蔦重の教え

著者 :
  • 飛鳥新社
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本棚登録 : 282
感想 : 43
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  • Amazon.co.jp ・本 (380ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784864103060

感想・レビュー・書評

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  • 分類すれば本書は、いわゆるタイムスリップものの時代小説、ということになるのだろう。
    しかし、読了してみての印象は、自己啓発本とかビジネス書といった類がしっくりくる。

    現代でいうところの名プロデューサーだった蔦屋重三郎。書店を開き、洒落本などの販売や出版を手掛けた。浮世絵にいち早く目をつけ、歌麿を売り出した人物として知られている。
    実は謎の多い東洲斎写楽の仕掛け人でもあった、という話が最近取り沙汰され、本書内でもそれをにおわせる展開が綴られているが、これは決着がついたのか?などと、島田荘司の『写楽 閉じた国の幻』も思い出しつつ読んだ。(こっちも早く続編が読みたい!いつなんだ、島田さん!)

    時代物といっても語り口は軽妙で読みやすく、そこそこ厚い本だが一気に読める。そもそもタイムスリップものだし、眉唾っぽいエピソードも随所にあり、荒唐無稽と言ってしまえばそれまでだが、単にエンタテイメントとしての楽しさだけでなく、重三郎の敏腕ぶり働きぶりは、社会人の心得としても十分に通用する。ちょっと考えれば当たり前のことかもしれないが、つい忘れがちな心構えを改めて気づかされた。
    ご丁寧に、巻末に「蔦重の教え」が掲載ページつきでリストアップされてもいるじゃないか!
    最後のひと仕掛けもすごくいい。とても楽しい読書体験であった。

    ぜひ、新社会人のみなさんに読んでほしい本書である。

  • 時代を遡れば物事は古い過去ではなく、そこから学び取ることもあると思わせる作品でした。

    物事には限りがあってENDする前にGOALする瞬間に立ち会えればそれは素晴らしいことでしょう。

    単に教えてもらうだけではなく、教えをしっかり理解しそれを実行できればあがりに立ち会えるんだと思います。

    江戸時代にタイムスリップしたいからといって吉原のソープに行くのは禁止とします。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「そこから学び取ることもある」
      蔦重は、名プロデューサーですからね。
      「そこから学び取ることもある」
      蔦重は、名プロデューサーですからね。
      2014/06/12
    • ayaさん
      いい監督に出会えることが人生を成功させる可能性を高めるのかもしれませんね。
      ひとりでできることって限られてきますもんね
      名プロデューサー...
      いい監督に出会えることが人生を成功させる可能性を高めるのかもしれませんね。
      ひとりでできることって限られてきますもんね
      名プロデューサーに出合いたいです。
      2014/06/20
  • 少し前に何かの書評で気になっていたこの本

    内容はというと、
    バブルの時代を持ち前の人好きする性格と
    ノリで乗り切って来た主人公だが
    不況になって、時流にあわずに影では
    良く土下座をするのを皮肉って『ゲザ男』と呼ばれたり、、、。

    社内でリストラか?と噂され、ショックで浴びるように
    酒を飲み、気を失う。。。

    と、気がつけば江戸時代。
    拾ってくれた人物は時の蔦屋重三郎。
    本屋であり、出版社であり、広告代理店であり
    芸術家のパトロンであり、
    時代の時流を産むプロデューサーであった人物。

    そこで暮らすうちに、
    人にはなにが重要なのか?
    仕事の関係づくりとは?
    などなど、時代を作った人物から多くの影響を受け
    時の絵師らとも、歌人らとも交流を持ち
    成長する様子を、物語にしている。

    江戸に興味のある方なら
    読んでいて、うんうんとうなづく場面も多く
    今更ながらに長い平和の時代の
    日本人が作り上げた社会の成熟度が
    読み取れ、とても面白い一冊になっている。

    巷では、ビジネス書として、サラリーマンにも
    評判がいいと聞いている。
    江戸時代にさして、興味がない方にも
    楽しんでもらえる一冊になっている。

    後日談にタイムカプセルのように
    歌麿の下書きを掘り出すシーンで
    蔦重がそれを知り、主人公に
    戒めと温かい言葉とを綴った手紙が見つかる。
    主人公は現代に戻って
    ぎくしゃくしてた家族の関係も
    新しい一歩に踏み出す。

  • 今年15冊目。数年前、蔦屋重三郎を取り上げたサントリー美術館の展示を見に行った。歌麿や写楽のプロデューサーであり、画期的な方法で錦絵や書籍を広めた人物であることを知った。歌麿や写楽がメインではなく、こうした仕掛け人に焦点を当てていた点が気に入り、分厚い図録まで購入してしまった。
    そして、たまたま書店で見つけたこの本。
    上記の企画展と同じ視点で描かれつつ、ビジネスや人生訓が散りばめられていた。
    歴史ライトノベルという感じ。賛否両論あろうが、仕掛け人を取り上げる点が良いし、なおかつ、江戸の習俗や、当時の出版・広告について勉強にもなり、サラッと読めるので私はなかなか面白かった。
    設定がハチャメチャですが。

  • 2025大河ドラマの予習として読んだ
    江戸時代×ビジネス本って感じ
    読みやすかった

  • 万物と未来に感謝する。「お陰様」と「今日様」の話が良い! 頑張ろう私、頑張れる私。面白かった!!

  • すごく期待してたから、その期待度からするとラストは今いちだったかな。 でも読みやすくて楽しい作品。江戸風ビジネス書とでもいいましょうか、生き方の教えがたくさんつまっている作品。ただそれも、素直に蔦重さんの言葉を受け入れる器が、自分にあればの話だな。結構人の好き嫌いの激しい私には【気の合わない人間ほど丁寧に接する】という教えは耳が痛い。【何かを捨てなければ、新しい風は入ってこない】 そうだよ、ほんとにそう。分かっているが、両手はグー。

  • 2021.5.18

  • 仕事で大失敗し、早期退職を命じられた武村。突然タイムスリップした。ときは江戸時代中期。保護しれくれたのは蔦屋重三郎。版元として歌麿、写楽を手掛けた凄腕。彼の側で学ぶ、人の心を掴む方法、版画の製造法、江戸の風物・・・

    めちゃくちゃ面白かった。何も出来ない武村の成長譚あり、蔦重の人柄あり、そして江戸がまるでそこにあるかのように描かれる。

    ビジネス小説風に教訓が差し込まれるのはマイナスだが、それを補って余りあるプラスがった。

    「いいえ。タケさん、蔦重の仕事ぶりを見ていると信じられないかもしれませんが、あの方にあれだけ人望があるのは、約束は必ず守る、というその一点を貫かれているからでございます」

    人が他人との関わりの中で、まず大切にしないといけないのは約束を守るということだろう。そうでないと信用してもらえず、人望もなくなってしまう。そして、守らない約束なら最初からすべきでないということが、蔦重には分かっているわけだ。人が生きるときにリスペクトすべきルールが学べるという意味では、歴史だけでなく、倫理の副読本でもいいかも知れない。

  • 広告代理店の営業マンが江戸時代へタイムスリップ!蔦屋重三郎に拾われた主人公、トップ出版社の企業秘密に迫る(笑)。まあ無理矢理タイムスリップの整合性を取ろうとしないのは割り切れてて潔いけど、喜多川歌麿を狂言回しにしているのが…ご愛敬で済むかなあ。贔屓筋から怒鳴られそう。しかもこの本、実はビジネス書なのか?巻末に、文中にあった「蔦重の教え」がピックアップされてるの。「人は得意なことで大失敗する」とか(笑)

    ところで神田明神の算額って、電卓があったら解けるレベルだったんだろうか?

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著者プロフィール

著者:車浮代 Kuruma Ukiyo
時代小説家/江戸料理・文化研究所代表
大阪出身。企業内グラフィックデザイナーを経て、作家の柘いつか氏に師事。江戸時代の料理の研究、再現(1200種類以上)と、江戸文化に関する講演、 NHK『チコちゃんに叱られる!』『美の壺』『先人たちの底力。知恵泉』などの TV出演や、TBSラジオのレギュラーも。著書に『江戸っ子の食養生』(ワニ ブックスPLUS新書)、『免疫力を高める 最強の浅漬け』(藤田紘一郎氏と 共著/マキノ出版)、『1日1杯の味噌汁が体を守る(』日経プレミアシリーズ)、 『天涯の海 酢屋三代の物語』(潮出版社)、『蔦重の教え(』飛鳥新社/双 葉文庫)ほか多数。西武鉄道「52席の至福 江戸料理トレイン」料理監修も。 『和食Style.jp 』にて「豆腐百珍のすべて」連載中。

「2022年 『江戸の料理本に学ぶ 発酵食品でつくるシンプル養生レシピ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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