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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863668898

感想・レビュー・書評

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  • 同名のシンポジウムの内容をまとめたもの。さまざまな分野の専門家を集め、講話とパネルディスカッションを行い意見交換しているが、分野ごと縦割りになっている研究分野の専門家が文化財の維持や保護といった取り組みに対して、考えを述べ合う機会は極めて重要であると思う。このようなシンポジウムを中心となって取り組まれた彬子女王殿下の功績は多大であって、あらためて敬意を表したい。
    デビット・アトキンソン氏が、著書「新・観光立国論」の中で、日本文化にビジネス的要素をもっと取り入れ、経済的に得た利益をもって文化財の維持、整備をしていくことを提唱しているが、これは彬子女王殿下のお考えとも相通ずるものがあり、今後の方向性を示していると思う。
    「文化財修理は、あくまでも「現状維持の手段」という大原則を踏み越えてはならない。文化財には、過度な修理は絶対に許されないのである。これに加えて、修理した箇所は将来の新たな修理のために、元の状態に戻せること、すなわち「可逆性の確保」も求められる。この2点が、文化財修理における原理原則である」p111
    「(赤間亮)隠しておくべきものはそのまま隠しておくというのが京都のありかた」p125
    「(文化財の海外流出)流出したっていう言葉をよく日本人は使います。流出というのは残念だという思いがあるんです。全然残念じゃないですね。流出したことによって海外でも日本人は仕事ができるようになりましたし、日本のことを理解してもらってプライスさんにこちらに来てもらうことになったし、こうやって世界中の文化の共有化ができたということは、日本が文化立国というか文化大国として役割を果たせるだろう、そういう大きな視点からいうと、むしろ公開していきたい」p127
    「埋蔵文化財は掘らないことにこしたことはない。でも掘らないと調査できない。公開する、しないと何も研究が進まない」p130
    「(文化財は専門家にしか見せない)日本はこれから育っていく人物に教育をほどこさないという閉鎖的なところがあって、それはちょっとだめじゃないかなと、アメリカから見ていると思います」p133
    「(千玄室)私も今年で88歳であるが、茶の道でずっと生きてきた。明日死んでも悔いはないと思っているが、まだまだ修行が未熟であるので、もう少し目鼻立ちが立つように、自分自身が修道を激しくやらないと、と言い聞かせている毎日である。終生の修行であらねばならない」p141
    「(保有文化財)国からの名称保護はあっても、自分に収入があるということで、税金を取られていく。相続税も、有無を言わさず蔵の中に税務調査に入られ、税金を納めた。名称は「文化財」であるが、特に税金免除というものはない。これは、他国と大きく異なるところで、外国には、文化財に対し大きな保護がある(特にフランス)」p143
    「出征するとき、実は少しほっとした。「もうこの家を継げなくなった。海軍軍人になったのだから、この家は弟に任せて、自分は思う存分戦ってくれば良いのだ」と思うと、20年間の張りつめた気持ちが、はっと抜けたように感じた。利休居士には大変申し訳なかったのだが「私は一門を代表して戦争に赴く」と別の覚悟をもって出征した」p144
    「(彬子女王)文化というものは需要と供給で成り立っていると思うんですね。補助金ありきで生活が成り立つようになってしまうと、立ち行かないと思うんですね」p320
    「(竹工芸 田辺小竹)僕らを文化財として保護してもらうのではなくて、やっぱり市場で僕たちは毎日戦わなくてはいけない。ですから知恵とか知識とか情報とかアイデアというものを、僕たちはどう育てていくのかというのが一番のテーマになると思います」p322

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784863668898

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著者プロフィール

京都産業大学日本文化研究所特別教授

「2022年 『ベスト・エッセイ2022』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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