山羊と水葬

  • 書肆侃侃房
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863854949

作品紹介・あらすじ

この豊かに実のなる大樹の根っこはどうなっているんだろうと掘ってみたら、北海道の雪原や、ジャズや、アフリカの大地や、詩や、動物たちがざっくざっく出てきた。
くぼたさんの知とフェアネスと言語感覚は、こんなにたくさんの養分の上に育っていたのだ!――岸本佐知子〈翻訳家〉


吹雪もやんで、きらきらと雪原に光が反射して、目が痛いほど晴れわたる朝、山羊小屋から緊張した気配が伝わってきた。山羊が鼠捕りの毒だんごを食べたのだ。積雪は一メートルをゆうに超し、土まで掘るのはとても無理。凍った山羊の体を馬橇にのせて、吹雪のなかを石狩川の鉄橋へ。男たちが声を合わせて筵ごと持ちあげ、緑色の欄干の向こうへ落とす。水葬だ。水しぶきが見えたかどうか。白く煙る雪のなかに「それ」は消えていった。少女の記憶はそこでふっつり途切れる。     「山羊と水葬」より

感想・レビュー・書評

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  • 「J・M・クッツェーと真実」「J・M・クッツェー 少年時代の写真」 国離れて得た 自己省察の視座 朝日新聞書評から|好書好日
    https://book.asahi.com/article/14485013

    oyanagikae.net
    http://oyanagikae.net/index.html

    エスペランサの部屋
    https://esperanzasroom.blogspot.com/

    『山羊と水葬』 くぼたのぞみ|エッセイ・評論|書籍|書肆侃侃房
    http://www.kankanbou.com/books/essay/0494

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      <訪問>「山羊と水葬」を書いた くぼたのぞみさん:北海道新聞 どうしん電子版
      https://www.hokkaido-np.co.jp/a...
      <訪問>「山羊と水葬」を書いた くぼたのぞみさん:北海道新聞 どうしん電子版
      https://www.hokkaido-np.co.jp/article/634160?rct=s_books
      2022/01/17
  • この方の翻訳はいくつか読んでいるけれど、ご自身の文章であるエッセイを読むのは初めてだ。文章上手いなあと思いながら読んだ。幼い頃の北海道の話、ジャズの話、ニーナ・シモンの話も面白かったし、藤本和子の本も読みたくなった。

  • くぼたのぞみさんは信頼している翻訳家。「この本良かった!」と思ったら訳者が「くぼたのぞみ」ということが何度か続き、そのうち「くぼたさんが訳しているなら読んでみよう」と思うようになった。クッツェー、シスネロス、アディーチェ…。好きな作家が確実に増えた。しかし私はそれらの作家には共通点があることには気づいていなかったのである。バカだね。
    このごろは翻訳家の方たちもいろいろ発信したりイベントをしたりすることも多いけれど、くぼたさんはそんなに聞かないので、どんな方なのだろうと思って読んだ。
    そして、そうか、そうだったのか、と一気に謎が解けたような思いがした。
    くぼたさん自身の生い立ち、特に開拓民の子孫として北海道の厳しく豊かな自然の中に育ったこと、そしてアイヌの人々を差別する側にいたことへの慚愧の念があったことが、これらの作家を訳したいという思いになったのだ、ということがわかった。
    それから、森崎和江、藤本和子という人たちがバックボーンにあること。そうだね、そりゃそうだね、と納得。特に藤本和子さんの仕事はくぼたさんに大きな影響があったんじゃないだろうか。
    もう一つは、くぼたさん自身が詩人であること。(この本ではじめて知りました。すみません。)詩情みたいなものを感じられるのはそういうことか!と。
    私が現在「いいな」と思う翻訳家はだいたい自分で面白い作品を見つけてくる人なのだが、くぼたさんはその初期の翻訳家かもしれない。
    クッツェーはバッハが好きなのね。嬉しい。確かに彼の小説にはバッハがあっているような気がする。

    これからも翻訳だけでなく、エッセイ、詩の世界でもご活躍いただきたい。

  • 隣町に生まれ育った方が翻訳家で詩人だなんておしゃれ。
    そんな時代から今に通じる思いなど、近所の年配の女性の一生を知れた感じ。素敵。

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著者プロフィール

一九五〇年、北海道新十津川生まれ。翻訳家・詩人。
著書:『J・M・クッツェーと真実』(白水社)、『鏡のなかのボードレール』(共和国)
詩集:『風のなかの記憶』(自家版)、『山羊にひかれて』(書肆山田)、『愛のスクラップブック』(ミッドナイト・プレス)、『記憶のゆきを踏んで』(水牛/インスクリプト)
訳書:J・M・クッツェー『少年時代の写真』(白水社)、『マイケル・K』(岩波文庫)、『鉄の時代』(池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-11、河出文庫)、『サマータイム、青年時代、少年時代││辺境からの三つの〈自伝〉』(インスクリプト)、ポール・オースターとの『往復書簡集』(共訳、岩波書店)、『ダスクランズ』『モラルの話』(共に人文書院)、チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ『なにかが首のまわりに』『アメリカーナ』(共に河出文庫)、『半分のぼった黄色い太陽』『男も女もみんなフェミニストでなきゃ』『イジェアウェレヘ フェニミスト宣言、15の提案』(いずれも河出書房新社)、サンドラ・シスネロス『マンゴー通り、ときどきさよなら』『サンアントニオの青い月』(共に白水Uブックス)、マリーズ・コンデ『心は泣いたり笑ったり』(青土社)、ゾーイ・ウィカム『デイヴィッドの物語』(大月書店)ほか多数。

「2021年 『山羊と水葬』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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