綺麗で端正な訳です。童話というにはせつなく、心破れたものの想いを綴るお話が多いですが…。やっぱり私は、叶わぬ愛や、この世では結ばれぬ純愛のお話に惹かれました。『すずの兵隊さん』『ひなぎく』『人魚の姫』。
人生のゆくたてを思わせる『もみの木』。オリエンタル趣味を反映した佳編『ナイチンゲール』。
2では、『赤い靴』が、とてもよかったです。
小さな頃はみじめに思えて悲しかった『マッチ売りの少女』も、今読むと、こんな形でしか幸せになれない人生もあり、せめて救いがあったこと、清冽な文章に涙を誘われました。
活字や用紙、挿絵も上質で、ゆったり読むには最適。立原えりかさんの解説も、お話の直後に入っていないと、つい飛ばしてしまうと思うので、これはこういう編集で良いと思います。
心寂しい、人といたくない日。愛した人さえも遠い日に、ゆっくり読むもよし。お子さんと一緒にお母様が読まれるもよし。まさに愛蔵版ですね。