次々と問題を起こしていくのは、やはり虐待が原因で心が歪んでしまったからなのでしょうか。 仲間に認めてもらいたくて・・・という必死な思いが切なかったです。