最後の医者は雨上がりの空に君を願う(下) (TO文庫)

著者 :
  • TOブックス
4.05
  • (213)
  • (262)
  • (134)
  • (20)
  • (3)
本棚登録 : 2627
感想 : 173
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784864726825

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 最後桐子と福原2人のシーンで一度だけあえて「友人」と書いてあった箇所をみてほっこりした。お互い真逆な考え方だけれど医療、患者、ご家族に向き合う気持ちの真っ直ぐさは一緒で、憎みながらもどこかでいつか通じて欲しいと思っていたので微笑ましい瞬間だった。
    前回の「最後の医者は桜を見上げて君を想う」と同じく、寂しく暗いストーリーのはずなのにどこか温かみと透明感がある気がしていて読んでいてもあまり辛い気持ちに陥らないところが、この著者のスキルなのだと思う。


    ・・・・・・・・・・・・・・・・

    「自分の中をかき回して探しても絶望しか見つからなくて、諦める他に出口がないことはある。いいんだよ、諦めてもいい。諦めるくらい、あなたは闘ったんだもの。だけどそれで、自分は必要のない存在だと思っちゃうのは、ちょっと早すぎる。ねえ、周りに目を向けてみて。誰かの理屈を探して。何気なくて、別に難しいことでもなんでもなくて、でもどういうわけか、凄く強いものが、そこにあったりするんだ…その誰かが、あなたを埋めてくれる。空っぽになったあなたですら」

  • 第二章は、淡々と悲しい結末へと突き進んだ。絵梨が桐子少年に語る「諦めてもいいんだよ」というセリフがただただ悲しい。

    第三章はいよいよ最終話。福原欣一朗院長の過去、そして福原雅和(息子の方)誕生に纏わる秘話が明かされる。

    仕事一辺倒の朴念仁、欣一朗とその変人妻、絵梨(!)の二人がとにかくいいキャラ出してる。お見合いデートで絵梨が「雨」に関して欣一郎に語った「どうせなら嫌うよりも、どうやったら好きになれるかって考えた方が楽しいと思うの」というセリフに、天の邪鬼かつ究極のポジティブ思考の絵梨のキャラが(そして、絵梨が欣一郎と半ば強引に結婚した理由も)よく表れている。

    脳血管性の認知症を発症し、記憶が混濁した欣一郎が、現実から頻繁に若かりし頃の記憶へと入り込んでしまう、というストーリー展開も秀逸だった。

    第二章及び第三章、本シリーズ中では一番よかった。

  • 上巻と併せて一気読み。
    現在と過去と、また語られる視点も切り替わりながら、徐々に明かされていく真実。
    桐子の過去の話から、どうして死神と呼ばれるような今の価値観になったのかが垣間見れた。
    「全ての人は救われるために生まれてくる、そして救うために生まれてくる」
    この桐子の言葉は、福原の母親との時間があったからこそ生まれたものだろう。
    母と子、父と子、妻と夫。
    家族の絆、というか関係性というか、なんか超越したものがそこにはある。
    いや、超越してるから家族なのかもしれない。

    前作では、いかに死というものが自分の近くに潜んでいるか、そして自分はどう生きるか、を思わされた。
    今作は親子の、家族の存在について思わされた。

    ところで、書名の"最後の医者"とはどういう意味なのだろう?
    死を受け入れさせる桐子先生のことを指すのか?
    だとしたら、最後中庭で雨上がりの空に何を願ったのか?
    患者、雅和の幸せか?

    何はともあれ、優秀な神宮寺さんにちゃんと給料を払ってあげてほしい。
    神宮寺に焦点をあてたサイドストーリーとか出ないかな(期待)

  • 福原家族の葛藤がよくわかる章でした。
    特に父親の不器用さがわかり、心揺るがされました。
    本当に奥様を愛していたのでしょう。産科病棟にいくところは良かった。
    また、主人公2人の取る行動が良かった。


    ★映画化企画進行中!★

    シリーズ累計25万部突破!
    全ての人は誰かを救うために生まれてくる――。
    衝撃の医療ドラマ、感動の完結編!


    【あらすじ】

    少年時代に入退院を繰り返し、ただ生きるだけの日々を過ごしていた桐子。だが、一人の末期癌患者との出会いが彼を変えた。奇しくも、その女性こそ幼き福原の母だった。彼女の命を賭けた願いとは? なぜ、人は絶望を前にしても諦めないのか? 再び、二人が「ある医者」との闘病に挑む時、涙の真実が明らかになる。流転する時を越え、受け継がれる命が希望の未来を生む――読む者に生き方を問い直す、医療ドラマ第二弾。感動の完結編!
    【文庫書き下ろし】

    著者について
    ●二宮敦人(にのみや・あつと)
    1985年東京都生まれ。一橋大学経済学部卒業。累計20万部を突破した『!(ビックリマーク)』等、次々に新作を発表する注目の新世代作家。著書に『18禁日記』『郵便配達人シリーズ』『最後の秘境 東京藝大: 天才たちのカオスな日常』『なくし物をお探しの方は二番線へ』『廃校の博物館 Dr.片倉の生物学入門』等がある。

  • 生と死について考えさせられる本
    死は誰もが経験すること。人がいつか死ぬというのは当たり前のことだけれど、実際に自分に死が訪れたとき受け入れることができるだろうか。
    例えば生死に関わる病気になったとき、死に抗い必死に生きることも一つだが、病気とともに生きる、死が訪れるまでの過ごし方を考えるのも一つだとこの本を読んでいると感じた。

  • 上巻からの続きで「とある母親の死」から始まる下巻では、ついに絵梨は退院をする。

    それは息子である福原少年の遊園地に行きたいという夢を叶える為。

    そして、楽しいはずの遊園地で福原少年の目の前で梨絵は倒れる。

    救急車で運ばれる梨絵、傍にいる父親は携帯で電話をする。

    「ええ、はい。先生のおっしゃった通り、やっぱり無理でした」

    「いえ。最後の思い出が作れたので、梨絵も本望でしょう。ええ、我が儘を受け入れていただき感謝します。今そちらに向かってますので、はい」

    電話を終えた後、救急隊員に「あんまり急がないで結構です」

    「どうせもう無料なので。それより事故にだけ気をつけてください」

    目の前でそう語る父親の言葉が福原少年には理解出来なかった。

    そしていよいよ最終章「とある医者の死」。

    福原は桐子に電話をし、桐子先生に医者として患者を診て欲しいと頼む。

    その患者とは、最終章で亡くなるとある医者。

    福原の父親であり、七十字病院院長の欣一郎その人である。

    脳梗塞の発作の後に認知症の疑いでおかしくなったと言う。

    「今から行く」と告げた桐子は欣一郎の主治医として治療にあたるも、認知症との診断に疑いを感じる。

    徐々に症状が悪化する欣一郎の中で消えない記憶は妻であり、最愛の梨絵との出会いから福原誕生までの歴史。

    欣一郎に寄り添い続ける桐子は脳梗塞ではない病状の可能性に気づき、福原に検査の許可を求める。

    一度は彼にしてやれるのは安楽死だと言い、治療は必要ないと断る福原だが、父親が死ぬことでまたあの世で母親と再会し、母親を奴隷のようにこき使う事は許せないと言う。

    福原がこの世に生まれる前、欣一郎の妻であり、福原の母親である梨絵は病に侵された。

    そう子宮癌だ。

    医者として福原はステージ2の子宮癌であれば、全摘する事で助かる可能性が高い事を理解しており、梨絵に全摘をすすめる。

    しかし、梨絵は再発のリスクをとってでも子宮を残し、子供を産みたいと言う。

    梨絵が自らの命をかけて産んだのが、福原であり、梨絵の死は前章で語られた。

    欣一郎の記憶の中にある過去は福原が知らない事実が隠されており、桐子はその内容をノートに書き留める。

    桐子が行った検査の結果からリスクは高いが欣一郎が助かる(症状が改善される)可能性がある事を聞かされた福原は、それでも手術を拒む。

    母親を助けることをしなかったと思い込み、父親を利用する事しか考えてこなかった福原は元カノの神宮寺によって今まで気づかなかった事実に気づかされる。

    それは家族に向き合ってこなかったと思っていた父欣一郎の存在。

    欣一郎から見れば福原は仇だと言う。

    最愛の梨絵の命を助けるよりも、リスクをとり子供を産みたいと言う梨絵の願いを聞き入れ、そして産まれた福原を梨絵亡き後に立派な医者になるまで育ててきた。

    神宮寺によって呼び起こされた小学生だった福原少年が父親に遊園地に行きたいと言った記憶。

    そんな事をすれば母さんが死んでしまうと告げられた。

    父親である欣一郎の苦悩と葛藤に気づき、そんな中で自分をここまで育ててくれた事を理解した福原は父親である欣一郎の手術を決意する。

    桐子をサポートにつけ、自ら父親の開頭手術の執刀医を務め、父親を助けようとする福原。

    術後目を覚ました欣一郎は明らかに回復が見てとれ手術は成功したかのように思われた。

    しかし、手術行う為に服用を止めたハーファリンのせいで術後僅か三日後に血栓により倒れ息子やかつての同僚に見守られながら5ヶ月後に亡くなってしまう。

    福原と桐子。

    2人の医者がW主演を務めた本作は真っ向から死と向き合う作品であり、いかに生きるかを問う感動の医療ドラマ。

    全ての人は誰かを救うために生まれてくる。



    説明
    内容紹介
    ★映画化企画進行中! ★

    シリーズ累計40万部突破!
    全ての人は誰かを救うために生まれてくるーー。
    衝撃の医療ドラマ、感動の完結編!


    【あらすじ】

    少年時代に入退院を繰り返し、ただ生きるだけの日々を過ごしていた桐子。だが、一人の末期癌患者との出会いが彼を変えた。奇しくも、その女性こそ幼き福原の母だった。彼女の命を賭けた願いとは? なぜ、人は絶望を前にしても諦めないのか? 再び、二人が「ある医者」との闘病に挑む時、涙の真実が明らかになる。流転する時を越え、受け継がれる命が希望の未来を生むーー読む者に生き方を問い直す、医療ドラマ第二弾。感動の完結編!
    【文庫書き下ろし】


    <全国の書店員様からのおすすめコメント>

    読み終わった瞬間、心が震えた気がした。言葉に出来ないような想いを物語として伝えてくるこの物語はきっと読んだひとりひとりにとって特別な作品になる。
    (TSUTAYA 三軒茶屋店 栗俣様)

    一息に読んだ。一行だって読み飛ばせなかった。人の脆さが、弱さこそが、心を温めてくれるのだ。そう強く思えた。
    (紀伊國屋書店 梅田本店 田中様)

    諦めてもいい。この台詞から見えてくるあなたの未来は、きっと今よりも輝く。
    (オリオン書房 ルミネ立川店 田邊様)

    全ての人は救うために生まれてくる――生きるのを諦めていた彼を変えた人との出会い。二人の過去の想いが交錯する。人は皆、誰かの希望を持って生きている。これは希望の物語。
    (紀伊國屋書店 新宿本店 宮本様)

    泣いた。あぁ、そうだったのかと。死を目前にして明かされた真実は愛に満ち溢れていて、私まで救われた気がした。手術室のくだりはハンカチなしでは読めない程、泣いた。
    (未来屋書店 伊丹店 中尾様)

    病気になっても、あがいてあがいて闘うか、諦めるか選ぶことはできる。この作品を読んで、たとえ死が待っていようとも、周りの人の為にあがきたいと思いました。
    (大垣書店 高槻店 工藤様)

    様々な境遇の患者達に感情移入してしまい、上下巻一瞬で読み終えてしまいました。桐子、福原の過去との対峙を経て、最後の最後に交差する思い出。驚きました!
    (MARUZEN&ジュンク堂書店 梅田店 高見様)

    涙なくしては読めませんでした! ! 電車の中で読んでいて涙が止められなくなり大変でした…。死を目前にして死を受けいれられるのか、最後まで生きようと闘うのか。自分が、どう選択するのか今はわかりません。けれど、私も1人の親としてカズくんのお母さんのように最後まで強く優しくありたいと思いました。
    (BOOK EXPRESS エキュート上野店 高村様)
    内容(「BOOK」データベースより)
    少年時代に入退院を繰り返し、ただ生きるだけの日々を過ごしていた桐子。だが、一人の末期癌患者との出会いが彼を変えた。奇しくも、その女性こそ幼き福原の母だった。彼女の命を賭けた願いとは?なぜ、人は絶望を前にしても諦めないのか?再び、二人が「ある医者」との闘病に挑む時、涙の真実が明らかになる。流転する時を越え、受け継がれる命が希望の未来を生む―読む者に生き方を問い直す、医療ドラマ第二弾。感動の完結編!
    著者について
    二宮敦人(にのみや・あつと)
    1985年東京都生まれ。一橋大学経済学部卒業。累計20万部を突破した『! (ビックリマーク)』等、次々に新作を発表する注目の新世代作家。著書に『18禁日記』『郵便配達人シリーズ』『最後の秘境 東京藝大: 天才たちのカオスな日常』『なくし物をお探しの方は二番線へ』『廃校の博物館 Dr,片倉の生物学入門』等がある。

  • オカンと親父そして息子
    それぞれの思いが、収まるところに収まった感じ。
    よかった。

  • 前半は母親の物語。後半は父親の物語。
    どちらも感動で涙がこぼれた。

    私が母親だからだとは思うが、特に母親の物語はとても考えさせられた。
    もっと息子に優しくしよう!!

    全体的に文章も読みやすく、すいすいと読み進めることができた。言葉の選択も美しかった。

  • 2章の続きからはじまり、
    再発して恐怖に震えていたはずの絵梨さんを
    絶対に死なないはずの絵梨さんに変えた
    カズの希望-愛

    -あなたの中に希望がないなら、
    あなたのそばにいる誰かの中に
    希望はこっそり隠れてる-

    死神と呼ばれる桐子の中に刻まれた名言

    下巻では理想的としか思えない夫婦の
    馴れ初めが紐解かれるけれど、
    その息子に見えていた現実は
    理想の家族からかけ離れたものだった。
    当事者たちの苦悩に涙とまらず。

    1冊目とは違ったテーマの2冊だったが
    興味深い内容にひきこまれた。


  • 下巻では、上巻に引き続き、桐子が初めて触れた患者の記憶と、ある医者の死が描かれる。
    この2編は繋がっており、中心となるのは福原であり、その福原の複雑な幼少期、院長でもある父親への想いが桐子を通して、描かれる。
    ずっと敵対していると思われる桐子と福原の心が少しずつ寄り添っていく感じが何とも言えない。
    「ある医者の死」と言うタイトルは、何の事前情報もないまま読むと、前作の音山の死を想像してしまい、読むのが辛くなるところだが、今回は前作のような号泣ではなく、清々しい感動の涙だった。
    人の死は辛い。
    しかし、誰しも向き合わなければいけないものであれば、桐子や福原のように割り切った自分なりの向き合い方を持つことも大事なんだと、しみじみ思った。
    前作と今作で、同じ死をここまで対極的に描ける作家さんに、ただただ脱帽…

全173件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

1985年、東京生誕。一橋大学経済学部卒。著書は他に「!」「!!」「!!!」「!!!!」「暗黒学校」「最悪彼氏」(ここまですべてアルファポリス)、「占い処・陽仙堂の統計科学」(角川書店)、「一番線に謎が到着します 若き鉄道員・夏目壮太の日常」(幻冬舎)などがある。

「2016年 『殺人鬼狩り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

二宮敦人の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
恩田 陸
辻村 深月
宮下奈都
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×