鎌仲監督 vs. 福島大学1年生: 3.11を学ぶ若者たちへ (子どもの未来社ブックレット)

  • 子どもの未来社
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  • Amazon.co.jp ・本 (80ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784864120449

作品紹介・あらすじ

「原発と原発事故」をテーマとした福島大学政策学類中里見教養演習ゼミで1年にわたって学んできた大学1年生と、ゲスト講師としてゼミに特別参加した映像作家で映画監督の鎌仲ひとみさんとの間で繰り広げられたホットな対話を1冊のブックレットにまとめました。「原発問題、とりわけ内部被曝と健康被害の問題とどう向き合えばよいのか?」「福島を教訓として、日本人が取り戻すべきものとは何なのか?」…。その核心に迫ります。

感想・レビュー・書評

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  • 2013.10.31〜11.3
    すごくわかりやすく、良かった。子どもにも読ませることができるのでは?中学から高校くらいかなあ?
    人権意識とか、自分はどう思い、どう行動するのかが、問われるんだなあと。これから生きていく上で。

  • 日本の現状や原発問題などが、わかりやすく、大学生の意見を交えながら書いてある。「すべての人間の遺伝子に、”生命体が持っている寿命を生き抜きなさい”というメッセージが書き込まれていると思う」のくだりは真意だとおもう。 
    印税は福島への支援活動に寄付されるとのこと。

  • 「福島原発の事故はフィクションではなく日本の福島で起こった事故です。あなたも当事者ですよ。」という大切なメッセージを貰いました。

  • こないだ土曜にみた映画「内部被ばくを生き抜く」のサイトから、ひさしぶりにミツバチブログへ飛んで、そこで見かけて、ぽちぽちっと買って読んでみた。

    タイトルどおり、鎌仲さんと、福島大学の1年生(昨年度)が、1泊2日の中里見ゼミの合宿で、語りあった記録。ことしの3月まで福島大学に勤めていた中里見さんは、昨年の原発震災が起こる前から、ゼミで原発をテーマにすることを決め、4月に入学してくる新1年生に案内していたそうだ。そして、思いもかけず起こった原発震災のあと、厳しい現実と向きあうことになるであろうゼミに、15人の1年生が参加した。

    中里見さんはこう書いている。
    ▼…原発事故後の福島を覆う独特の「空気」には、原発事故をめぐる、いくつかのきわめて重要な問題を口にしにくいという雰囲気があります。たとえば、私たちの健康被害のリスクがそうです。福島でくらし続けるうえで、だれもが真剣かつ深刻に話題にしなければならない問題の一つであるはずなのに、かえって口にすることが憚られるのです。…(pp.4-5)

    ことしの2月、長野県の小布施でおこなわれたゼミ合宿では、福島をはなれた非日常の空間ということもあってか、普段は口にしにくい質問でも、学生は積極的にできていたように感じると、中里見さんは記す。

    鎌仲さんと1年生15人との対話は、あらかじめ鎌仲さんの映画をなんどか見て、手に入るインタビューなどを読んだ学生たちが鎌仲さんへの質問事項をまとめ、それに鎌仲さんが答えながら、どう思う?と振っていくかたちで続く。

    被害者が自分の言葉と力で語っていかなければという話、当事者がことばにする必要があるという話が、とりわけ印象に残った。
    ▼…あなたたちの世代が感じている理不尽さとか、あなたたちの世代が「こうしてほしい、こうありたい」ということを自分たちのことばにして、共有して、政府とか東京電力にぶつけていくことが必要です。そのことばが力を持てば持つほど、それをサポートする人は広がっていくので、心のなかだけで思っているだけではだめなのです。ことばとして発するということ、ことばを紡いでいくことがだいじ。そこから行動がうまれてくると思うのです。(p.42)

    3時間のゼミのなかでも、鎌仲さんは、問いかけ、答えを待ちながら、「もやもやしたもの」にことばのかたちをつけるよう学生に迫っていく。

    原発をなくしたい、でも経済問題が、雇用問題が…と多くの学生が語る。「まちが原発で成り立っている…」という発言には、すぐさま「成り立っていたんではなくて、それで滅ぼされたんじゃないの」と鎌仲さんのコメントが入る。ことばにする、コミュニケーションする、その時間のなかで考える… 私だったら、この問いにどう答えるだろうと考えもした。鎌仲さんが「当事者性をもつ」ことの大切さを言っているが、自分だったらと問うことは、その一歩かもと思う。

    原発があって営まれてきた生活が、長いところではもう私の歳と同じくらいの年月だけ続いている。その40年なりを、どう変えていけるのかと考えていると、自分はこれまで生きてきた時間をご破算でリセットできるやろかと思い、そんなんできるんかなと今の私はやっぱり思う。そのあとに、どんな暮らしがありうるのか、『「フクシマ」論』を読んだときにも、ぐるぐると考えていたが、今も、ぐるぐる考える。

    被害の補償についての話では、鎌仲さんが、collateral damage(*)のことをあげ、いま、日本政府が福島に対してしようとしていることも似ていると思えると語っている。最小限の犠牲、必要不可欠な犠牲というその理屈は、原爆投下に際してアメリカ政府が、原爆を使わなければ戦争が続いてもっと多くの人が死んだ、原爆によって最小限の犠牲で戦争を終わらせることができたのだと言ったのと同じだと。ここを読んで、日本政府は、福島という最小限の犠牲だけで「国のかたち」を守ることができたと、そういう言動をしているのやなと思った。
    (*)collateralは「付帯的な、二次的な」といった意味、軍事力行使にともなう付随的損害と訳されたりする

    あとがきで、鎌仲さんが、この合宿に参加したゼミ生たちへ、願いを書いている。
    ▼東京電力福島第一原発事故の影響は福島大学に通う、今回のゼミ生たち全員に深い影を落としています。その影の正体を「知る」「考える」「行動する」という営みによって影から抜け出していただけたらと願っています。…どうか、一人だと思わないでほしい。私たちは分断ではなくつながりあうことで強くなれるのです。あなたがたが自分自身の言葉を立ち上げてくる、そんな未来を楽しみにしています。(p.79)

    (7/8了)

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著者プロフィール

映像作家。早稲田大学卒業と同時にドキュメンタリー映画制作の現場へ。フリーの映像作家としてテレビ、映画の監督をつとめ、NHKで「エンデの遺言―根源からお金を問う」などの番組を監督。2003年ドキュメンタリー映画「ヒバクシャー世界の終わりに」を監督。国内外で受賞、2006年「六ヶ所村ラプソディー」、2010年に最新作 「ミツバチの羽音と地球の回転」を完成、目下全国500ヶ所、海外でも上映が進んでいる。2011年度全国映連賞・監督賞受賞。2012年DVD「内部被ばくを生き抜く」発売開始。著書に 「ヒバクシャ ドキュメンタリーの現場から」「六ヶ所村ラプソディー ドキュメンタリー現在進行形」以上、影書房)、共著に「ドキュメンタリーの力」(子どもの未来社)、「今こそ、エネルギーシフト」(岩波書店)などがある。

「2012年 『鎌仲監督 vs. 福島大学1年生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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