翻訳問答 英語と日本語行ったり来たり

  • 左右社
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感想 : 26
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784865281002

感想・レビュー・書評

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  • おすすめ資料 第272回 (2015.2.20)
     
    「翻訳作業は奥深い!」という気分を味わうことができる本です。

    「嵐が丘」など英文学作品の一部を翻訳者二人が訳しあって内容を検討するのですが、同じテキストから訳されたものの印象が違うのに驚きます。

    自分ならどう訳す?と考えながら読めば、対談に参加している気分になれるかも。

  • 翻訳家もタイポグラファーもデザイナーも料理人もだけど、本当に小さな、微妙な差異を感知してコントロールして整えていくお仕事なのだ。ケーキを作るときに小麦粉をふるいにかける、という行為が頭に浮かんだ。翻訳家はそんなかんじがする。とーってもおもしろい。

  • 誤訳、とか読みにくい翻訳ということは通して作品を理解できていないと判断がつかないと思う。

    訳者の意図が伝わらないと自己満足かもしれないが。

    実際に翻訳しながら、対話しているのが実践的で面白かった。

  • 読みたい(知りたい、聞いてみたい)ポイントとふたりの会話が微妙にずれていて、もどかしい。最後の詩の翻訳が面白かったので、アーサー・ビナード『日本語ぽこりぽこり』購入。

  • 一篇の作品の翻訳者によるの解釈や表現の違いについて、様々なことが学べる一冊。

  • 『高慢と偏見』、『長いお別れ』など名作の冒頭部分を作家と翻訳家が翻訳し、互いの訳について(時には既存訳について)語り合います。
    原文も掲載されていますから、どのような日本語に置き換えどのような構成で翻訳するのか
    ということも解説されていてとても興味深いです。
    原文をあくまで外からみる、翻訳はなかに入っていくことではないという作家片岡さんと、
    作品全体を深く読み解いて一語一語を選択する職人鴻巣さんという組み合わせ。
    片岡さんの容赦ない自由な発言(と、それをやわらかく包んでフォローする気遣いのひと鴻巣さん)も見所です。
    チャンドラーの原文は迷走してて翻訳者泣かせのようですが、既存訳でも翻訳者によって意味が異なる文章がありました。
    鴻巣 しかし、どうしてこんなに意味のちがいが出るのでしょう。
    片岡 英語の構文を理解しないままに意味を取ろうとしているからです。構文こそが意味なのですが。


    サリンジャーの「バナナフィッシュ...」についても

    片岡 爪を塗っている記述は、言葉数の多さでなかば失敗していると思います
    鴻巣 作家が失敗しているというところまでわかる(笑)。作家が失敗していると思ったらどうしますか。
    片岡 自業自得ですから、そのまんま訳せばいいのです。


    同業者の立場から作品をできるだけそのまま「フラット」に伝えたいという作家と
    外国語で書かれた作品世界を日本の読者にできるだけわかりやすく伝えたいという使命感を持つ翻訳家の
    刺激に満ちたやり取り、楽しみました。

    • シンさん
      「自業自得ですから、そのまんま訳せばいいのです」に、うわあ……と思ってしまいました(笑)。
      片岡さんってよくも悪くも「いけず」な人だという...
      「自業自得ですから、そのまんま訳せばいいのです」に、うわあ……と思ってしまいました(笑)。
      片岡さんってよくも悪くも「いけず」な人だというイメージがあるのですが、この引用だけでもそれが伝わってきます。
      今日少し立ち読みしたのですが、む、難しい……。翻訳家ってすごいなー。
      2015/02/22
    • 穂波さん
      他にも片岡語録はいろいろと。
      日本人にはそのままでは分かりにくい名詞や固有名詞に訳を付け加えるかという問題に、あくまで原文のまま、何も足さ...
      他にも片岡語録はいろいろと。
      日本人にはそのままでは分かりにくい名詞や固有名詞に訳を付け加えるかという問題に、あくまで原文のまま、何も足さない何も引かないという姿勢を一貫して崩さない88ページあたりのやりとりに拍手を送りました。
      それからチャンドラーの翻訳者が英語の構文を理解していない云々の言及にはもちろん村上訳も含まれています。ww
      2015/02/28
  • 難しさが分った。

  • 2015.2.8市立図書館
    創作も翻訳も手がけるバイリンガルと翻訳専業の対話。
    「透明な翻訳」にも実は二種類ある(日本でいう場合と欧米でいう場合とで違う)なんて、いままで考えてもみなかった。翻訳・通訳者だけでなく、わたしのような語学教師が二つの言語をどう対応させて教えたらいいかという現場にもつきものの興味深いトピックス。
    ここまでは前置きで、メインは一つのテキストをおたがいに訳して持ち寄ったうえであれこれ話し合う。7番勝負。素材はオースティン、チャンドラー、サリンジャー、モンゴメリー、カポーティ、ブロンテ、ポー。原文があるから、自分で訳して参戦することもできるし、お二人の訳文を読み比べる楽しみのほかに、既存の翻訳との異同などをつきあわせたりもできる。
    「おわりに」の対話も興味深い。母語がわかるとは、外国語を学習してわかるとは、どういうことなのか、という問題から、語学教育・学習法にまで話が及んでおもしろい。教える立場として、抽象的普遍的に本質をつかませ、「使えるようにさせる」にはどうすべきなのか、考えを巡らせないわけにいかない。
    それにしても、片岡義男がバイリンガル(英語も母語)だったとははじめて知った。そうおもって彼の小説や翻訳を読んでみるといろいろな発見がありそう。

  • 同じテキストでも訳文が全然違うとか、翻訳専門家と作家とは翻訳の際の自由度が異なるとか、興味深い話が色々書かれているが、鴻巣友季子が片岡義男に気を使いすぎているのが惜しい。

    分量にしては誤字、脱字も目立った。

  • 片岡義男さんが(対談相手の鴻巣さん曰く)英語のネイティブとは知らなかった。本書はJane AustinからEdger Alan Poeまで7名の作家の代表作の一部を、片岡vs鴻巣それぞれが英訳し、原書や既存訳本と照らし合わせながら、お互いの翻訳哲学を披露している。
    片岡さんは、全体のイメージを画像として捉え、さながら映画監督のように物語を紡ぎ出し、鴻巣さんは、作家の意図を周到に読み解き、その作家の気持ちになって訳す方法を採られていて、(創作を本業とする)作家と(翻訳が本業の)翻訳家の違いが鮮明に浮かび上がる。
    個人的には鴻巣さんの訳のほうが読みやすいが、片岡さんのように、原文を読んで、全体がバクっと把握した上で、読者におもねらない翻訳をするやり方は目から鱗だった。
    対談からは、その片岡さんの一種潔さに、鴻巣さんが果敢に戦いている様子が手に取るようにわかって、面白かった。

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著者プロフィール

1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始める。74年「白い波の荒野へ」で小説家としてデビュー。翌年には「スローなブギにしてくれ」で第2回野性時代新人文学賞受賞。小説、評論、エッセイ、翻訳などの執筆活動のほかに写真家としても活躍している。『10セントの意識革命』『彼のオートバイ、彼女の島』『日本語の外へ』『万年筆インク紙』『珈琲が呼ぶ』『窓の外を見てください』『いつも来る女の人』『言葉の人生』ほか多数の著書がある。

「2022年 『これでいくほかないのよ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

片岡義男の作品

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