Inui Architects 乾久美子建築設計事務所の仕事 ((LIXIL出版))
- LIXIL出版 (2019年5月13日発売)
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感想 : 1件
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- Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
- / ISBN・EAN: 9784864800396
感想・レビュー・書評
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撮影された大量(18,000枚あまり)のスナップを、色味やコントラストを調整することで、すべてが同じ条件で撮られた写真であるかのように揃えて、画像の束をつくっていました。そこから、なんらかの共通項が見出されたグループをユニット化して、それぞれのユニットに名前をつける。しっくりくる言葉が見つかるまで延々と議論を続けて、言葉がひとつ見つかったとき、そのユニットに属する「風景からの学び」にひとつ、言葉が与えられる。展覧会場ではそうしたユニットごとに写真が束ねられて、展示壁にびっしりとタイルのように貼られていたのですが、面白かったのは浮かんだ言葉に対してまだサンプルが足りていないと感じられたユニットには、敢えて余白が与えられていたことです。この余白を見たときに、僕は何となくこれは設計論になっていくんだなと感じました。書き写すこと、あるいは撮影することは観察ですが、名付けることはすでに創造なんですよね。
…そう考えると、このカバー写真が何なのかもとてもよくわかる。まるで「小さな風景からの学び」で撮られた、誰の仕業かもわからないちょっとした設えを捉えた写真のようです。自分で設計した建物の写真が、あの展覧会の余白にはめ込まれるものとして撮られる。乾さんのあのときの展示と今が、そんな形で結びついていることに驚かされます。(中山秀行)詳細をみるコメント0件をすべて表示
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