母の愛、僕のラブ

著者 :
  • 書肆侃侃房
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本棚登録 : 193
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863853874

作品紹介・あらすじ

第一回笹井宏之賞大賞受賞!

【自選五首】
プリキュアになるならわたしはキュアおでん 熱いハートのキュアおでんだよ
なんの樹か知らないけれど黄金の葉がほろほろとみんなの肩へ
バーミヤンの桃ぱっかんと割れる夜あなたを殴れば店員がくる
いつぶりか消しゴムに触れ消しゴムの静けさが胸へひろがる火曜
飽きるほど誕生日してめくるめくまっ白な髪を抱きしめあおう

感想・レビュー・書評

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  • 帯のキュアおでんの歌が最強に可愛くて手に取った。
    「プリキュアになるならわたしはキュアおでん 熱いハートのキュアおでんだよ」
    それに、
    あの友は……小田原でも生きている、の歌を読んだのは短歌のガチャポンだったかしら???
    あぁ、あの人なのね、と気付く。

    けれど読めばこの歌集は、生きることを歌う歌集だった。
    生きるって、上がったり下がったりとっ散らかってて、色とりどりでぐちゃぐちゃで、
    その中にふと、綺麗や可愛いや嬉しいが紛れ込んでいるものだと思う。
    くさっていると見逃しちゃうけど、いちいち気付いて幸せを感じる人で在りたいなぁと思って生きてきた。
    そのことをまた改めて強く思った。

    「おでん しかも大根として生きてゆく わたしはわたしの熱源になる」

    「ケンタッキー詰めて河原に行きましょう、ピースニピース五ピースパック」

    「「弟よ、全責任のはんぶんを持ってわたしは嫁いでいくね」」

    「桃色の片想い 揖保乃糸 いろつきの麺をよろこぶ大人になりたい」

    「デスメタルバンド心にひとつありライブを続けて解散しない」

    "peace2peace、5pieceパック"(多分だけど。)もそうだけど、言葉遊びのような、
    全く違う単語の欠片を見付ける目線。
    それは見付けるというか、浮かび上がるように?感じられる心に幾度もハッとさせられた。

    「ヌードルに潜んだヌーに湯を注ぐ 三時間後に台風がくる」

    「カロリーメイトメイトが欲しい雨上がり駅のホームでほろほろ食めば」

    どうしたことか、柴田さんの"あとがき"を読んでいたら涙が出てきた。
    「私は、私の大切な家族とともに」から「私のことは忘れて、あなたにしてください。」の部分。
    自分でも、私のどこにどのように触れられたのか分からないが、泣けた。
    きっとそれだけこの歌集が、私の真ん中まで届いたのだろう。

  • 良かった!
    書き過ぎている短歌は、わかりやすいけれどキャッチコピーとどう違うんだろう、と思ってしまったりする。
    でも今作は絶妙に書き過ぎていない歌ばかり。
    それでも、感情や感覚の手触りはしっかり伝わる。
    直接的な語を用いなくても、孤独や諦念が文字の間から滲み出てくる。
    好きだなぁ…。
    お気に入りの本屋さんの、ほぼお任せの選書の中の一冊で、ドンピシャな選書にその本屋さんがますますお気に入りになりました。

  • タイトル見て、いわゆる「母への愛情」ものかなと思って手に取ったが、もっとはるかに大きな、ジェンダーや社会への強い思いが詰まった作品だった。

  • 表紙が可愛く、タイトルにも惹かれて。

    クスッと笑えるものや、グッとくるもの。
    こういうのが詠めるのが羨ましい。

  • 字の通り短い歌なのに、その中にぎっしり情景や感情が凝縮されている。学校で詠む短歌がこの本だったら、きっと短歌に魅了されて、短歌の事で日常頭がいっぱいだっただろうなと思う。

  • キュアおでんの歌をどこかで見て、記憶に残っていた。
    本書はタイトルに惹かれ(複雑な何かがありそうな予感)購入したが、偶然の再会だった。

    難しくない表現で、グッと心にねじ込みにくる、そんな印象。
    とても好き。
    あとがきも良かった。
    繰り返し手に取りたい一冊。

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著者プロフィール

歌人、ライター。第2回石井僚一短歌賞次席。第1回笹井宏之賞大賞受賞により、第一歌集『母の愛、僕のラブ』(書肆侃侃房)を出版。東京都在住。身長164センチ。

「2023年 『現代短歌パスポート1 シュガーしらしら号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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